フォルクスワーゲンパサートセダン W8 4MOTION(5AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲンパサートセダン W8 4MOTION(5AT) 2002.07.16 試乗記 ……529.0万円 総合評価……★★★
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難解なクルマ
フォルクスワーゲン(VW)グループの元ボス、ドクター・フェルディナント・ピエヒは、VWのトップを引退するに当たっての置きみやげをいくつか残した。最大のものはプレスティッジカーに挑戦した「フェートン」だが、「パサート」をより上方に引き上げたのも、彼の最後の仕事の一つである。パサートといえば、まあ実直で真面目なミドルクラスのサルーンで、「ゴルフ」の兄貴分というに相応しく、実質第一のクルマである。でも一応は、それまでのVW帝国の旗艦でもあったから、上級版はそれなりに高い品質感を出そうと懸命に作られている。
そのパサートにピエヒは、彼お得意の鬼面人を驚かす新テクノロジーを突っ込んだ。W8エンジンがそれだ。4リッターで275psという強力なエンジンを、4WDシステムたる4モーションと組み合わせて頂点に置いたのだ。つまりは、パサートとフェートンとの間にある、大きな隙間を少しでも詰めようというのが狙いだろう。しかし、529.0万円というこのクルマ、「高い」のか「安い」のか、「高級」なのか「スポーティ」なのか、一体どのように捉えたらいいのか、何だかちょっとわからなかった。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
実はVWの中でもFWD(前輪駆動)に関してはパサートが一番歴史が長い。1973年、ゴルフよりほんのわずかに早くアウディ「80」のVW版として登場。以来ずっと地味で実用第一のゴルフの兄貴分として、中型車市場で地道に売れていた。それが何となく色気づいてきたのは、1996年にフルチェンジし、さらには2000年にマイナーチェンジをして以来のことだ。スポーティで推すアウディとは別の路線をとるために、流行のプレミアムC/Dセグメントのイメージを追い始めた。それは内外装の品質向上だけでなく、エンジンの多気筒化、排気量アップも狙いだった。かくして4気筒だけでなく2.3リッターのV5、従来からの2.8リッターV6とどんどん強化され、ついには4リッターのW8までが載ることになったのだ。ボディは昔のごつさが消えて、かなりエレガンスを意識した4ドアセダンとワゴン。特にワゴンは昔からヨーロッパで実質的な貨客兼用車として地位を得ている。またモデルによっては「4モーション」と呼ばれるトルセンデフを用いた4WDシステムが用意される。
(グレード概要)
2002年5月1日に最上級モデルとして追加されたのがW8。4ドアセダンとワゴンがあるが、ともに4モーションと組み合わされる。
W8エンジンは、形式的には同社の他の狭角V型エンジンと同じレイアウトをとる。つまりメーカーの表現を借りれば、15度という狭角のV4をふたつ組み合わせたから“W”8だということだが、見方によれば気筒おきに15度だけズレた変形直列4気筒を、72度のバンク角で構成したV8の変種ともいえる。カムシャフトは4本、バルブは32バルブである。最大のメリットはエンジン長が短く軽量なこと。実際にボンネットを開けても、短いエンジンのため、その前にすごく長いクラッシャブルゾーンができている。
パワーとトルクは275ps/6000rpm、37.7kgm/2750pm。これが5段ティップ付きATおよび4モーションシステムと組み合わされる。
「ハボナウッド」と称される高級なウッドパネルや、手縫いのナパレザーなど、同じ革内装ながら一段と仕上げに凝った室内、専用のデザインのアルミホイールに225/45の17インチタイヤ(試乗車はミシュラン・プライマシー)を履く。左右両ハンドルが、ありセダンが529.0万円、ワゴンが541.0万円だ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
基本的なレイアウトは他のパサートと同じでも、フェートンに次ぐ高級車だから、すごくユーザーをくすぐろうとしている。もともとパサートのインストウルメンツや室内仕上げは上質なことに定評があったから、これをさらに豪華にした感じ。前述のようにウッドや革内装も独自の高級なものという。ただしそれまで“バウハウス流”の禁欲的なモダニズムを追求してきたその思想からすると、何となく自己矛盾もある。
(前席)……★★★★★
最近のVWのシートはとてもいい。ゴルフやボーラでも上質だからパサート、しかも最上級であるW8のそれは本当にいい。単に革がソフトで感触がいいというだけでなく、ちょっと小さめのつくりが、意外とどんな体型でもフィットする。またそこから見る前方の視界は、特にパセンジャー側スカットルが低く、とても気持ちがいい。加えて前後ともドアは90度近く開き、出入りは非常に楽だ。ただしセンターコンソールに抉られただけのカップホルダーは、何となく無粋。
(後席)……★★★
あくまでも後ろは2人用、と割り切るならとてもいい。ただし3人だと、真ん中の人はツラい。スペース的には充分でもシートのつくりが2人用だからだ。リアのシートクッション高が充分あって、前方が見やすいのもいい。
(荷室)……★★★
セダンでも通常の使用には充分の広さ。特に奥行きが深いのがいい。ただ奥に行くに従って狭まっていくのは空力ボディのためだろう。
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【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
すばらしいトルクに溢れたW8は、もっと大きな排気量ユニットのように、あるいはできのいいスーパーチャージャー付きのように、ごく低速から分厚いトルクをフィードする。これだけトルクがあるのだから、別にティップなんか使わなくても、Dレンジと4のモードを切り替えるぐらいで、どんな道でも他車を軽々とリードできる。見ると本当にこぶりなエンジンだが、中身は相当に強力だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
テスト車の前タイアはブランド名がかすれるほどショルダーが削られていたためもあるだろうが、乗り心地は期待ほどではない。特に妙に腰から上がソフトで、高速道路でバウンシングを繰り返すことがある。でもタイヤが減っている割には、ハンドリング自体はとても前後バランスがとれていた。ブレーキの利きは、やや唐突である。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:webCG大川悠
テスト日:2002年6月21日から25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:8143km
タイヤ:(前)225/45R17 91Y/(後)同じ(いずれもミシュラン プライマシー)
オプション装備:チルト機構付電動ガラス スライディングルーフ(ソーラータイプ)「UVカット機能付」(12.5万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(2):山岳路(2)
テスト距離:399.4km
使用燃料:78.2リッター
参考燃費:5.1km/リッター

大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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