第130回:BMW5シリーズの「iDrive」を一週間使ってみて……改訂版!もうちょっと考えてみました。
2004.05.18 小沢コージの勢いまかせ!第130回:BMW5シリーズの「iDrive」を一週間使ってみて……改訂版!もうちょっと考えてみました。
■八つ当たりしたい!?
ゴールデンウィーク中、新型「5シリーズ」をずっとお借りしてたんだけど、れいの「iDrive」に統合されたナビが使いにくいのなんのって。
……ってハナシを前回したんだけれど、もうちょっと考えてみたら、もっと触れるべきことがある! ということで、ちょっとダブりますが、改訂版を書きました。
iDrive、完全に使い方を把握してないのかもしれないけど、まずモニターが小さすぎて、拡大しても詳細がよくわからない。操作系に関しては「戻る」スイッチがないのはツライな。間違った操作してからが困る。わかんなくなると、結局、一番最初の「メニュー」からやり直すハメになったり、やたらイライラする。
「もうちょっと右上が見たいなぁ」なんて場面では、やっぱりジョイスティック的なデバイスが欲しいし。とにかく「カユイところに手が届く」ような使い勝手ではないのよ。
逆に、縮尺を瞬時にダイヤルで変えられるところとか、同じくダイヤルで数字を入れる部分は使いやすかったけど、それ以上に「ナビとしての基本動作」に問題があるように思う。正直、ときどき怒ってモニターに八つ当たりしたくなったくらい!? こらえ性ないってのもあるんだけどさ……。
■でもキライじゃないの……
ただね。そうは言ってもこのiDrive、心底嫌いにはなれないのよね。なぜってソコには「理想主義」があり、「シンプルかつ高機能なものほど素晴らしい」という考えが見て取れるから。それって凄くステキなことよ。
俺は結構、理想主義ってのが好きで、この5シリーズにはBMW自慢の最新ハイテク操作系、アクティブステアリングとかダイナミックドライブもついてるんだけど、これもなかなか嫌いになれない。
ステアリングギア比をスピードによって1対20から1対10まで無段階で変えたり、コーナリング中にロールを限りなく抑えるシステムなんだけど、確かにBMWが昔から持ってるハンドリングの「キモチいい重さ」みたいのはなくなってる部分はある。
だけどこの「無駄は省いて美味しいとこだけ取り出す」って考えのハイテクは、一概に悪くなくて、たまには「ああ、これはキモチいいかも?」って瞬間があるのよ。
大事なのは「操作」と「中身」のバランスなんだよね。
その昔、とあるソニーがエンジニアが「製品における技術の進歩というのは、「デザイン」と「機能」が同時に進化して初めて爆発的なパワーを発揮する」っていってたけどまさしくその通り。
要するに、マッキントッシュのコンピュータやiPod、古くはソニーのウォークマンのこと。実際、先日かのスティーブ・ジョブスも「われわれはiPodで、昔ソニーのウォークマンがやったのと同様のことを成し遂げた」みたいなことを言ってたけど、ホントにそう思います。脳ミソが直結するような感覚的な操作系と、それに十分耐えられるロジックとハードと情報。それらが合わさって初めて新しいエンターテイメントになり、「快楽」になる。
その点iDriveは「デザイン」はいいけど「機能」が物足りないんだよね。
こと「機能」においては、ハッキリと国産ナビの方がよくできてると思います。まず「大画面」があり、情報量タップリの「地図データ」があり、操作系では常に「現在地」に戻れるスイッチ、操作を一段階「戻る」スイッチ、スケールを変えられる「スクロール」ダイヤルみたいのがあって、さらに現在位置を微妙に調節できる「ジョイスティック」がある。あの機能分担は結構優れている。
たださ。なんかカッコ悪いんだよね。統合性が足りないと言うか、単純にデザイン、質感がイマイチなだけかもしれないけど。
理想はその両立だよね。iDriveのシンプルさと、国産ナビの機能性。コイツが両立すれば最高でしょう。今のところ、「アウディA8」についてる「MMI」とか一部日産車の操作パネルはいいと思うけどさ。ってなわけでないものねだりな俺。率直に言って、もうちょっとカッコよくて、使いやすい奴が欲しいです。メーカーの皆みな様さま方。勝手言ってすいませんけど!
(文=小沢コージ/2005年5月19日)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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