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第820回:これからのホンダは四駆推し? 次世代電動AWDの雪上性能を試す

2025.02.13 エディターから一言 渡辺 慎太郎
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いつもとは違う冬景色

日本の一部地域では記録的な豪雪による被害を受けているというのに、北海道・旭川にほど近いホンダの鷹栖テストコースには思ったほど雪がなかった。東京の人間からすればそれでも豪雪に見えるくらいなのだけれど、路面は白くてもちょっと走ればその下のアイスバーンが露呈してしまうようなありさまで、「いつもはこんなんじゃないんですけどねえ」とホンダのエンジニアも苦笑いをしていた。

ここで乗せてもらったのは北米市場用の「CR-V」と、2024年のワークショップで試した個体とまったく同じ「ヴェゼル」ベースの次世代小型e:HEVのAWD、そしてついに前回の擬装が取れてオールヌードとなった新型「プレリュード」である。今回の試乗会の目的は、主にホンダのAWD技術に関する理解と、AWDではなくともμの低い路面でのコントロール性(つまり新型プレリュードのポテンシャル)への理解だった。

最初にステアリングを握ったのはCR-Vである。この個体は既存のe:HEVと、プロペラシャフトでつないで後輪も駆動させる機械式AWDシステムを搭載している。まったく新しい技術は特にないが試乗するのは初めてだった。しかしこれが素晴らしくよかった。前後の駆動力は油圧による圧着率で状況に応じて配分を可変する。この可変の具合が絶妙で、唐突感がなく極めてスムーズなのである。

路面のμが低い状況では、クルマの唐突な動きがきっかけでクルッと向きを変えてしまったり、滑りだしてコントロールが利かなかったりする恐れがある。CR-Vは、例えば後輪がグリップを失う前にその兆候がきちんと伝わってくるので、ドライバーには準備をする猶予が与えられる。同時に前後駆動力配分も滑らかに可変するので、的確に対処しながらスムーズな走行が続けられるのである。なので、自分のようなスペシャルな運転スキルを持ち合わせていない人間でも、ところどころがアイスバーンになったハンドリング路を危なげなく周回を重ねることができた。試乗を終えて「AWDはもうこれでいいじゃないですか」とエンジニアに言ったら「そうなんですけどねえ」とまた苦笑いをされた。

今回は北海道にあるホンダの鷹栖テストコースへ。「ヴェゼル」の皮をかぶった次世代e:HEV搭載の開発車両でホンダのAWD技術に関する理解を深める。
今回は北海道にあるホンダの鷹栖テストコースへ。「ヴェゼル」の皮をかぶった次世代e:HEV搭載の開発車両でホンダのAWD技術に関する理解を深める。拡大
ついに擬装が取れた新型「プレリュード(プロトタイプ)」もドライブ。これはFF車だが、低μ路でのコントロール性を試す。
ついに擬装が取れた新型「プレリュード(プロトタイプ)」もドライブ。これはFF車だが、低μ路でのコントロール性を試す。拡大
最初にステアリングを握ったのは現行型「CR-V」。日本では水素燃料電池車のみの販売だが、試したのは北米で販売されているe:HEV搭載のAWD車だった。雪がないのはこの写真が北米市場用のオフィシャルカットのため。
最初にステアリングを握ったのは現行型「CR-V」。日本では水素燃料電池車のみの販売だが、試したのは北米で販売されているe:HEV搭載のAWD車だった。雪がないのはこの写真が北米市場用のオフィシャルカットのため。拡大
「CR-V」のAWDは機械式。「ヴェゼル」や「ZR-V」などの現行モデルも基本的に同じ仕組みを使っている。
「CR-V」のAWDは機械式。「ヴェゼル」や「ZR-V」などの現行モデルも基本的に同じ仕組みを使っている。拡大
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反応の速さが自慢の電気式AWD

お次はヴェゼルベースの試験車である。これには、2024年に紹介した次世代の小型用e:HEVとリアをモーターで駆動するAWD、そして「M-TCS」と呼ばれる次世代のトラクションコントロールが装備されていた。従来のトラクションコントロールシステム(TCS)は車輪がグリップを失うとエンジン出力を抑えて体勢を立て直すが、M-TCSではグリップを失った車輪のみの駆動力を抑制し、グリップを保ったままの車輪はそのままトラクションをかけ続けることができるというもの。TCSが発動して速度が極端に落ちる事象を避ける狙いがあるという。

CR-Vの機械式AWDとの決定的な違いは、後輪の作動レスポンスだ。油圧による圧着からプロペラシャフトやデフやドライブシャフトを介してようやく後輪が駆動する機械式に対して、e:HEVのAWDは電気信号により直ちにリアモーターが反応して後輪が駆動するためレスポンスに優れるというメリットが享受できる。また、ターンインの局面では操舵している前輪の負荷を減らす駆動力配分とし、旋回中は車体を安定させる配分へ、そして再加速時にはトラクションがしっかりかかるよう細かい制御を連続的に行う。

実際、反応の速さは体感できたものの、状況によっては速いがためにやや唐突に挙動が立て直される場面もあった。また、4輪のタイヤの位置が常にしっかりと伝わってきたCR-Vに対して、ヴェゼルの次世代型e:HEVのAWDは一瞬タイヤの位置がぼやけることがあった。クルマの挙動自体に不安定さはないが、タイヤの位置が明確でないとドライバーとしてはちょっと不安になるものである。この辺りは今後、さらなる改良を施していくそうだ。

「ヴェゼル」がベースの次世代e:HEVの試験車はリアにモーターを備えた電気式のAWDを採用。機械式よりも操作に対するレスポンスが速いのがセリングポイントだ。
「ヴェゼル」がベースの次世代e:HEVの試験車はリアにモーターを備えた電気式のAWDを採用。機械式よりも操作に対するレスポンスが速いのがセリングポイントだ。拡大
電気式AWDは前後駆動力配分の自由度が高い。ターンインと旋回中、そしてコーナー脱出時に、それぞれ理想的な配分に変えられる。
電気式AWDは前後駆動力配分の自由度が高い。ターンインと旋回中、そしてコーナー脱出時に、それぞれ理想的な配分に変えられる。拡大
「M-TCS」と呼ばれるトラクションコントロールシステムも最新世代。グリップを失った車輪の駆動力のみを抑制するのが特徴だ。
「M-TCS」と呼ばれるトラクションコントロールシステムも最新世代。グリップを失った車輪の駆動力のみを抑制するのが特徴だ。拡大

FFでも安定して走れるプレリュード

そしてプレリュードだ。まずは前回の記事の訂正から。新型プレリュードは次世代型e:HEVの初出しとなるというようなことを書いてしまったがそうではなく、「シビック」と同タイプの現行型e:HEVが搭載されるとのこと。疑似トランスミッションの「S+ Shift」は装備される。おわびして訂正します。次世代型e:HEVと次世代型プラットフォームを使うプロダクトの登場は、もう少し先になりそうだ。

プレリュードだけは前輪駆動のFFなので、スタートしてしばらくはかなり慎重に運転したものの、想像以上に安定した挙動と走行を披露する。後輪が滑りだしてもコントロール性が高いので、すぐに立ち直らせることができた。これには、「シビック タイプR」から移植したサスペンションが効いているらしい。タイヤの接地面変化が少なく、滑りだして横方向からの負荷がかかってもタイヤの位置決めがしっかりしているのですぐにグリップが回復するのだろう。「でもやっぱりAWDがあってもいいのでは?」と聞いたところ、構造的にAWDは難しいとのこと。そういえば、現行のシビックにAWDの設定はない。どうやらプレリュードは現行シビックのプラットフォームをベースに開発されているようだ。

これまで、正直なところ個人的にはホンダに“四駆”のイメージがあまりなかった。ところが今回、AWDの開発チームの皆さんからは並々ならぬプライドと自信が伝わってきた。パワートレインだけでなく駆動形式についても、今後のホンダが楽しみである。

(文=渡辺慎太郎/写真=本田技研工業/編集=藤沢 勝)

国内では2025年秋に発売予定の新型「プレリュード」。トランスミッションを搭載しているかのような挙動でドライバーを楽しませる「S+ Shift」を搭載する。
国内では2025年秋に発売予定の新型「プレリュード」。トランスミッションを搭載しているかのような挙動でドライバーを楽しませる「S+ Shift」を搭載する。拡大
FFでも雪上で安定したドライブができた「プレリュード」。後輪が滑り始めてもすぐにリカバリーができた。
FFでも雪上で安定したドライブができた「プレリュード」。後輪が滑り始めてもすぐにリカバリーができた。拡大
「シビック」と同じく「プレリュード」にもAWDは設定されない見込み。ヨンクを望むなら「ZR-V」をということか。
「シビック」と同じく「プレリュード」にもAWDは設定されない見込み。ヨンクを望むなら「ZR-V」をということか。拡大
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