ボルボV70 T6(4WD/6AT)/XC70 3.2(4WD/6AT)【海外試乗記】
さらに磨きをかけて 2007.09.10 試乗記 ボルボV70 T6(4WD/6AT)/XC70 3.2(4WD/6AT)7年ぶりのフルモデルチェンジとなった新型「ボルボV70/XC70」。内外装からエンジンまで、全面的に改良された「V70」と、そのSUVモデル「XC70」にドイツで試乗した。
「S80」並みのボディサイズ
「ボルボV70/XC70」が新型に切り替わり、ドイツのケルンで試乗会が行われた。高級ワゴンのセグメントリーダーである「V70系」は、現行型が登場以来8年も経過しているとは思えないが、ボルボワゴンの定型としてイメージが確立している。
そこで新型に切り替わるにあたっては、大きくイメージを変えずに更なる大型高級化の手法がとられた。簡単に言えば今度は「S80」がベースとなり、全長4823mm、全幅1861mm、全高1547mm、ホイールベース2816mmに拡大。
エンジンは直列6気筒を積み排気量も3.2リッター(ターボは3リッター)と全部が大きくなった。内容的には「V90」と言うべきものながら、今回V8エンジンは搭載されないから、今後も新たな商品攻勢が待っているのかもしれない。
試乗会場は、シュロスベンスベルクという、バロック風古城を改装したホテル。荘園内の森には「XC70」のオフロード性能を試すスペシャルステージも用意されていた。
ただし天候には恵まれず2日間とも雨であったが、ボルボにとっては条件が悪いほど実力発揮のチャンスとも言える。
安全性重視のレイアウト
新エンジンのラインナップは、自然給気3.2リッター(238ps/6200rpm、32.6kgm/3200rpm)、排気量を3リッターに詰めたターボ(285ps/5600rpmと40.8kgm/1500-4800rpm)の2本立て。
直列6気筒のボアピッチ93mmで、ボアは84mm、よってシリンダー壁の厚みが9mmと十分に採られている。ターボは、ボア82mmでさらに十分。ストロークを96mmから93.2mmに詰めてあるのは、増強されたトルクに対して、その分コンロッドを長くしてピストンの首振り角度を少なくするための措置である。
業界内には同じ直列6気筒でも、シリンダー壁をギリギリまで削った耐久性無視のエンジンもあったが、ボルボは30万km程度の長期使用を想定している。もちろんこれらはスムーズで静粛にまわすことにも大きく貢献するが、何といっても高回転を保って酷使するような場合の安心感や信頼感に通じる。
この直列6気筒は、従来の5気筒と変わらない長さに納められている。補器類をギアボックス側にまとめて、効率的な配置が採られている。今さら長い直6など時代遅れというなかれ、縦にマウントすれば衝突時の室内への侵入は避けられないが、横に置けば受け止める守備範囲は広くなり、FFシステムの駆動機構もまた衝撃に干渉してショックを和らげる。
このあたりが直6を横置きにしてまで、ボルボがFFこそ安全性確保に有利なレイアウト、と主張する理由だ。
リーダーであり続ける秘訣
パっと見ると、それほどサイズアップしたようには見えないけれども、長さも幅もひとまわり拡大されたことは事実だ。日本の狭い路地などではちょっと持て余しそうな気もするが、中に乗って走らせている分にはほとんど気にならない。
前後を絞ってカドを丸めたボディ処理のおかげで、空飛ぶ煉瓦と言われた時代の角張ったボディに比べ、確実に取りまわしはよくなっている。
「Four-C」と呼ばれる電子制御サスペンションも、操舵力を選べるパワーステアリングもS80からの継続であるが、数をこなす意義は確実にあって、リファインを重ねた結果動きはスムーズになっている。
操舵力は全体に軽めなのが世の流れ。これも切り換えてみれば違いはわかるが、停止時しか設定変更できないところが不便。サスペンションは、とにかくボディをフラットに水平移動させることに留意。大きな入力に対するボトミング的な受け止めも完璧。
硬くてストロークのないドイツ車などのライバルに比べて、格段にリファインされていて快適だ。このあたりがボルボがこのクラスのリーダーの座を維持している秘訣か。
日本上陸は今秋
「XC70」はお化粧が派手になった。こちらはブレーキに、斜面下りで車速を一定に保つ「ヒルディセント機構」が加わったことと、地上高を210mmに上げたことが実利的な改良点。
急勾配を転げ落ちるようなセクションでは、自分でブレーキを踏んでロックさせないようにコントロールするより、ヒルディセントコントロールにスイッチを入れて、クルマまかせにしたほうが便利で確実かもしれない。
やはり、2.4トンの車重は相当に重いと実感。地上高のアップは深水防御限界高300mmという数字とともに、荒れた路面での走破性を高めるだけでなく、視点が高くなったことでもXCらしくなった。ボディの捩れ剛性もアップされており、対角線に泥の池ができている特設路ではAWDとともにミシリとも言わない頑丈さを味わった。
そのAWDは従来のハルデックス型のままだが小改良にとどまり、「アウディTT」のようなフルタイム化を見送られたのは残念。
ボルボV70の年間販売計画は7万5000台で、XC70は4万台。8割は欧州で消費されるが、主たる輸出先はもちろんアメリカ。日本へは秋の東京モーターショーを目処に上陸する。
(文=笹目二朗/写真=ボルボジャパン)

笹目 二朗
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】 2025.10.11 新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。
-
NEW
MINIジョンクーパーワークス コンバーチブル(前編)
2025.10.19思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「MINIジョンクーパーワークス コンバーチブル」に試乗。小さなボディーにハイパワーエンジンを押し込み、オープンエアドライブも可能というクルマ好きのツボを押さえたぜいたくなモデルだ。箱根の山道での印象を聞いた。 -
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】
2025.10.18試乗記「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。 -
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】
2025.10.17試乗記「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。 -
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する
2025.10.17デイリーコラム改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。 -
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。