アウディA4アバント 2.0 TFSI クワトロ(4WD/7AT)【試乗記】
道もクルマも“アウディ化” 2012.06.27 試乗記 アウディA4アバント 2.0 TFSI クワトロ(4WD/7AT)……653万円
デザインや機能に変更が加えられた、アウディの基幹モデル「A4」。そのワゴンバージョン「アバント」の走りをリポートする。
思いがけずもフレンドリー
直線と平面で構成された四角四面のワゴンなんて、今や希少種になってしまった。大量の荷物を積むことよりも、流麗なスタイリングと高級感が優先されるようになって久しい。
アウディが「アバント」の名で送り出してきた数々のワゴンが、その傾向を助長してきたことは間違いないだろう。他のブランドにも“アウディ化”は徐々に浸透し、ワゴンのおしゃれ度はどんどんアップしてきた。お堅いイメージだったボルボだって、新しい「V60」などはデザインが最大の売りだといってもいい。
それでもアウディはさらに先を行こうとするわけで、今年2月に販売が開始された「A6アバント」は、アドバンテージを広げたように見えた。ルーフラインの美しさは特筆すべきもので、高級感のあるドライブフィールと相まって魅力的なモデルに仕上がっている。2008年に登場した「A4」シリーズもこの4月にマイナーチェンジを受け、A6譲りのデザインを手に入れた。もちろん、それ以外にも多くの部分に手が入れられている。
顔つきもさることながら、乗ってみるとずいぶん印象が変わっていることに気付く。思いがけずも、フレンドリーなのだ。一番小さい「A1」からしてアウディは近寄りがたい威厳を感じさせるのだが、このA4アバントは当たりが柔らかい。従来は洗練と同居していた、ちょいワルなコワモテという側面が消えたかのようだ。
かくあるべき洗練
箱根の山道を走ってみると、もちろん速い。しかし、強力なエンジンパワーでどう猛に加速するという体ではない。迫力を前面に出すことなく、すべての角を丸めてドライバーに伝えてくる。なにしろ、乗り心地がいいのだ。記憶の中のA4は、もう少し硬質なクルマだった。“スポーティー”という言葉が、もっと直接的に表現されていたように思う。加速感、コーナリング時の踏ん張りなどを、ドヤ顔で強調していた。
新しいA4は、乗員の快適さが何よりも優先されているようなのだ。それは、スポーティーさが犠牲になっていることを意味しない。これみよがしに力説する必要がなくなっただけだ。速さやコーナリング性能はそのままに、しなやかな衣をまとっている。一段大人になった感じだ。洗練とは、かくあるべきものだろう。
エンジンの出力は従来通りだが、燃費は大幅に向上している。アイドリングストップ機構や電動パワーステアリングなどが、高効率化に寄与しているそうだ。今回の試乗では、高速道路が6割ほどで500キロ弱走り、燃費は満タン法で10.5km/リッターだった。走りの質を考えれば、悪くない数字だ。高級感やスポーティーな走りは重要な要素だが、アウディといえども今の時代はそれだけでは通用しない。環境性能に加え、安全性能も強化してきている。プレミアムワゴン作りは、いろいろな方向に目を配らなければならないから大変だ。
新しいモデルだから新しい道で試したいと思い、新東名を走ってみた。しかし、クルマをテストするにはまったく向いていないコースである。コーナーのRが大きく路面もまったく荒れていないから、どんなクルマでも快適に走れる。しかも一部を除き、広々とした3車線だ。設計速度が140km/hであるにもかかわらず、制限速度は100km/hのままだから、なんともけだるいドライブになる。この道とこのクルマの組み合わせなら150km/hでも支障が生じそうにないが、もちろん試すわけにはいかない。
安全のための42万円
「アウディサイドアシスト」が付けられているため、隣にクルマが近寄ってくるたびに警告灯がチカチカ光る。「アダプティブクルーズコントロール」「アウディアクティブレーンアシスト」とセットで、42万円のオプションだ。安全のためならこのぐらいの金額を惜しまない人が増えているのだろう。
チカチカを気にしなければ、室内は相変わらずのハイセンスなしつらえだ。夜になれば妖しく光る電飾で大人ムードが横溢(おういつ)するが、日中に見ればスポーティーさと洗練が際立つ。CVTのFFモデルと違って7段Sトロニックを採用したトランスミッションは、新東名を流す限りでは実力を示す機会はあまり訪れない。
快い空間に包まれて快適な乗り心地に身を任せていると、目をつり上げて飛ばそうという気もうせていく。以前はアウディ、特にクワトロモデルに乗ると、安定感にかまけて雑で乱暴な運転をしてしまいそうな気分になることもあったが、もうそんな子どもじみた振る舞いは卒業だ。それでいて、遅いクルマに引っかかった時の追い越しなどでは、存分に力を見せつけてくれる。
休憩をとるために駿河湾沼津サービスエリアに入ると、これがまたピカピカの新品だ。外に出ても、醤油の焦げる匂いが漂ってきたりはしない。イカ焼きやお好み焼きの屋台は、新東名には似つかわしくないということなのだろう。
駐車場に置いたA4はここでも存在感を示していたが、ほんの少しだけ引っ掛かりを感じた。より立体的な表情になったフロントマスクとサイドのラインのつながり具合に、心なしかしっくりしない様子が見えたのだ。これはマイナーチェンジにはつきものの現象ではあるのだが。
帰りに旧東名の海老名サービスエリアに寄ってみると、こちらにもすでに屋台の姿はなく、黒を基調としたおしゃれ空間に生まれ変わっていた。ところどころに以前の面影が見え隠れするのはご愛嬌(あいきょう)というものだ。古いものも、少しずつリニューアルされていく。四角四面のワゴンが似合う場所は、だんだん消えていくのかもしれない。
(文=鈴木真人/写真=峰昌宏)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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