ホンダがまさかの巨額赤字に転落 米国生産車の日本導入への影響は?
2026.03.19 デイリーコラムホンダショックで話題が霧散
2026年3月12日に本田技研工業が発表した電気自動車(BEV)「Honda 0サルーン」「Honda 0 SUV」「アキュラRSX」の3車種の開発・販売中止という第1報は、ホンダファンはもちろんのこと、全世界に大きな衝撃を与えた。
「四輪電動化戦略の見直しに伴う損失の発生および通期連結業績予想の修正と今後の方向性について」と称した報道発表および記者会見の内容は別記事(参照)に明るいので割愛するが、2026年から順次市場投入を予定……と開発が佳境に差しかかっていたBEVの販売計画凍結と、それに伴う累計で最大2兆5000億円にのぼると試算される損失額は、ホンダの未来を左右するに十分なものである。
2026年3月期の連結最終損益で最大6900億円にのぼる赤字見通しを明らかにし、早めの損切を行うことで最小限のダメージで再起に懸けたという見方もできるが、上場以来ホンダが通期で赤字になるのは初めてという。
そうした経営状況の悪化によって経営戦略が見直されるなかで、カーマニア的に気になるのは、今回の報道のちょうど1週間前に発表された米国で生産するアキュラブランドの「インテグラ タイプS」とホンダブランドの「パスポート トレイルスポーツ エリート」の日本導入がどうなるか、である。
6900億円の赤字に比べれば小さなトピックだが、結論からいえば米国生産2モデルの導入は、スケジュールの調整こそ行われるかもしれないものの、基本的にこのまま進められるはずだ(たぶん)。理由は両モデルともすでに米国で生産・販売される車両を日本に持ってくるだけなので、何のデメリットも生じないからである。一台でも多くの車両を生産し売りたい今、これを中止する理由はない(きっと)。反対に輸入中止となれば、いらぬ臆測を生みかねないだろう。
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「米国製乗用車の認定制度」とは?
ホンダが2026年3月5日に発表したプレスリリースによれば、2026年後半より順次発売されるのは、前述のとおりホンダが米国で生産するアキュラ・インテグラ タイプSと、ホンダ・パスポート トレイルスポーツ エリートの2車種。今回の導入は、国土交通省が新たに創設した「米国製乗用車の認定制度」を活用したものだ。
令和8年、すなわち2026年の2月16日に公布・施行された「米国製乗用車の認定制度」とは、国土交通省の公式サイトによれば以下のとおりである。(原文ママ)
1:米国で製作され、米国基準に適合する乗用車等(自動車メーカー等により米国から輸入された自動車であるものに限る。)について、安全性の確保及び公害の防止に係る措置が講じられることにより保安上及び公害防止上支障がないものとして国土交通大臣の認定を受けた場合は、保安基準に適合するものとみなすこととします。
2:国土交通大臣の認定を受けた自動車は、車体の後面に標識を表示するとともに、自動車検査証にその旨を記載することとします。
いわゆるお役所構文であるため若干わかりにくい文章だが、補足を加えたうえで一般的な文章に書き直すとすれば、おおむね下記のとおりになるだろう。
日本と米国では安全性の審査で異なる基準があるため、これまでは車両を輸入する際に追加試験(車両を一定速度で壁にぶつけるなど)が必要だった。だがトランプ大統領のゴリ押しによって誕生した(?)新制度では、自動車メーカーや米国車の正規輸入元が輸入する米国製乗用車に限り、書類審査で日本の基準と同等の安全性があると認定されれば、追加試験なしで輸入が可能になる。認定を受けた車両は、赤色の星形が描かれた直径5cmのステッカーが車体後部に貼られるほか、自動車検査証にも記載される。
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日本に導入されるのはどんな米国生産車?
今回ホンダが導入を発表したアキュラ・インテグラ タイプSとホンダ・パスポート トレイルスポーツ エリートとは、おおむね以下のとおりのクルマである。
インテグラ タイプSは、アキュラブランドで販売されている全長4.7m級のスポーティーな5ドアハッチバックモデル。パワーユニットは最高出力320HP(約324PS)/6500rpm、最大トルク310lb-ft(約420N・m)/2600-4000rpmの2リッター直4ターボ。駆動方式は一般的なFFだが、トランスミッションは6段MTというのがゴキゲンな部分だ。
一方のパスポート トレイルスポーツ エリートは、全長×全幅×全高=4864mm×2017mm×1857mmとなる大型SUVで、オフロード性能を向上させたパスポートの上級グレードだ。乗車定員は5人で、パワーユニットは最高出力285HP(286PS)/6100rpm、最大トルク262lb-ft(約355N・m)/5000rpmの3.5リッターV6自然吸気。トランスミッションは10段ATで、オフロード向けにチューニングされたサスペンションやアンダーボディースキッドプレート、オールテレインタイヤなどが標準装備となるほか、ヒーター&ベンチレーション機能付きのレザーシートやBOSEプレミアムサウンドシステム等々の上級装備も標準装備となっている。
両モデルとも、左側通行用に灯火類を変更し、インフォテインメントやカーナビ、ラジオといったあたりをローカライズする必要はあるが、これらはもちろんホンダによって日本市場向けに最適化されるはずだ。いっぽうステアリング位置は、「左」のままで販売されることになる。
今どき左ハンドルのアメ車(日本ブランドの輸入車)など売れるのだろうか……という心配もあるだろうが、筆者個人としては「意外と売れるのでは?」とみている。
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左ハンドルのホンダ車は売れるのか?
もちろん、まだ発表されていない価格次第という部分が大ではあるものの、左ハンドルという“個性”を求める人は、いまだ少なくない。当然ながら、今や「左ハンドルなんて危ないだけで、そこでもって個性を主張するのはバカらしい」と考えている人のほうが多いはず。この記事をお読みの皆さんも、おそらくはそのように考えているだろう。
だが世の中には本当にいろいろな人がいるわけで、その常識が世の中の全員に当てはまるわけでは決してない。「左ハンドルのホンダ車? いいじゃん!」と感じる人も、ある程度の数は存在している。そして今回の導入モデルは、どうせ大量には輸入されないはずであるため、少数の「左ハン好き」とマッチングする可能性も高いのだ。
「東京オートサロン2026」と「大阪オートメッセ2026」に参考展示された実車を見たユーザーの典型的な反応は、「なかなかカッコいい。でもデカいな」というものだったようだ。確かにインテグラ タイプSの全幅は1900mmもあり、パスポート トレイルスポーツ エリートも前述した数値のとおりデカいわけだが、デカいといっても、パスポートのボディーサイズは「トヨタ・ランドクルーザー“300”」とだいたい同じである。もちろん細かな数値は異なるが、「寸法感」としては似たようなものなのだ。
であるならば「ランクル“300”もいいんだけど、あまりにもメジャーだからもうちょっとレアなやつが欲しいかも」と考える層に「左ハンドルのホンダ製大型SUV」が売れない道理は特にない。そしてインテグラ タイプSのほうも、今どき珍しい左ハンドルのMT車として、筆者のような「右利きの人間は、右ハンよりも左ハンのMT車のほうが実は操作しやすい」と感じている層に、まあまあ刺さる可能性はある。
もちろん値段次第であり、「当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦」的な予想ではあるのだが、筆者としてはこの2モデル、「けっこう売れる!」というほうにベットしたいのだ。
(文=玉川ニコ/写真=本田技研工業/編集=櫻井健一)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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