ホンダ・シビック タイプR【試乗記】
文化と体育会系 2003.01.06 試乗記 ホンダ・シビック タイプR ボディはイギリスで、エンジンは日本から持ち込まれてつくられるニュー「シビック タイプR」。自動車ジャーナリスト清水和夫による、フランスはマニクールサーキットでのインプレッション。会員コンテンツ「Contributions」より再録。
![]() |
![]() |
「タイプR」のグローバル化
F1フランスGPが開催されるマニクールサーキットで欧州シビックの試乗会が行われた。このサーキットで、シビック タイプR(最高出力200psの欧州仕様)をテストした。
シビック タイプRは、欧州マーケット用に開発された3ドアハッチで、200psという最強エンジンを搭載したモデルである。日本にも2001年12月6日発売される予定だ。日本で発表済みのインテグラタイプRとの違いが話題となっている。
インテグラとシビックはボディやシャシーは共用だが、エンジンのパワーがインテグラが220ps、シビックが200ps(日本仕様は200psをチューニングして215ps)と20psの差がある。いままでのシビック タイプRは1.6リッター、インテグラタイプRが1.8リッターと異なるカテゴリーとして棲み分けていたが、今回はともに2リッターで同じエンジンとなった。
3ドアシビックはイギリス工場で生産され、2リッターの最強エンジンは日本から持ち込まれる。一方、インテグラはアメリカで「アキュラ」ブランドとして売られる少し高級なスポーツクーペだが、国内生産を基本とする。シビックとインテグラは、タイプRがグローバル化した異色なライバルとなった。
はたしてユーザーの混乱は避けられるのであろうか。シビックとインテグラタイプRの違いはどこにあるのだろうか。
熟成された電動パワステ
マニクールサーキットで試乗したシビック タイプRは、欧州市場で販売されるモデルそのものだ。彼の地ではタイプRのようなクルマでも、一般道路での安全性や、快適性も普通のクルマと同じように求められる。
同じ理由でエンジンは200psに抑えられ、中低速のトルクを重視したチューニングが施される。一方、日本仕様はエンジンを215psにするだけでなく、サスペンションをすこしハードにセッティングし直すという。
インテグラタイプRはサーキットを本籍としているが、欧州シビックは一般道路の乗り心地とのバランスをとても大切にしている。だからマニクールの郊外を走っても決して不快なほどサスペンションは硬くない。これならアウトバーンでもワインディングでもバランスの良い走りが可能だろう。
シビック タイプRはサーキットの限界走行ではアンダーステアが目立ってしまうが、それはアウトバーンなどの安全性を考えるとやむを得ない特性だ。インテグラはタックインがあるが、シビックはないに等しい。
しかし、決定的な両者の違いは、エンジンやサスペンションではなく、むしろ異なるパワーステアリング機構によるステアリングフィールの違いのほうが大きいようだ。
シビックは電動パワーステアリングを使い、S2000で採用されたVGS(Variable Gear ratio Steering)という、車速と舵角によってステアリングギア比を変化させる機構を搭載する。従って、ステアリングの切りはじめはシビックの方がややクイックに感じるだろう。さらにいままで手応えが甘いといわれてきた電動パワーステアリングも、かなり熟成が進んで手応えが良くなっている。1.4リッターの3ドアシビックでさえ、しっかりした手応えが得られており、国内の5ドアシビックより改善されているくらいだ。
サーキットでのシビック タイプRは、路面のグリップの変化をよくステアリングに伝えており、安心感が手のひらで感じられるようになった。一方で、インテグラは油圧のパワーステアリングを使っている。こちらのほうが手応えは重めであるし、ステアリングレスポンスもゆったりしている。
![]() |
一般道路での快適性ではシビック
このようにインテグラとシビックのタイプRは、一卵性という成り立ちを持ちながら、不思議なことにその乗り味は異なる部分が多い。欧州のクルマ文化を持ったシビックか、あるいはサーキットを元気良く走れる体育会系のインテグラか。その選択は迷うところだ。
タイヤのサイズはインテグラが225/45-17インチとワンサイズ大きいし、ブレーキはブレンボの4ポッドがついている。装備だけを見るとインテグラが有利。ボディサイズは僅かにシビックのほうがコンパクトだ。一般道路での快適性ではシビック、スポーツ性ではインテグラというのが、今回の暫定的な結論である。
(文=清水和夫/写真=本田技研工業/2001年11月7日)

清水 和夫
-
ロイヤルエンフィールド・クラシック650(6MT)【レビュー】 2025.9.6 空冷2気筒エンジンを搭載した、名門ロイヤルエンフィールドの古くて新しいモーターサイクル「クラシック650」。ブランドのDNAを最も純粋に表現したという一台は、ゆっくり、ゆったり走って楽しい、余裕を持った大人のバイクに仕上がっていた。
-
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】 2025.9.4 24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
NEW
フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス(前編)
2025.9.7ミスター・スバル 辰己英治の目利き「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のなかでも、走りのパフォーマンスを突き詰めたモデルとなるのが「ゴルフR」だ。かつて自身が鍛えた「スバルWRX」と同じく、高出力の4気筒ターボエンジンと4WDを組み合わせたこのマシンを、辰己英治氏はどう見るか? -
ロイヤルエンフィールド・クラシック650(6MT)【レビュー】
2025.9.6試乗記空冷2気筒エンジンを搭載した、名門ロイヤルエンフィールドの古くて新しいモーターサイクル「クラシック650」。ブランドのDNAを最も純粋に表現したという一台は、ゆっくり、ゆったり走って楽しい、余裕を持った大人のバイクに仕上がっていた。 -
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。