ダッジ・チャージャー SRT8(FR/5AT)【海外試乗記(前編)】
新世代の逸材(前編) 2007.08.16 試乗記 ダッジ・チャージャー SRT8(FR/5AT)2007年6月に日本導入が開始された、ダッジブランド。そのなかで日本未発売のビッグセダン「チャージャー」の最速モデルに試乗した。
緊張感漲るスタイル
日本でのダッジ導入発表会“BOLD NIGHT”では、ただならぬ雰囲気を漂わせていた「ダッジ・チャージャー」に黒山の人だかりができていた。そこには同じくチャージャーに魅せられてしまった僕もいた。それは、1960年代に隆盛を極めたアメリカン・マッスルカーに憧れていた、あの頃の若者たちと同じ熱い眼差しだったかもしれない。自分自身、歳を重ねてある程度は分別がついたつもりになっていたが、たかがクルマに心惑わされるなんて、まだまだ甘いようだ。しかし、そんな一台に出会えたことがまた、むしょうに嬉しかったりもする。
初代チャージャーがそうであったように、現代に甦った最新のチャージャーSRT8も、元を辿ればただのセダンでしかない。それなのにこれほど惹かれるのは何故だろう? 特に60年代のアメリカン・マッスルカーに熱をあげていたわけではないし、どちらかといえば小動物のようなコンパクトで可愛いクルマに興味を持っていたはずなのだが。そんな個人的な思いとはまったく正反対の位置にチャージャーSRT8は君臨する。
クライスラーのビッグセダン「300C」をベースに仕立てられたチャージャーSRT8は、全長5082×全幅1891×全高1466mm(ホイールベース3048mm。いずれも本国仕様の値)という堂々とした体躯を誇る。それでいてまったく鈍重に見えないのはデザインのなせる技といったところだろう。
最新型チャージャーはドアこそ4枚備わっているが、初代のように、ボディ後方に行くにしたがって緩やかに流れ落ちてゆくクーペのようなルーフラインが与えられた。そしてそれと交錯するかのように、リアドア付近からキックアップしたサイドのキャラクターラインと、筋肉の隆起を思わせる逞しいオーバーフェンダーを与えてリアスタイルのビルドアップに成功している。フロントエンドには、見るものを威嚇するかのような吊り目のヘッドライトを装着。
ここまではすべてベーシックモデルのチャージャーにも同じことが言えるが、クライスラーのSRT(Street and Racing Technology)部門が作り上げたSRT8は違う。ボンネットに新鮮な空気を効率的に取り込むエアインレットが設けられ、整流効果の高いエアダムやリアスポイラーなどで武装することで、まるで獲物を狙うかのような獰猛さが加わった。こうして冷静になって観察してみると、なぜ発表会の席でこのモデルに見入ってしまったのかが少しわかった気がする。蛇に睨まれた蛙のようになっていたのかもしれないのだと。
広範囲にわたるチューニング
SRTが手を加えたのは何もエクステリアデザインだけではない。いっそう逞しさが増したボンネットの下には、彼らが手掛けた最新の“HEMI”OHV V8ユニットが収まる。このエンジンは元々は5.7リッターの排気量を得ていたが、ボアを3.5mm拡大して(ボア・ストローク=103.0×90.9mm)排気量を6059ccまでスープアップ。さらに圧縮比を10.3に引き上げ、インテーク・マニフォールドの大径化など吸排気系を見直すことで、最高出力は431ps/6000rpm、最大トルクを58.0kgm/4800rpmにまで増強することに成功した。
当然のことながらフロント:ウィッシュボーン、リア:マルチリンクの足回りもダンパーやスプリング、スタビライザーすべてに手が加えられ、これによって全高は約12mm低まった。ブレーキシステムには前360×32mm(径×厚み)、後350×28mmのグルーブド・ベンチレーテッドディスクとブレンボ製4ポット・キャリパーが奢られ、20インチ鍛造アルミホイールと前後245/45ZR20 99Yのシューズが足元を飾る。(後編へつづく)
(文=桐畑恒治/写真=ダイムラー・クライスラー日本/『CG』2007年8月号)

桐畑 恒治
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。