テスラ・モデルYパフォーマンス(4WD)
ハマればやみつき 2022.10.27 試乗記 サプライチェーンの混乱や半導体不足もどこ吹く風で、好調な業績を維持し続けているアメリカの電気自動車専業メーカー、テスラ。日本に上陸したクーペライクな新型SUV「モデルY」の走りを確かめながら、全世界で支持される理由を探ってみた。室内空間の広さはさすが
最新のテスラとなるモデルYは、先に発売されたテスラ史上最量販セダンの「モデル3」と75%のコンポーネンツを共有するというバッテリー電気自動車(BEV)のSUVだ。
日本で正規販売されるモデルYは、後輪駆動の「RWD」と上級4WDの「パフォーマンス」の2種類。前者の一充電あたり航続距離がWLTCモードで507km、後者のそれが同じく595km。今回試乗したパフォーマンスは前後2モーターの4WDで走りも圧倒的にパワフル。しかも70kgほど重いのに航続距離が長い。バッテリー容量が大きいからだろうが、現在のテスラは電池容量を公開していない。
モデル3より50mm長い4751mmというモデルYの全長は、たとえば「マツダCX-60」と「BMW X4」の中間くらい。DセグメントSUVとしては立派な部類……という感じで、おなじみの「モデルX」よりは明らかに小さいが、日本の路上では十二分に立派な体格だ。かさばるエンジンコンパートメントをもたないBEV専用レイアウトゆえ、室内空間は同セグメントでもかなり広々としている。
インテリアデザインも、兄弟車といえるモデル3によく似る。インパネにスイッチ的なものは存在しない。シフトセレクターも含む2本のコラムレバー以外は、そのつど役割が変わるステアリングホイール上にある2つのジョグダイヤルのみ。あとの操作はすべて中央のタッチディスプレイに集約されており、グローブボックスの開閉すらそこである。
さらにいうと、モデルYには運転席の前にメーターパネルやヘッドアップディスプレイもない。車速もセンターディスプレイ表示で、お世辞にも視認性がいいとはいいがたい。ただ、この新鮮なデザインに感化されると、既存のクルマは古臭く見えてしまう。かつてのテスラよりインテリアの質感は大幅に改善している。一見すると牛革の素材も実際は非動物性の合成素材だが、手ざわりはいい。
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シャシーは剛性感のかたまり
最新のテスラオーナーは自身のスマホとクルマをつなぐのが基本だ。あとはスマホを携帯していれば、クルマに近づくだけでドアロックが解除されて、運転席に座ればシステムが自動的に起動、そのままDレンジに入れるとスルリと走りだす。
ちなみに、専用充電インフラの「テスラスーパーチャージャー」で充電したりすると、連携されたスマホにリアルタイムで通知が届く。試乗中にセンターディスプレイをいじくりまわしているうちに、登録されていたオーナー=テスラジャパン広報担当のスマホの連係を解除してしまったら、即座に広報担当氏から「どうかしましたか?」という連絡がきた(汗)。いやどうも、すみません。それにしても、最新のコネクト技術ってすごいね……。
モデル3やモデルYはそれまでのテスラより大幅に生産効率が引き上げられているのも自慢である。そのキモのひとつが、車体後半下部部分を一体成型した巨大なアルミ鋳造部品(=ギガプレス)が担っている点だ。まあ、追突されたときなどの修繕コストは気になる構造ではあるものの、ご想像のとおり、車体剛性感はかなり高い。また、サスペンション周辺の部品がやけにゴツいのもテスラらしい。
乗り心地や操縦性の調律そのものは、正直なところ、21インチの「ピレリPゼロELECT」タイヤに頼っている部分も大きい感じである。総額1000万円近い高級ミドルクラスSUVとしては、サスペンションストロークが不足気味な感じがする。凹凸に蹴り上げられたときの上下動も大きく、そのときのショックももう少し丸めてほしい。ただ、車体だけはミシリともいわず、タイヤグリップ自体は強力なので、安っぽさだけは感じない。
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血の気が引くほどの加速力
テスラの走りの魅力といえばBEVであることを素直に表現した動力性能である。パワートレインのモードには「スポーツ」と「チル」がある。スポーツモードでアクセルペダルを一気に踏み込むと“ドスンッ”というギアのバックラッシュに起因するとおぼしき強い衝撃とともに、さらにクルマを車体ごとフワリと浮かす(と錯覚するほどの)猛烈な加速をかます。これでも以前のテスラよりは加減速ショックもずいぶん低減されている。
テスラによると、モデルYパフォーマンスの0-100km/h加速は3.7秒。これは最新の「ポルシェ911カレラS」や「BMW M3/M4コンペティション」「ベントレー・コンチネンタルGTスピード」といったスーパースポーツカー群と同等である。ただ、スタート時に最大トルクを発生させられるBEVなので、それこそ最初の1秒のダッシュ力は、これら内燃機関スポーツカーの比ではないくらい猛烈で、瞬間的に血の気が引くほどだ。
もっとも、普段使いにはもうひとつのチルモードがいい。英単語のチル=Chillには「落ち着いた」とか「くつろいだ」といった意味もあり、いわば“去勢”モードである。
テスラの先進運転支援システムである「オートパイロット」は、基本的に車体各部に取りつけられたカメラだけで情報を検知するタイプだ。画面を見ていると、周囲の乗用車と大型車、自転車を含む二輪車、そして道路標識や車線のほか、信号、路面ペイントによる徐行や制限速度の標識、自転車専用レーン、そして赤いポールやパイロンまでも検知しているようだ。
そんなオートパイロットは、たとえば赤信号や青信号、速度超過なども警告してくれるし、通常のアダプティブクルーズコントロール+レーンキープシステムの制御も下手ではない。今回の試乗では検知対象は驚くほど豊富で、検知精度も高かったが、といって他社の同種システムに対してクルマの制御そのものは今のところ特別に高度なわけではない。公式ウェブサイトには「将来的に完全自動運転にアップデートできるシステム」をうたうが、現在のモデルY(やモデル3)は国交省の型式指定を取得していることもあって、もちろん手放し運転はできないようになっている。しかし、テスラは最終的に、カメラで検知した情報に中央のビッグデータをからめてクルマを走らせるつもりらしい。
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使える独自の充電ネットワーク
モデルYでは一般的な急速充電器も可能だが、テスラのような大容量電池のBEVにとって、現在普及している出力50kW前後の充電器はあまり役に立たない。テスラオーナーになったら、出先での急速充電は専用の「スーパーチャージャー」を使うのが基本だろう。
テスラスーパーチャージャーは現時点で日本全国60カ所以上にあり、そこには90kW~250kWの充電器が待機する。しかも、ナビでスーパーチャージャーを目的地に設定すると、到着時間に合わせて電池温度を上げる制御が入るので、即座に大電流充電がはじめられる。
充電プラグもテスラ以外には使えない専用品なので、到着したら、手続き不要でプラグを差し込むだけで充電開始。バッテリー残量が半分以下だったモデルYもわずか20分ほどで(残量8割に達して)充電完了となった。
今回お世話になった千葉・木更津には6基のスーパーチャージャーがならび、先客テスラが2台いたが待つ必要はなかった。充電コストも一般的な急速充電の「e-Mobility Power」より割安なくらいだそうだ。BEVといえばロングドライブ旅行がやりにくいのが大きな弱点だが、テスラなら、最初からスーパーチャージャーの立地に合わせて計画すれば、途中の充電ストレスとはほとんど無縁に思えた。
テスラといえば、海外ではオートパイロットによる事故やバッテリーの発火事故がよく話題にのぼる。もっとも、オートパイロット事故は「そんな使いかたをすれば、そりゃそうなるよ」という事例が大半だし、テスラによれば発火事故も他社に比較して特別多いわけではないという。その是非はともかく、最大の問題はユーザーの生命にかかわる事案について、情報を出したがらないテスラの態度だ。その点は伝統的な自動車メーカーを見習わないと、本当の市民権は得られないだろう。
ただ、こうしてにわかオーナー体験をすると、その斬新なデザイン、強烈な動力性能、高い剛性感(による高級感)、そして絶妙な充電サービス……と、テスラの世界観に心酔できたら、すこぶる心地よいクルマ生活が送れることにあらためて気づかされた。なにかと賛否を呼ぶテスラだが、少なくともBEVのビジネスモデルでは、他社を一歩も二歩もリードしているのは間違いない。信者とも呼ぶべき熱烈なファンがつくのはよくわかる。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
テスラ・モデルYパフォーマンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4751×1921×1624mm
ホイールベース:2890mm
車重:2000kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:水冷式ACインダクションモーター
リアモーター:水冷式AC永久磁石同期モーター
フロントモーター最高出力:215PS(158kW)
フロントモーター最大トルク:240N・m(24.4kgf・m)
リアモーター最高出力:320PS(235kW)
リアモーター最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)
タイヤ:(前)255/35R21 98W/(後)275/35R21 103W(ピレリPゼロELECT)
一充電走行距離:595km(WLTCモード)
交流電力量消費率:150Wh/km
価格:833万3000円/テスト車=945万6000円
オプション装備:ボディーカラー<ディープブルーメタリック>(12万6000円)/プレミアムインテリア<ブラック/ホワイト>(12万6000円)/フルセルフドライビング ケイパビリティ―(87万1000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1421km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:202km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.3km/kWh(車載電費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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