第81回:キブンはハムレット!?“退屈へのレジスタンス”「ルノー・メガーヌ」に日本で乗る
2003.12.12 小沢コージの勢いまかせ!第81回:キブンはハムレット!?“退屈へのレジスタンス”「ルノー・メガーヌ」に日本で乗る
■刺激的なデザイン
新型「ルノー・メガーヌ」に乗ってきました。ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを獲ったってこともそうだけど、すんげぇ気になるモデルだったから。だってカッコいいじゃん。やたら“挑戦的”なデザインが気になるじゃん! 人もクルマも“チャレンジャー”ってのは魅力あるよね。松井稼頭央とかさ。
だいたい、最近のBMWとルノーのデザインってすごいよね。ほとんど「ノルかソルか」のバクチ的デザイン。なかでもメガーヌは、全ルノーラインナップのなかでもキーになると思った。ヨーロッパの街なかで見た時、「すんげぇ刺激的だなぁ」って感じたし。
だけど、メガーヌは、BMWでいう3シリーズ的存在でしょ?「ヴェルサティス」や「アヴァンタイム」がBMWの7、6シリーズが、ある種アドバルーン的存在だとしたら、メインはコイツ。本当に数売って“実”を取らなきゃならない、一番重要で深刻なモデル。
ヨーロッパじゃ幸いなことに、デザインにしろ、アヴァンギャルド精神にしろ受け入れられて、売れてるみたいだけど、果たして日本ではどうか?
■退屈へのレジスタンス
率直にいいましょう。エクステリアデザインはステキだと思った。驚きのキャッチフレーズ“退屈へのレジスタンス”もよかったし、実際そういう印象を受けた。冷静に見ると、日本では多少埋没する部分もあるけど、街がゴチャゴチャし過ぎてるからかもしれない。とにかく、俺的には二重マル。
問題なのはインテリアだね。ほとんどアヴァンギャルドさがない。質感も高いし、わざとシンプルにしたんだと思うんだけど、俺にいわせるとオーソドクスすぎるっちゅうか、フルーすぎるっちゅうか。
それに、最近の日産車にしろ、「トヨタ・プリウス」にしろ、いまの日本車ってインテリア凄いじゃない? まるで新手のパソコンみたいな勢い。正直、メガーヌはエクステリアのわりに、インテリアに刺激がない。なおかつ、ルノーの場合、BMWみたいに「オーソドックスだけど、それがBMWらしい!」みたいな言い訳も使えない。日本におけるブランドイメージがないから。
それから乗り味。ステアリングから乗り心地からペダルのタッチから、すんげぇしっかりしてて厚みがあってイイ。ただ、どうにも「軽さ」がない。昔のルノー、俺が持ってるトゥインゴみたいな、お気楽さがない。
これはまあ、ないものねだりみたいなもんで、「ユーロNCAP★★★★★」っていう、超高い衝突安全性の見返りでもある。ドアにしろボディにしろ、異様に堅牢感あります。乗ってると「死なねぇなぁ」って感じ。
でも、日本じゃオーバークオリティな気もするんだよね。おそらく、アウトバーンとか200km/hぐらいで飛ばしてるとうれしいでしょう。その「死なねぇ感」がヒシヒシと伝わって。ところが、日本じゃ本当の価値を実感できない気がする。よっぱど飛ばす人しか。
■ハムレットみたいに悩む
なによりの問題は、室内の狭さ。フロントシートはイイのよ。クッションに厚みがあって、フランス車らしくて凄くいい。だけどハッキリとリアシートは狭い。特にヒザまわりは、正直俺のトゥインゴ並みかとも思った。ここだけにスポット当てたら、マジ、ホンダ「フィット」とか買っちゃう。あんなに小さくて、あんなにバカ広いんだから。安全性も高いし、だいたい値段も半分!
それもこれも、あのシルクハットみたいなスタイルと、「ドライバーを車両の真ん中に置いて、ドライブフィールをよくしたい」っていう、ルノーの理想主義からきてるとはいえ、果たしてその考えが日本で理解されるかどうか……。
ヨーロッパで乗ると、心底欲しくなるでしょう。カッコいいし、安心できるし、乗っててキモチよさそう。リアの狭さも気になんない気がする。俺なんか買うなぁ……、理想主義って結構好きだし。
だけど日本じゃぁね。日本って「理想」より「現実」の社会じゃない? クルマにしろ政治にしろ。ホントはどこの世界も同じかもしれないけど。「理想」を取るべきか「現実」を取るべきか。ハムレットみたいに悩むね。このクルマは。
ちなみに聞いて驚いたけど、フランスじゃこの新型メガーヌになって、平均購買年齢が10歳ぐらい落ちたんだって。どこのメーカーも、ユーザーの若返りにメチャクチャ苦労してるから、これってスゴイことです。面白い国だよね、フランスって。
(文=小沢コージ/2003年12月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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