ホンダ・アコード・ディーゼル(i-DTEC搭載/プロトタイプ)【試乗記】
今後の課題 2007.09.30 試乗記 ホンダ・アコード・ディーゼル(i-DTEC搭載/プロトタイプ)切実感を増すクルマの環境性能。過熱する開発競争。進化が加速するディーゼルエンジン。ホンダが、最新ディーゼル搭載車のプレス試乗会を開催した。
i-DTECの概要
ホンダが、新型ディーゼルエンジンを搭載したアコード(ほか)のプレス試乗会を、同社のテストコース内で開催した。
新型ディーゼルとは、昨2006年9月25日に発表した、「i-DTEC」ユニットのこと。2003年に登場した2.2リッター「i-CTDi」を発展させたもので、ガソリンエンジンに匹敵するクリーンさを謳う。
排気量はi-CTDiと同じ2.2リッターながら、より高出力・大トルクに対応するためアルミブロックを強化し、燃料噴射装置をソレノイド(電磁)からピエゾ(圧電素子)インジェクターに変更。また、従来のマニュアルに加え、オートマチックトランスミッションとも組み合わせるようになった。
「i-DTEC」は、日欧米3極のマーケットをカバーするグローバルエンジンである。日本の「ポスト新長期規制」(2009年施行予定)、欧州の「EURO5」(2008年施行予定)、そして2009年から北米はカリフォルニアで施行される予定の「Tier2 BIN5」による厳しいNOx(窒素酸化物)規制をもパスできるという。
キーテクノロジーは、ホンダが開発した画期的な「LNC(Lean NOx Catalyst)システム」。三元触媒では対応できないリーン燃焼時でのNOx処理を、以下のように行う。
(1)NOxを吸着層に吸着。
(2)リッチ燃焼時の排ガス中の水素(H2)とNOxを反応させ、アンモニア(NH3)に転化。
(3)NH3と排ガス中のNOxを反応させ、窒素(N2)にして排出する。
ホンダのLNCは、メルセデスが進める「尿素式NOx選択還元システム」のように、尿素水タンクを備える必要がないのが大きな特長である。乗用車への搭載が容易になる。
また、ディーゼルのもうひとつの大きな問題。微粒子(PM)に関しても、微小なScot(すす)を強制的に焼滅させるパティキュレート・フィルターが実用化され、LNCに組み込まれた。
つまりホンダディーゼルの排ガス浄化システムは、「酸化触媒(CO/HC浄化)」→「DPF(PM除去)」→「NOx触媒(NOx浄化)」で構成されることになる。
ホンダのディーゼル車
栃木県のホンダ四輪開発センターの周回コースで最初に乗ったのは、いすゞから供給された1.7リッターディーゼルを積んだ先代シビック5ドアだった。3万7000km余を走った個体。
エンジンをかけるとブルブルを身を震わせて、ディーゼル車であることを主張する。クラッチをつないで走り始めると、モワーと回転が上がり、タコメーターの針が右へと回る。ギアチェンジ時には、ぼんやり回転が落ちる。
それでもトランスミッションがマニュアルだったこともあり、ほどほど走る。「十分、実用的である」と実際の実用車に対して当たり前の結論を出して、次のクルマに。
続いて乗ったのは、並んだテスト車を見たときから楽しみだった3ドアの「英国シビック Type S」。実際にヨーロッパで販売されているクルマだ。近未来風のフォルムがカッコいい。
「なぜ日本に入れん!? ポンド高ゆえか?」とテストの主旨と関係ないことに憤りながら運転席に座ると、意外に感じた。タコメーターのレッドゾーンが4500rpmから始まる。直前のいすゞエンジン車は、5000手前だったのに。
6段MTを繰りながらコースに出ると、これがいい! エンジンは、現行ユーロ4に対応したi-CTDiユニットで、もちろんターボディーゼル。2.2リッターから140psと34.7kgmを発生する。「ヒーン」と軽いタービン音を発しながら、太いトルクで、飛ぶように加速する。
あとでご一緒したディーゼル担当のエンジニアのかたが、「最初は『えー!? ディーゼル?』と思ったんですが、3ドアのシビックに乗ったらイメージが変わりました」と笑いながらおっしゃっていたが、さもありなん。狭い回転域ながら、豊かに湧き出るトルクでクルマを運ぶ。エンジンをブン回してパワーを絞り出すNAユニットとは異なるちょっと不思議な“スポーティ”。もし3ドアを正規輸入するするようなことがあるならば、ぜひ「ディーゼル+MT」仕様にしていただきたい。まぁ、数売ることははなから諦めていただいて!?
ATとのマッチング
最新の2.2リッター・ターボディーゼル「i-DTEC」を搭載したアコードに乗る。エンジンをかけたとたん、ブルンとボディが揺れる。同乗したエンジニア氏が、「欧州アコードに無理矢理i-DTECを積んでいるものですから」と説明なさる。本来、i-DTECは次期アコードに使われるのだが、いうまでもなく今回の試乗会に供することはできない。「エンジンマウントの位置も合っていない」そうだ。
アクセルペダルを踏んでいくと、オートマチックトランスミッションとペアを組んだi-DTECは、エンジン音こそ“ディーゼル”を意識させるが、トルキーでスムーズ。100km/hでは1750rpm前後だから、いったん巡航に移ってしまえば、この手のセダンとして標準的に静かだ。
加速もいい。聞くと、2.2リッターから、180psと38kgmほどのアウトプットを得ているらしい。ATは、3.5リッター並のトルクに対応してV6用のトランスミッションが選ばれた。
ディーゼルは、低回転域からトルクが太い一方、回転域が狭いので、オートマチックのセッティングは難しい。粘度が高いトルクコンバーターを使用してロスを減らした。また、ごく細かく燃料を噴射できるピエゾインジェクターの特長を活かして、一燃焼ごとのアウトプットの出方を穏やかにする工夫が施され、シフトショックをやわらげた。
エンジンかけはじめの振動こそ大きいものの、走り出せばほとんど不満がない。ニューディーゼルを積む臨時のボディとはいえ「実用の域に十分達している」と思った。
i-DTEC搭載モデルの投入は、2009年が計画される。車種は、まずアコードとシビックで、市販車の価格はガソリン車より1割ほど高くなろう。i-DTECとクルマとのマッチングはほぼ完了しており、あとは「グローバルエンジンとして、いかにコストを抑えて提供できるか」が課題だという。
(文=webCGアオキ/写真=本田技研工業)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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