フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント/シャラン/パサート ブルーモーションモデル試乗会【試乗記】
非凡なる平凡さ 2012.07.09 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントTSIトレンドライン ブルーモーションテクノロジー(FF/7AT)/シャランTSIコンフォートライン ブルーモーションテクノロジー(FF/6AT)/パサートTSIハイライン ブルーモーションテクノロジー(FF/7AT)……279万円/379万円/374万円
見た目も大きさも異なる3台のフォルクスワーゲン。その中で、燃費向上のための技術「ブルーモーションテクノロジー」はどう生かされているのか。一気乗りしてチェックした。
今や7モデルで展開
「1台のクルマに二つの動力源を持つのは合理性に欠ける」と、当初ハイブリッドシステムに冷淡だったドイツの自動車メーカーが、環境性能、具体的には燃費基準のハードルが高まるなか、今ではそれぞれの特徴や歴史を強調しながら、一斉にハイブリッドシステムに取り組んでいる。
一方で当然のことながら、従来型モデルの燃費向上にも余念がない。ただ、自動車の燃料消費量はさまざまな工夫の積み重ねによって減少するものなので、なかなか「ハイブリッド=エコ」といった明快な図には落とし込みにくい。
そこでフォルクスワーゲンが考えたのが、燃費向上に有効な技術のパッケージを「ブルーモーションテクノロジー」と名付けること。TSIユニットまたはTDIユニット搭載車で、Start/Stopシステム(アイドリングストップ機構)とブレーキエネルギー回生システムのテクノロジーパックを採用したモデルに、ブルーモーションテクノロジーのブランド名が与えられる。
日本では、「ポロ」「ゴルフ」「ゴルフヴァリアント」「シャラン」「パサート」「パサートヴァリアント」、そして「トゥアレグ」に、ブルーモーションテクノロジーのプレートが貼られたグレードが用意される。
ブルーモーションテクノロジー車を集めたプレス試乗会で、最初に乗ったのが1.2リッターターボエンジンを搭載する「ゴルフヴァリアントTSIトレンドライン」。わが国では、1.4リッターツインチャージャーを積んだ上級グレード「TSIコンフォートライン プレミアムエディション」も販売されるが、こちらにはアイドリングストップ機構やブレーキ回生システムが搭載されず、ブルーモーションテクノロジーのサブネームは付かない。カタログ燃費は、1.2リッターターボモデルが19.0km/リッター(JC08モード)、1.4リッターツインチャージャーが15.8km/リッター(同)である。
いちだんと実用的になった「ゴルフヴァリアント」
念のため復習しておくと、フォルクスワーゲンのTSIユニットとは、排気量を落として過給器で出力を補う直噴エンジンの総称である。エンジンそのものを軽量化し、また熱損失やメカニカルな抵抗を減らせるので効率をアップできる。
かつては“ガス喰(く)い”の代名詞だった過給器を燃費向上のために使えるようになったのは、燃料直噴技術のおかげ。噴射する燃料の量やタイミングを精緻にコントロールでき、またシリンダー内に直接燃料を噴射するのでシリンダー内の温度を下げられる。異常燃焼が起きにくくなるので、過給器付きエンジンにもかかわらず、思い切って圧縮比を上げられるわけだ。
ゴルフヴァリアントTSIトレンドラインに搭載される1.2リッターターボの圧縮比は10.0:1と、自然吸気エンジン並み。そこに過給器で強制的に空気を送り込んでパワーを引き出す。最高出力105ps/5000rpm、最大トルク17.8kgm/1500-4100rpm。1.8リッターエンジンに匹敵するアウトプットである。
なんとなくハッチバックの派生車種的だった先代と比較して、ワゴンボディーのスタイリングがすっかりこなれた現行ゴルフヴァリアント。過給器付きエンジンならではの、使いやすい台形の出力特性の恩恵もあって、1.2リッターという排気量を意識させない力強さを見せる。街なかでのアイドリングストップ機能がうれしい。始動もスムーズ。ただでさえ便利なゴルフに下駄(げた)を履かせたかのゴルフヴァリアント。その実用性が、さらにかさ上げされた印象だ。
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執念すら感じさせる洗練度
4ドアセダンの「パサート」、3列シートを持つピープルムーバー「シャラン」にも乗ることができた。輸入車の「地味・派手番付」を作ったら、地味側の横綱・大関になりそうな二車。それぞれ2グレードが用意されるが、いずれもブルーモーションテクノロジーの名が冠せられる。
シャランに搭載されるのは、ターボとスーパーチャージャーを備えた1.4リッターTSIツインチャージャーユニット(150ps、24.5kgm)。2006年に登場したTSIエンジンの皮切りユニットで、当時、これとツインクラッチを用いたトランスミッション「DSG」を組み合わせたパックが、「いかにもメカ好きドイツ人技師が好みそうな……」と大いに話題になった。
1500rpmから最大トルクを発生する特性に加え、パワーの立ち上がりも急で、大柄なシャランのボディーを痛痒(つうよう)感なく走らせる。シャランは、“まんま”ゴルフを運転している感覚で最大7名の乗員を運ぶことができる。「独立したぜいたくなシート」「しっかりした足まわり」「高い剛性感」と美点は数あれど、1910mmの全幅は、東洋の島国では少々持てあますかもしれない。
日本で買えるパサートが、今や1.4リッターターボだけというのは驚きだ。1430kgのウェイトに122psと20.4kgmの出力だから、動力性能に不満はない。直線基調の、愛想はないが理知的なパサートのパワーソースとして、よく合っている。フォルクスワーゲンのトップ・オブ・セダンとして、W8やらV5やら、多彩なシリンダー数をそろえていた時代がウソのよう。多気筒をして高級車の証しとする常識をうち捨てた、アグレッシブなエンジン選択と言える。
ハイブリッドシステムには乗り遅れた感のあるフォルクスワーゲンだが、EVを含む新しい動力の研究・開発に加え、既存技術のブラッシュアップには、ある種の執念を感じさせる。スムーズで実用的。驚くばかりの洗練度だ。
(文=青木禎之/写真=高橋信宏)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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