ホンダ・インテグラ タイプR(6MT)【試乗記】
『たちまち表彰台を独占』 2001.07.10 試乗記 ホンダ・インテグラ タイプR(6MT)……259.0万円 街で、峠で、サーキットで、「最速FFモデル」の名を欲しいままにしたホンダ・インテグラ タイプR。2001年7月2日に発表された2代目は、排気量を2リッターにアップして新開発された。自動車ジャーナリスト、河村康彦が報告する。S2000に勝るとも劣らない
「インテR」ことホンダ・インテグラ タイプRが2代目モデルへと進化した。「FF最強・最速のスポーツモデル」という基本コンセプトは従来通り。そのうえで、“追加モデル”としてモデルライフの半ばに登場した先代とは異なり、今回はインテグラシリーズ自身、当初から「R」の存在を意識しての開発となった。
実際、このクルマの走りの実力は、好評を博した従来型のそれが霞んでしまうほどに鮮烈、かつ強烈そのものだ!
新開発の2リッター「i-VTEC」ユニットは、アイドリング状態から8600rpmのレブリミッターにタッチするまで、まさに一点の淀みもなくパワフルに回りきる。ホンダお得意のVTECでバルブタイミングとリフト量を変化させ、VTC(連続可変バルブタイミング・コントロール機構)によって、給排気バルブのオーバーラップをコントロール。最高出力220ps/8000rpm、最大トルク21.0kgm/7000rpmを発生する。
同じくホンダ2リッターを積むS2000は、250ps/8300rpm、22.2kgm/7500rpmだから、最高出力値では「なかばコストを無視して開発した」というS2000用エンジンにはさすがに敵わない。が、1、2速にトリプルコーン、3から6速にはダブルシンクロを組み込んだ6段MTは節度感に富み、ギアボックスのフィールはインテRの勝ち。トータルの動力性能評価では「S2000に勝るとも劣らない」ということになろうか。
そのまま草レースに
フロント=マクファーソンストラット、リア=ダブルウィッシュボーンのサスペンション形式を採るフットワークは、もちろん硬派そのもののセッティング。とはいえ、単に硬いというだけではなく、時にはしなやかな一面をも覗かせる優れたポテンシャルの持ち主だ。そのことは、ドイツはニュルブルクリンク旧コースを模し、北海道は鷹栖の苛酷極まりないテストコースで確認済み。
また、ボディの剛性感がとんでもなく高く、侵入した振動をたちまち減衰させてしまうため、締まった足まわりながら、不快感が小さいことが印象的だった。
ブレーキは、ホンダとして初めてブレンボ社と協同開発。フロントにはアルミ対向4ポットキャリパーが奢られる。「効き味」「信頼性」ともに絶大なる感触の持ち主だ。バンパー下部からのブレーキ冷却ダクトまではなから備え、ちょっとした草レース程度であれば、このままでたちまち表彰台を独占してしまいそう……。まさに「FF車史上最強・最速」を実感させてくれるニューインテRなのである。
(文=河村康彦/写真=須藤章一&本田技研工業/2001年7月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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