フォルクスワーゲン・パサートW8(5AT)【試乗記】
軽やかに速い 2001.12.07 試乗記 フォルクスワーゲン・パサートW8(5AT) 上級セグメントへの進出をはかるフォルクスワーゲンの大きな足がかり、4リッターW型エンジン搭載のフラッグシップ「パサートW8」。自動車ジャーナリスト金子浩之がスイスで試乗した。 |
上級車戦略の露払い役
フォルクスワーゲンが上級車マーケットへ進出しようとしている。
その第一弾が、パサートに4リッターW型8気筒エンジンを搭載した「パサートW8」だ。
「W」というのは、文字通りV型をふたつ並べて組み合わせたエンジン形式で、現行車ではもちろんのこと、過去にもほとんど例がない。パサートに搭載されるW8は、フォルクスワーゲンに既存のV6を横に2基並べ、クランクシャフトを共用化し、手前から4気筒を切り取ったものとイメージして欲しい。W型のメリットは、同じ排気量のV型よりも軽量かつコンパクトに設計でき、車体の理想的な位置にレイアウトできること、とフォルクスワーゲンは主張する。
パサート用のW8気筒は、単体重量が190kg、寸法が全長420mm、全幅710mm、全高683mmと、他の4リッター級V8エンジンより軽く小さい。VWは、このW型エンジンを上級車マーケットへの挑戦のための有力な武器にするつもりだ。
グループ内の「アウディA8L」にはすでに6リッターW12気筒(420ps、56.1kgm)が搭載され、ヨーロッパで発売されている。また、開発中の「ブガッティ・ヴェイロン」には8リッター(!)W16気筒(!!)が積まれる予定だ。
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VW「D1」の露払い
W型エンジン戦略はヴェイロンとA8Lだけで展開されるわけではない。アウディとブガッティは同じグループではあるが、あくまで別ブランドだ。そして両者は、W型エンジンを積まなくても上級車であることには変わりはない(ブカッティは発売前だが)。
フォルクスワ−ゲンは、メルセデスベンツSクラスに匹敵する「D1」という高級大型セダンを発売することを、数年前から公式にアナウンスしている。D1のエンジンラインナップはW8とW12が予定される。パサートW8は、D1とその後にも続くフォルクスワーゲンの上級車戦略の露払い役として投入されたわけである。
呆気なく高回転
パサートW8にはスイスで試乗した。ジュネーブからグシュタートまでの、高速道路と一般道と山岳路の組合せからなる200kmあまりを往復した。
注目のW8は、4リッターもの排気量を感じさせないほどシュルシュルと回る。V8で感じられるビートの高まりや、トルクの盛り上がりのようなものはない。呆気なく高回転まで達し、均等に4輪に伝えられるトルクによって、パサートはスピードに乗る。重厚という感じは受けないが、よくダンピングの効いた乗り心地は心地よい。高速道路での直進性の高さも好印象だった。
試乗したジャーナリストのなかからは、「ブランドイメージにそぐわない」とか、「4リッターの存在感が薄い」というネガティブな意見も発せられたが、筆者はそれらの点が、逆にパサートW8の魅力になっていると感じた。フォルクスワーゲンという“国民車”メーカーが奮起して上級車にチャレンジする。その第1弾が、新奇なW8型エンジンを搭載して、軽やかに速い。だから面白いと思う。パサートW8は、2002年初頭に導入されるはずだ。
(文=金子浩之/写真=フォルクスワーゲンジャパン/2001年12月)

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