MINIクーパーS ロードスター(FF/6AT)【試乗記】
街で乗れるゴーカート 2012.06.06 試乗記 MINIクーパーS ロードスター(FF/6AT)……432万2270円
MINIブランド6番目のボディーバリエーションとして、2012年春に納車が開始された「MINIロードスター」。シリーズ初となる2シーターオープンの乗り味を、184psを発生する「クーパーS」で試した。
お二人様限定
主婦の友社が女性に行った「男性に乗ってほしいクルマ」の調査によると、オープンカーは、軽自動車やコンパクトカーより人気がないそうだ。人気は、エコカー、ステーションワゴン、セダンだそう。いかにも大ざっぱな分類で「どこまで信用していいのか?」と思わないでもないが、クルマ好きならぬ世間一般の「オープンカー」に対する評価は、なかなか厳しいものがある。
オープンカー乗りがエコカーやステーションワゴンに買い換えたら、たちまちモテモテ!……ならば、すぐにでも乗り換えを勧めたいところだが、どうもそういうわけでもないようなので、オープン好きは、そのままほろ型のクルマに乗り続けたほうがいいだろう。「ん? オープンカーに乗ってるけど、モテてるよ!」という人こそ、次の愛車として「MINIロードスター」を検討してただきたい。
MINIロードスターは、「MINIクーペ」の屋根開きタイプである。MINIのオープンモデルには、3ドアハッチをベースにした「MINIコンバーチブル」があるが、4人乗りのコンバーチブルに対し、ロードスターは2人乗り。小粋なイタリア車なら、ホイールベースを短縮してボディーを詰めて、見た目もドライブフィールも軽快感を演出するところだが、こちらはけちな……、失礼! 堅実なアングロ-ゲルマン連合のブランドゆえ、ホイールベースは3ドアハッチやコンバーチブルと変わらない2465mm。全長も、小指の先と違わない3740mmだ。
キャビンは完全オリジナル
MINIロードスターは、ではコンバーチブルの後席をツブしただけの存在かというと、もちろんそんなことはない。クーペに倣ってフロントスクリーンはグッと倒され、手動式のソフトトップを閉めると、ボディー全体は、やはりクーペ同様、いかにもキャビンが小さいスポーティーなシルエットを取る。ほろの収納部分、Cピラーの根元に当たる部分が前進したため、ボディー後部は、視覚的にも実際にも荷室が独立したノッチバックタイプとなった。リアシートがなくなったぶん、お二人様の小旅行のための、ラゲッジスペースが増えました、ということだ。
ソフトトップクローズド時の閉塞感は強い。ロードスターを名乗りながらやたらと窓の下端、ショルダーラインが高いのはいかがなものか、と難癖を付けるうるさ方もいらっしゃいましょうが、「手を伸ばせば地面でタバコが消せる」というフレーズは、最近の嫌煙活動の影響ですっかり影が薄くなりました。
MINIロードスターのグレードは、大きく分けて3種類。最高出力122ps、最大トルク16.3kgmを発生する1.6リッターNAを積んだベーシックな「クーパー ロードスター」(6MT、334万円/6AT、347万円)。1.6リッターターボ搭載、最高出力184psとブースト時の最大トルクが26.5kgmの「クーパーS ロードスター」(6MT、364万円/6AT、377万円)。そして、211psと28.6kgmを搾り出すハイスペックバージョン「ジョンクーパーワークス」(6MTのみ、451万円)が用意される。
カスタマイズ自在
この日の試乗車は、中堅グレードの「MINIクーパーS ロードスター」。ホワイトシルバーのボディーカラー(+5万5000円)に、シルバーのストライプ(+2万5000円)が貼られたレーシーなエクステリア。足元は、ブラックスターブレッドスポークと名付けられたアロイホイールでキメる(+3万円)。ランフラットタイヤ(+1万8000円)のサイズは、カタログ通りの205/45R17だ。
ドアを開けると、パンチングされたバケット調のスポーツシートが待っている。シートやカーボンブラックの内装色、メーター類、エアコン吹き出し口などをクロームで縁取ったクロームラインインテリアは標準仕様だが、ダッシュボードにストライプドアロイをおごると、+2万8000円がかかる。センターの大きなメーターに、車両情報、オーディオ、電話関係などのインフォメーションを呼び出す「MINIビジュアルブースト」を装備すると、+12万円。
試乗車は、あれやこれやで55万2270円ぶんのオプション装備が付き、車両価格は377万円から432万2270円になっていた。粋好みのクルマを購入するのに、自分色に染めるオプションを我慢するのは野暮なもの。力はなくてもいいが、金がない色男では乗れないMINIロードスターである。
 もてない(?)クルマ
ギアを「D」に入れて走り始めれば、わずか1600rpmから最大トルク24.5kgmを発生する過給器付きエンジンゆえ、いきなり速い。アクセルの踏み始めからぶっといトルクが供給されて、車体をグイグイ引っ張る。ちなみに、クーパーS ロードスターの1270kgの車重(AT車/カタログ値)は、ハッチバックのクーパーSと変わらない。
それでいて、キャビンと荷室の間にバルクヘッドが増設された恩恵もあってか、ボディーはしっかりしていて、「オープンボディーのヤワさ」は感じられない。ただしこのクルマ、「Chiliパッケージ」(+5万2000円)と称するオプションのスポーツサスペンションを装着しているので、乗り心地は相応に硬い。そのうえ舗装が荒れていたりすると、17インチのタイヤを持てあまし気味。バネ下がバタつく。運転者はともかく、女性陣のオープンカー嫌いには拍車をかけそうである。
一方、高速道路に入れば、スタビリティーが高く、頼りがいのある足まわりと評価は変わる。100km/h巡航でエンジン回転数は2000rpmプラスといったところ。カタログ燃費は、15.4km/リッター(JC08モード)と記載される。
さて、クーパーS ロードスターもMINIの一族だけあって、カーブであまりロールせず、ドライバーを中心にクルクルと向きを変える独特の運転感覚を持っている。いわゆるゴーカートフィーリングを堪能しようと峠道に行ってみると、うーん、少々、乱暴。特に登り坂だと、せっかくの大トルクなのにフロントのトラクションが抜けがち。ときに前輪が暴れて、それはそれで「ヤッてる」気になって楽しいのだが、このクルマのゴーカートフィーリングを生かすには、路面が平滑なサーキットに持ち込んだ方が楽しそう……というより、辛気くさく“曲がり”で眉間にしわを寄せるより、街の信号グランプリで溜飲(りゅういん)を下げるほうが“らしい”乗り方だろう。
MINIロードスターに似合うのは、モテ度がクルマに依存しない、または依存しないと思っている殿方、あるいはそもそも「モテ」を諦めている人、か。懐に余裕がありつつ腰に不安を抱えている年配の方には、Chiliパッケージを選択肢から外すことをオススメします。
(文=青木禎之/写真=荒川正幸)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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