アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)

君は素晴らしい 2025.12.02 試乗記 今尾 直樹 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車(BEV)専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
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圧倒的な直進安定性

静かである。聞こえてくるのは、サァァァァッという控えめなタイヤの擦過音。走行中、一番うるさいのは時計の音だ。というロールス・ロイスの試乗記だかで有名なフレーズが浮かんでくる。もしもダッシュボードに機械式時計が付いていたら、そういえるかも。その昔、日本全国の台所にあった壁掛けのネジ巻き式振り子時計だったら確実に。

風切り音が皆無なのは、Cd値=0.24と空力が抜群によいからだろう。新東名を走行中、アクセルを踏み込むと、デジタルメーターの数字だけが増えていく。これはヤバイ。われに返って右足を緩める。ちなみに、メーカー公表の0-100km/h加速は5.4秒。「ポルシェ・マカンT」、マカンのひとつ上のグレードのガソリン2リッター直4ターボの6.2秒を問題とせず、「マカン エレクトリック」の5.7秒よりも速い。

高速走行時の直進スタビリティーは、前輪駆動かクワトロか? と確認したくなるほど高い。どっちもハズレの後輪駆動。筆者が運転しているのはアウディが2025年7月に発売した新型A6アバントe-tronなのだから。

抜群の高速直進安定性は2950mmのロングホイールベースと空力、それに低重心にある。おそらく。車体のフロア全面に重たい金属を敷き詰めている。そういう感覚がある。静かで快適で安定している。というのはBEVのインプレッションの常とう句だけれど、A6 e-tronはそのレベルがすこぶる高い。並のBEVとは月とスッポン。本来はFWD由来の4WDメーカーだったアウディが後輪駆動で!? 「PPE」がそれを約束したのだ。

PPEとはなにか? 環太平洋パートナーシップのTPPでもなければ、ピコ太郎のPPAP、ペンパイナッポーアッポーペンとも無関係。アウディがポルシェと共同開発した「プレミアムプラットフォームエレクトリック」なるBEV専用プラットフォームのことである。PPEをいの一番に採用したのはポルシェ・マカン エレクトリック。アウディでは「Q6 e-tron」が第1号で、A6 e-tronは第2号である。アウディは「PPC」という内燃機関(ICE)車専用のプラットフォームを独自開発しており、この2つを両輪に難局の正面突破を図っている。PPEとPPCは現代アウディの重要単語なので覚えておきましょう。

今回の試乗車は「アウディA6アバントe-tronパフォーマンス」。パフォーマンスを名乗るが、ほかに下位グレードがあるわけではなく、これがスタンダードモデル(モノグレード)。
今回の試乗車は「アウディA6アバントe-tronパフォーマンス」。パフォーマンスを名乗るが、ほかに下位グレードがあるわけではなく、これがスタンダードモデル(モノグレード)。拡大
ボディーのスリーサイズは全長×全幅×全高=4930×1925×1510mm。「アバント」と対になるのは「セダン」ではなく、ハッチバックの「A6スポーツバックe-tron」がラインナップされている。
ボディーのスリーサイズは全長×全幅×全高=4930×1925×1510mm。「アバント」と対になるのは「セダン」ではなく、ハッチバックの「A6スポーツバックe-tron」がラインナップされている。拡大
高い位置に付いた細いデイタイムランニングライトは新世代アウディに共通のデザイン要素。フロントマスクの下部がU字型にブラックで処理されているのがユニークだ。
高い位置に付いた細いデイタイムランニングライトは新世代アウディに共通のデザイン要素。フロントマスクの下部がU字型にブラックで処理されているのがユニークだ。拡大
リアのフォーリングスエンブレムはライトに連動して赤く光る。地がホワイトのため、色味は少しピンクがかっている。
リアのフォーリングスエンブレムはライトに連動して赤く光る。地がホワイトのため、色味は少しピンクがかっている。拡大