メルセデス・ベンツE350ブルーエフィシェンシー カブリオレ(FR/7AT)【試乗記】
しゃくに障る出来 2012.01.15 試乗記 メルセデス・ベンツE350ブルーエフィシェンシー カブリオレ(FR/7AT)……1001万円
エンジンが新しくなった、メルセデス・ベンツのオープン「Eクラスカブリオレ」。その走りと乗り心地を、ワインディングロードで試した。
ほとんど満点
いつもながら、「う〜む、さすがメルセデス。『いい仕事』してるなあ」と感心するしかないのだが、「さすが」も度が過ぎると憎たらしかったりする。今回ここに登場してもらった「E350カブリオレ」など、その代表だろう。最近あちこちのメーカーから登場が続く4シーター・カブリオレだが、このカテゴリーでメルセデスは圧倒的な先覚者の一員。125年にも及ぶ歴史の大半において、カタログのどこかに瀟洒(しょうしゃ)な4シーター・カブリオレが必ず掲載されてきた。
それほど膨大な経験のすべてを注いだのだから、「さすが」の二重奏、三重奏は当然かもしれない。そういえば、こんな同級生、いませんでしたか。顔はハンサムで脚も長く、成績オール5ならテニスもスキーもうますぎて、ギターもピアノも弾けるだけじゃなく作曲までできちゃって、しかも家庭が裕福で、もう全校女子みんなキャアキャア憧れまくり、みたいな。すげえなあとは思うけど、けっこうシャクに障ったりして。E350カブリオレ、そんなクルマなんです。
その中身はまさに血統書付き。名前はメルセデス乗用車の中核を守る「Eクラス」だが、「史上最高のCクラス」とメーカーが胸を張る「あれ」と主要部品の多くを共用しているのが「Eクラスクーペ」。できの良さは抜群で、スタイリッシュな2ドアなのに実質的にセダン並みの居住性を誇り、いざとなれば並のスポーツカーなど寄せつけないフットワークも発揮できる四方八方ほとんど満点のパーソナルカーだ。ちょっとぜいたくなデートにも似合うし、スーツ姿でアタッシェケースを携えれば行動派ビジネスマンの相棒にもなる。
自信が伝わる仕上がり
それをオープンボディーに仕立て直したのだが、そこにメルセデスならではの「さすが」が光る。大流行の折り畳みメタルトップ(「SL」や「SLK」のような)ではなく、伝統的な「幌(ほろ)」を採用したのが最大のポイントというか絶大な自信の表れ。
4シーターだけに開口部も大きく、車体のガッチリ感を保つのが大変なのに、これを閉じると最初から屋根付きで設計したかのように外界の騒音を締め出すだけでなく、舗装の悪いところを強行突破する瞬間、よ〜く注意して観察しても、ミシリともコトリともしない。戦前から「カブリオレA」とか「カブリオレB」とか乗用車ベースのオープン仕様を多く手がけてきただけのことはある。
それに、あえて幌にこだわったところに、クラシカルでぜいたくな風味も漂う。独特の雰囲気の出し方を底の底まで知り抜いていなければ、こういう仕事はできない。
どこが独特かというと、ある種の不自由さを伴うところ。幌だけにリアウィンドウを大きくしにくく、そのぶん斜め後ろの死角も目立つが、それだけに柔らかく温かい包まれ感も増す。カブリオレというと、どうしても開け放った姿ばかり話題になるが、幌を閉じたE350カブリオレを斜め後ろから眺めると、まるで映画の1シーンみたいに「ワケあり」っぽく見えるのは本当だ(特に雨だったりするとドラマチックかも)。このようにクローズド状態の後ろ姿がスマートであることも、良いカブリオレにとって重要な条件なのだ。
何もかもがメルセデス
走りっぷりは、すでに高い定評を得ているEクラスクーペとまったく同じ。最近どしどし採用範囲が拡大してきた新設計の3.5リッターV6エンジン(先進の直噴システムを装備)は、額面306psももちろんだが、それより37.7kgmもの悠然たる実効トルクを3500-5250rpm という広い回転域でたたき出し続けるところに真の価値がある。乗った感じでは、アイドリングの少し上から高回転まで、ず〜っとパンチ力が変わらない。
そのうえメルセデス自慢の7段AT(7Gトロニックプラス)のDレンジ学習機能が優秀すぎて、どんな瞬間にもエンジンにとって最も都合の良い回転数を多用すべく自動的にギアを選び分けてしまうので、皮肉なことに、エンジンの良さを実感しにくかったりする。
もちろんシフトパドルを指先で引いてマニュアルモードにすることも可能だし、それはそれでスポーツカー的に楽しめるけれど、約10秒で自動的にATモードに戻ってしまうあたり、「余計な操作なんか無用です。すべてクルマに任せなさい」と叱られているように思えてしまう。実際、タコメーターなどにとらわれず、Dレンジが判断してくれるままに乗った方が滑らかで軽快なのだが。
もうひとつ、オープン状態で感心なのは、アウトバーン的なペース(150km/hほど)でも気流が巧みに制御されていること。もちろん多少は巻き込むが、頭頂部の髪がハラハラするだけで、何も我慢せずオープンエア・ドライビングを満喫できる。
………と、何もかも良いことずくめのE350カブリオレ、結局のところ「セダンであれクーペであれ、さらにはワゴンもSUV も、そしてカブリオレやスポーツカーでさえ、それぞれである前にメルセデスでなければならない」という頑固なまでの社是が行き渡っていることを思い知らされただけだった。
逆に言えば、あまりにも教条主義的な息苦しさを覚えるが、それだけに、もし買うとなったら色の選択ぐらいはハジけるべきだろう。今回のテスト車も、濃紺のボディーに濃い臙脂(えんじ)の幌だなんて、なかなか粋なルックスだった。
何層も重ねた厳重な幌には、このほかベージュ、黒、紺など合計4色も用意されているから、ともすれば無難を意識しすぎるオジサン的発想から逃れ、思い切り洒落(しゃれ)てみようじゃないですか。ちょっと年配だけどクルマも服装も華やかだなんて、そんなふうに年輪を重ねてみたいもんですよね。
(文=熊倉重春/写真=高橋信宏)
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熊倉 重春
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