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第57回:「トヨタiQ プロトタイプ」イタリア海岸線付近に接近中!

2008.09.06 マッキナ あらモーダ! 大矢 アキオ
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第57回:「トヨタiQ プロトタイプ」イタリア海岸線付近に接近中!

ラディカルな告知作戦

日本で発売に向けて着々と準備が進んでいるトヨタの新コンパクトカー「iQ」だが、イタリアでもこの夏から予告キャンペーンが開始されている。こちらで話題となっているのは、ラディカルともいえるその作戦だ。

舞台はミラノ、ローマ、フィレンツェなどの大都市。「標的」は路上駐車された一般のクルマたち。キャンペーン部隊は、そうしたクルマのノーズ部分から巻尺で全長を測る。そしてiQの全長と同じ2985mmのところに、「トヨタiQは、ここまで」というステッカーを貼って立ち去るのである。

最大のライバルとなるであろうスマートが停まっていると、部隊は別の作戦を展開する。ドアミラーにヒモつきのオーナメントを引っ掛けておくのだ。そこに書かれたキャッチは、ズバリ
「キミが夢見た、あと2席」だ。

「トヨタiQプロトタイプ」
「トヨタiQプロトタイプ」 拡大
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奇跡の広場で

それだけでも話題になっていたiQだが、この8月末、さらなるプロモーションが開始された。イタリアのビーチリゾート3か所で2日間ずつ、「トヨタiQプロトタイプ」をみんなの目に触れさせてしまおうというものだ。

以前このコーナーで記したとおり、夏のイタリアでは、人々が集まる海岸沿いで新車や特別仕様車の展示が行なわれるのは毎年の恒例行事である。フィアット各ブランドのほか、近年はシトロエンも力を入れている。
しかし正式発売前のモデルを見せてしまおう、というのは、なかなか大胆な試みといえる。

そのプロモーション第1回目の会場が、我が家から120km離れた港町、ポルト・サント・ステファノであることを知ったボクは、さっそく様子を見に行ってみることにした。
ポルト・サント・ステファノは、モンテ・アルジェンタリオという“島”にある。特別“島”と表現するのにはワケがある。ここはもともと島であったが、18世紀に浅瀬が盛り上がったうえ、19世紀に堤防が建設されたことで、今日はしっかり本土と繋がっている“島”なのである。

ジリーオという小島へのフェリーが出ていることもあって、夏の間は人々で賑わっている。
さっそく町に入って歩いていると、「あなたのクルマは○○cm。トヨタiQは、それより△△cm短い」と記されたカードを持って歩いている人を発見した。思わずボクは「おっ、やってるやってる」と口にしてしまった。

肝心のiQプロトタイプは、ヨットハーバーのそばにある「メラヴィリエ広場」というところに展示されていた。ちなみに“Meraviglie”とは、「驚き」「奇跡」という意味である。イタリアの自治体は新しく建設した場所にそうしたメルヘンな? 命名をするのが常套手段なのだが、新型車展示の場には相応しい名前だろう。

スタンドは、iQのイメージカラーであるパープルと白に統一されている。車両はドアやテールゲート、エンジンこそ開けられていないものの、ウィンドウは左右とも全開にされていて、みんなが覗き込めるようになっていた。日本語の検査済みステッカーが貼られていた。

「キミのクルマ」とiQの全長比較を記したカード。
「キミのクルマ」とiQの全長比較を記したカード。 拡大
ポルト・サント・ステファノにて。
ポルト・サント・ステファノにて。 拡大
iQプロトタイプがディスプレイされたイベント会場。
iQプロトタイプがディスプレイされたイベント会場。 拡大

粋なプレゼント

海岸散歩のついでに通りかかった人々は、いずれも興味深げに観察し、さかんに「bella(かわいい)!」と声を上げていた。
なかには「ラゲッジスペースが足りない」と指摘する男性もいたが、後にリアシートを倒せば充分な荷室が確保されることを知れば、即解決だろう。

そもそもイタリアは、人口千人当たり自動車保有台数が、主要国の中でアメリカに次ぐ2位である。大きな荷室が必要なときは、他のクルマを利用するに違いない。それに、新型「フィアット・パンダ」のときも同様だったが、最初は何かしら文句を言っておいて、いざ人気が出ると「お、なかなかいいじゃないか」とケロッとして買ってしまうのがイタリア人のキャラクターである。心配はない。

スタッフによると、「アンケートでは、ドイツ製高級車をお持ちの方も、結構関心があるようですね」とのこと。
展示されたiQプロトはホワイトだが、白いクルマの人気があまりないイタリアで、どんな色のiQが実際人気色となるか興味あるところだ。

会場ではちょっとしたアクロバットショーも開催され、ムードを盛り上げている。早く眠くなる私は早々に失礼したが、長い夜を楽しむ夏のイタリア人にあわせて、展示は毎晩23時(会場によっては夜中の2時)まで続けられる。

ちなみに、アンケート回答者へのプレゼントは巻尺だった。サイズをアピールするクルマのキャンペーンとして粋なアイディアである。念のため全部ビヨーンと伸ばしてみたら、ちゃんとiQの全長2985mmが測れる3メートル分あった。イタリア人は、ちょっとした大工仕事は自分でやってしまう。そうした意味からも、巻尺は実用的なグッズとして末永く保存されるだろう。

海岸散歩の途中に、みんな次々と立ち寄る。
海岸散歩の途中に、みんな次々と立ち寄る。 拡大
ノベルティのiQ巻尺(3メートル計)。
ノベルティのiQ巻尺(3メートル計)。 拡大

ピッコラ・トヨータ

会場をあとにして、近所のバールに入った。
ボクがもらった小さなパンフレットを店の親父に見せると、「俺も広場で見た見た。ピッコラ・トヨータ!」と、即座に反応が返ってきた。そしてボクがもらった小冊子を、さっそく興味深げにながめる。やってきた常連さんたちもそれに加わり、みんなで小冊子をグルグル回しっこし始めた。

そのうち、彼らは「価格は、わかってるのか?」「ちょっと、これいくつ? スマートより高いの?低いのか?」とボクを取り囲んで質問してくる。
「私はトヨタマンではない」と心の中で叫びつつも、そのたび「未定です」「4cm低いです」と、つい丁寧に対応してしまう気弱なボクであった。

トヨタ様、お願いですので早く発売してください。

(文=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真=大矢アキオ、トヨタ自動車)

近所のバールにて。お客さんも入り混じってiQ談義。
近所のバールにて。お客さんも入り混じってiQ談義。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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