トヨタ・ランドクルーザー100 ワゴンVX(5AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ランドクルーザー100 ワゴンVX(5AT) 2002.10.08 試乗記 ……431.0万円 総合評価……★★★★押し出しイチバン
「メガクルーザー」なきあと、トヨタ車のなかで最も押しだしのきく1台。「ヨイショ」と、本格ヨンクらしい高いフロントシートに座れば、あたりを睥睨する視点、四角く大きなエンジンフードが、ドライバーにえも知れぬ優越感を与える。セルシオ譲りのV8、マイチェンにともない5段に格上げされたAT、そしてフロント独立懸架の足まわりで、ドライブはスムーズ至極。2トン超の車重を感じさせない加速。高速道路ではハイスピードクルーザー。前行くクルマがたちまち道を譲る。さすがは“陸の王者”なり。
低速域ではタイヤの切れ角を大きくするギア比可変ステアリングシステム「VGRS」の恩恵で、街乗りでもボディの取り回しはサイズのわりに、あくまでサイズのわりに、ラク。もちろんハンドルは軽く、物理的な労力は必要ない。
ランクルには上級車種「シグナス」も用意されるけれど、文字通り“実戦”を経て鍛えられたヘビィデューティさがプレミアムの1ファクターであることを考慮するならば、ただのランクル100の方がスノッブだ。裏を返せば、街で見る多くのランクルは、過剰さをイメージに昇華させて正当化している“裸の王様”にすぎないわけだが……。ちなみに、「10・15モード」のカタログ燃費は、6.3km/リッター。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行「100シリーズ」は、1998年1月から販売が開始された。遠い祖先は、1955年の「20系」。その後、67年の「55系」、80年に「60」系、90年には「80系」と代を重ねてきた。100系は、フロント独立懸架、リア固定式のシャシーに、5ドアのボディを載せる。ワゴンとバンに大別され、前者には4.7リッターV8、後者には4.2リッター直6ターボディーゼルが搭載される。
2002年8月にマイナーチェンジを受け、デビュー当初の4段ATは5段に格上げされ、バンにのみ設定されていた5段MTは廃止された。そのほか、ステアリングギアが可変化されたのが、大きな変更点だ。
(グレード概要)
テスト車の「VX」は、ワゴンのベーシックグレード。2列シートの5人乗り。上級版として、デタッチャブルのサードシートを備えた8人乗りの「VXリミテッド」、アクティブサスほか、ムーンルーフ、電動シート、ルーフレール、木目調パネルなどを標準で装備する「VXリミテッド Gセレクション」が設定される。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
機能的によく考えられたインパネまわり。ボタン類が単純で大きいのがいい。センターには、「マルチインフォメーションディスプレイ」が設置され、「外気温」「平均車速」「平均燃費」などが表示される。ふところ具合が気になるときは、「瞬間燃費」をチェックしながら運転するといい。
計器類は、自発光式の「オプティトロンメーター」。キーをひねると、まず針が、続いて数字が光る。エンジンをとめるとフェードアウト。レクサスばりの演出だ。走行中は、ニードルの先から青い光が照射され、メーターまわりのリングに反射するという凝りよう。
ベーシック版「VX」はオーディオレス、なのはともかく、オプションでもナビゲーションシステムの設定がない。インパネにディスプレイが埋め込まれた形態を望むヒトは、「VXリミテッド」以上を選ばなければいけない。
(前席)……★★★
クロカンとしての実力を暗示する(?)質素なフロントシート。左右ともシートヒーター付き。大柄なボディながらシートサイズは標準的で、座面の前後長がやや短い。ソファのようなラグジュアリーな座り心地。運転席側にのみ、座面の角度を前後にわけて調整する2つのダイヤルと、腰の後ろを押すランバーサポート(なぜか電動)が備わる。センターの肘かけは、フタを開けるとトレイと深さ20cm強の巨大なモノ入れになる。なんでも放り込める。
(後席)……★★★
リジッドのリアサスながら、後輪からの直接的な突き上げはよく抑えられる。ただ、テスト車の「VX」はワゴン(3ナンバー)だが、見かけほど後席の居住性はよくない。フロアが高いため、着座位置は意外に低い。膝前、頭上とも空間はじゅうぶんに取られるが、前席下につま先を入れにくいのが気になる。背もたれは平板で薄め。リクライニングできるが、バックレスト下端が座面後端より上に位置するため、フラットにならず、くつろげない。個人的には、背もたれを後ろに倒せるより、荷室と乗員スペースを隔てるラゲッジネットを標準で設置してほしい。バックレストは分割可倒式。前に倒した背もたれごと、さらに前席後ろに跳ね上げてラゲッジスペースを拡大することもできる。
センターシートに3点式シートベルトとヘッドレストが備わるのはリッパ。背筋を伸ばした姿勢を強いられるが、実用的。中央席と右席に、ISOFIX対応チャイルドシート用アンカーが備わる。
(荷室)……★★★★
オプションの「スペアタイヤキャリア」を装着すると、キャリアを開けてからでないと、荷室にアクセスできない。ランクル100のリアドアは、レンジローバーのようにガラスハッチだけを開けることもできるから、ちょっともったいない。床面最大幅148cm、奥行き120cm、天井までの高さ100cmと、大きなスペース。後席を畳めば、奥行きは165cmに延びる。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ワゴンに用意されるのは、V8ガソリンユニットのみ。先代セルシオに使われた4リッターV8「1UZ-FE」型をベースに排気量をアップ、シリンダーヘッドをアルミから鋳鉄に変えた。最高出力235ps/4800rpm、最大トルク43.0kgm/3600rpmを発生。粛々と回る。新たに採用された5段ATとのマッチングは抜群。ギアを変えやすいようにスタッガード式のジグザグゲートが採用されたが、通常は「D」に入れっぱなしでなんらストレスない。シフターの副変速機は、「ハイレンジ」と、デフがロックされる「ロウレンジ」が備わる。後者を使う機会はそうないだろうが、「安心」と「誇り」の源でもある。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
ヘビィクロカンを感じさせないラグジュリーな乗り心地。(燃費を気にしなければ)そうとうなハイスピードクルージングもタイヤを鳴らしてのコーナリングもこなす。オフロード性能は知るべくもないが、「能ある鷹は……」であることは間違いあるまい。
マイナーチェンジにともない、走行速度にあわせてタイヤの切れ角を変化させる「VGRS」(Variable Gear Ratio Steering)を採用。低速時はよく切れ、高速時は落ち着いたレスポンスを得る。不自然さは皆無。驚くべくは、センサーを使ってレーンチェンジ時などの車両の応答遅れを測定したり、左右輪の路面が違うときのブレーキングでは、各輪のブレーキを個別に制御する「VSC」(Vehicle Stability Control)と結びついて、ステアリングギアに反映すること。挙動の安定化に続き、ハンドリングそのものも、電子制御の時代に入りつつある。
(写真=難波ケンジ)
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【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年9月18日から19日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:746km
タイヤ:(前)275/70R16 114S(後)同じ(いずれもブリヂストン・Dueler H/T 689)
オプション装備:電動デフロック(7.5万円)/サイドエアバッグ(8.5万円)/リアアンダーミラー(0.6万円)/ヘッドランプクリーナー(1.2万円)/電動格納式メッキドアミラー(2.0万円)/クラディングパネル(5.0万円)/ルーフレール(3.5万円)/バックドア付きスペアタイヤキャリア(ロック付き:5.2万円)/スーパーライブサウンドシステム(MDプレイヤー付きラジオ+インダッシュ6連奏CDオートチェンジャー+7スピーカーほか:13.8万円)/寒冷地仕様(3.7万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:325.5km
使用燃料:57.5リッター
参考燃費:5.7km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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