第411回:フランスでちょっと見えた第二次自動車革命!!(前編) 〜もしやほとんど“パリ電気祭り”?
2010.10.13 小沢コージの勢いまかせ!第411回:フランスでちょっと見えた第二次自動車革命!!(前編) 〜もしやほとんど“パリ電気祭り”?
国をあげてのEV化!
みなさまごぶさた〜。久々“勢いまかせ”ですが、今回の舞台は話題のパリース! といってもヒルトンじゃない方のそう、「モンディアル・ド・ロトモビル」こと通称「パリサロン」なんですね〜ボンジュール!
パリはフランスメーカーのおひざ元というだけでなく、みんなのあこがれ。これは意外なほど日本も欧米も変わりなく、かのダイムラーAGのCEO、ディーター・ツェッチェさんまでプレゼンで「世界で最も美しい街、パリ……」と言っていたのが印象的。ホント、来れば誰でも凱旋門で記念撮影!って感じですか(笑)。
さて、パリで見えてきたクルマ未来予想図は? と言いますと、目に付いたのはEV、つまり電気自動車ばかり。急進派ともいえるフランス系ブースから入って、最初に世界初の量産EVである「三菱i-MiEV」のプジョー版である「イオン」や、同シトロエン版「C-ZERO」を見ちゃったせいもあるけどね。でも、ほかにもスポーツEVの「シトロエン・サーボルト」や、お隣のルノーブースはこれまたEV急進派最右翼、グループの日産の勢いそのままに、「カングー エクスプレスZ.E.」に加え、新しいEVスーパーカー「デジール」やコンパクトEV「ゾエ プレビュー」を発表。日産も次期型「キューブ」のデザインスタディともいわれる「ツインポッド」などを公開した。
もちろんコンセプトカーがほとんどだが、前後2人乗りEVの「ルノー・トゥイジー」は、2011年発売の市販バージョンともアナウンスされ、まさに“パリ電気祭り”の様相を呈してきている。
というか、2010年末には年5万台生産を豪語する「日産リーフ」も、ついに発売されるわけで、絵に描いたモチがいよいよ“食べられるモチ”になってきたようなんですな。
CO2原理主義は終わってないけれど……
それより全体として面白かったのは前回のような“CO2原理主義”トーンが、表面的には影をひそめ、昔に戻ってきてるというか、マトモになってきたことだ。2008年パリショーでは、飾ってあるほとんどのクルマのボディに、「耳なし芳市」さながら「CO2=○g」と走行1km当たりの二酸化炭素発生量が書いてあって、切羽詰まった非常に強迫観念的なエコロジーブームを感じたけど今回はごく一部。
おそらくコンパクトカーを多く売るラテン系、ドイツ系メーカーのいくつかで2012年から段階的にスタートする欧州の懲罰的CO2規制に対しメドが付いたのと、さすがはラテン系というか、楽天的なフランスのお国柄が反映したようで、リーマンショックから始まった自動車不況もようやく喪が明けてきたというか、リアルな未来が見えてきた感じ。いまだ何かと自主規制が続く日本とはノリが違う。
それはいくつかのユニークなスーパーカーコンセプトにもうかがえた。
世界的に好調なアウディは、ニューモデル「A7スポーツバック」や、往年のビッグネームの復活である「クワトロコンセプト」を発表したほか、スーパーカーコンセプトの「e-tronスパイダー」を出展した。
このe-tronスパイダーは、今までにないプラグインハイブリッドで登場。3リッターV6ツインターボディーゼル「TDI」をミドに置き、最高出力300ps、最大トルク66.3kgmを生み出すだけでなく、フロントにモーターを2つ搭載し、最高出力88ps、最大トルク35.9kgmを加えたハイブリッド状態としても走れる。まだまだコンセプト段階だが、こっちのモーター+内燃機関のいいとこどりでいくということだろう。
さらに大胆なのはイギリスのジャガーランドローバーグループ。まさに“スタイリッシュレンジローバー”といえる、今までにはない屋根がペッチャンコなSUVの「エヴォーク」がお披露目されただけでなく、ジャガーブランドではコンセプトカー「C-X75」を発表。C-X75は、文字通りブランド生誕75周年を記念するスーパーカーで、往年のレーシングカー、「ジャガーXJ13」譲りのスタイルを持つだけでなく、前代未聞のガスタービン+電気モーターのプラグインハイブリッド方式を採用。ガスタービンは言わばジェットエンジンにも似た構造の内燃機関で、発電用に一定回転数で使えば効率がいいだけでなく、ガソリンから軽油からヘタすると灯油までなんでも燃やせる多様性がミソ。まだまだ実現は遠そうだが、航空機産業に強いお国柄だけに意外とリアルなのかも?
“イギリス版フェラーリ”の旗揚げ?
それと最後になったが、実は“今回の真打ち”ともいわれ、一番のサプライズとなったのがロータス。なんと5車種ものニューモデルをイッキに発表した! 既存の「エリーゼ」のモデルチェンジだけでなく、「エリート」や「エスプリ」「エラン」などの名車復活に加え、初の4ドアGTである「エテルネ」を追加。これがトヨタから供給される5リッターV8にスーパーチャージャーを加えて搭載するなどミョーにバブリーで、まさにいきなりのフルラインナップスポーツカーメーカー宣言。アストン・マーティンを追い抜いて“イギリス版フェラーリになる!”と言っちゃったようなもんだ。
正直、いままで15年間もメイン車種を新しくしてなかった会社が、どうしちゃったの? という感じもあるが、まことしやかなウワサによると、バックに新しいファンドというか、資金源が付いたという話で、実際、去年新CEOの座に着いたダニー・バハー氏は元フェラーリ副社長。今回は洋服やグッズを雑誌風カタログにして見せるほどのファッション展開も実現し、話題を独占だ。
ってなわけでざっと前半マトメちゃうと、フランスの“超”電気祭りに続き、それに若干引っ張られてる感じのドイツ、イギリス系、さらにほとんど無視の“イギリス超古典派”って感じですが、裏を返すと原子力発電が国全体の発電量の約8割を占める電力化推進派=フランスと、かたや共に2〜3割程度のちゅうちょ派=ドイツ、イギリス他というお国事情もうかがえる。
実は自動車業界もここにきて、ますます政治的なところを無視できなくなりつつあるのです! 次回はそこんとこ日本も含めてとある“重要人物”と語りますのでひとつよろしくね〜。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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