オペル・アストラ1.6&2.0ターボ(2ペダル5MT/6MT)【海外試乗会(前編)】
第三の選択(前編) 2004.04.28 試乗記 オペル・アストラ1.6&2.0ターボ(2ペダル5MT/6MT) 2003年のフランクフルトショーで登場、新たなイメージをアピールしたオペルのニュー「アストラ」。競争激甚なファミリーカー市場に挑戦するニューカマーの武器は何なのか? 『webCG』エグゼクティブディレクターの大川 悠が報告する。野心で勝て
21世紀になってから急加速されたのが、世界市場での生き残り競争である。SUVからクロス、プレスティッジカーからスモールカーに至るまで、それぞれのジャンルごとに競争は年々激しくなっている。
なかでもここ20年以上、もっとも激しいバトルを演じているのがファミリーカーの主軸になる通称「Cセグメント」。「トヨタ・カローラ」と「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の二強に加えて、ラテン系や日本の各社も主力モデルを投入し、マーケットは加熱している。
今年は特におもしろい。ご本尊のゴルフが第5世代に発展するのに先手を打つよう、ルノーは「メガーヌ」でヨーロッパのCOTY(カー・オブ・ザ・イヤー)をとったし、フォード・グループからは新世代Cテクノロジーの尖兵として、「マツダ・アクセラ(マツダ3)」や、ちょっと上級の「ボルボ40/50」系が登場、次期「フォーカス」へと道を開こうとしている。
そんなおり、昨2003年秋のフランクフルトショーにオペルが発表した3代目「アストラ」は、相当な野心作である。競争激甚なこの市場で勝ち抜くためには明瞭で力強い製品メッセージがキーになると考えたオペルは、アストラを非常にわかりやすいクルマに育てあげた。
スポーティで挑戦的、先端の電子技術による安全性とダイナミック能力の両立、それによって「ゴルフより刺激的なクルマ」というイメージで市場に対抗しようとしている。
ズボンつりおじさんへの決別
結論から先に言うなら、オペルの思い切った戦略は、実際の製品で見事に開花した。
正確にはオペルの路線変更は、現在の「ベクトラ」に始まっている。かつては「サスペンダーでズボンをつり上げているおじさんのためのクルマ」と揶揄されたオペルのイメージを転換しようと、ここ数年進めてきた戦略のうえに今回のアストラはある。
まず形からして挑発的である。5ドアハッチ(後に3ドアやワゴンも追加される)の基本造形文法は、ゴルフやアクセラらとそんなには変わっていないのだが、細部の表現言語がはっきりしているために、かなり個性的かつアグレッシブに見える。眼光鋭いヘッドライトや切れ味が明瞭なサイドのキャラクターライン、シャープなテール造形など、ダイナミズム・イメージを各所で表現している。
サイズも大きくなった。4249×1753×1460?と長く広くなり、リアルームが広がっただけでなく、オペルによればクラス最大の荷室を確保したという。
エンジンはガソリン5種、ディーゼル3種と合計8つもあるし、変速機も3種類用意される。
足まわりは、形式自体は、前マクファーソンストラット/後トーションビームと平凡なのだが、売り物はその電子制御システムである。
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電子の塊
新型アストラは全身が電子のネットワークに覆われている。端的に言えばアクティブセイフティと快適性、そしてダイナミクス性能をすべてまとめてひとつのLANで結びつけたようなものだ。
つまりサスペンション、ブレーキ、ステアリング、トランスミッション、スロットル制御までデジタル回路で結びつけて、様々にクルマを制御する。
その中心となるのが、サスペンションやESPをコントロールする「IDS-Plus(Interactive Driving System)」である。サスペンションレートは常に可変で、さらにスポーツモードに切り替えることもできる。その場合、単に足まわりが硬くなるだけでなく、ATのシフトプログラムも変わるし、ステアリングの応答性やスロットルレスポンスすらスポーティになる。
これらに加えて、タイヤの空気圧検出システムやアクティブ制御のヘッドランプまで備え、まさに電子の塊のようなクルマに仕上がっている。
電子制御によるハイテク装備。それこそアストラが、このタフなマーケットで振りまわす武器なのである。(後編へつづく)
(文=webCG大川 悠/写真=Adam Opel AG/2004年4月)
・オペル・アストラ1.6&2.0ターボ(2ペダル5MT/6MT) 【海外試乗記(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015156.html

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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