トヨタ・カローラ アクシオ1.3X(FF/CVT)/カローラ フィールダー1.8S(FF/CVT)【試乗記】
ニッポンの事情 2012.05.31 試乗記 トヨタ・カローラ アクシオ1.3X(FF/CVT)/カローラ フィールダー1.8S(FF/CVT)……140万5500円/212万550円
「トヨタ・カローラ」がフルモデルチェンジした。ニッポンの伝統的コンパクトセダン/ワゴンはどう進化したのか? 2世代ぶりに復活した1.3リッターの「アクシオ」と、1.8リッターの上級版「フィールダー」を試した。
ハイブリッドは見送りに
コンパクトハッチやミニバンや軽自動車が繁栄するなか、減ってはいるが、それでも「カローラのお客さん」は確実にいる。むしろ浮動層が減ることで、「カローラでなきゃ」というユーザーの割合は増えている。そんな人たちのために「ニッポンのカローラ」をもう一度見つめ直しました、というのがこの11代目である。「グローバルに考えていると、どうしても最大公約数的なクルマになってしまうので……」とは、藤田博也チーフエンジニアの言葉だ。
アメリカで売っている「カローラ」は、太りに太って今や全長4555mm、全幅1760mmだが、今度の新型は5ナンバー幅に収めたのはもちろんのこと、フロントのオーバーハングを詰めて、全長を旧型より5cmカットの4360mm(アクシオ)とした。カローラのお客さんでボディーの大型化を望んでいる人は少ない、という現実を反映した結果だ。
ボディーバリエーションはこれまでどおりセダン(アクシオ)とワゴン(フィールダー)のふたつ。セダンは1.8リッターが落とされたかわり、1.5リッターの下に1.3リッターが加わった。しかし、この時代にハイブリッドの品ぞろえは考えなかったのかと聞くと、もちろん検討はしたそうだ。だが、中心価格帯が150万円台という、これまでの販売状況から考えて、採用は見送ったという。
新型カローラの目玉はエンジンもCVTも大きく変わった1.5リッターモデルだが、今回は発売前とあっておあずけ。チョイ乗りできたのは1.3リッターの「アクシオ1.3X」と「フィールダー」の「1.8S」である。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
ミニマムなフォーマルカー
カローラのセダン、アクシオは実に4割が法人ユーザーだという。なかでもベーシックグレードの「X」はまさに「会社のカローラ」である。小さくても、トランクの付いたセダン。お客さんに見せても乗せても、ミニマムなフォーマルカーとして通用する。実際、町なかで路上観察していると、トランクに「X」のバッジをつけた白や銀の旧型カローラセダンの多いこと多いこと。「プリウス」ばかりがトヨタじゃないことを実感する。
新たに1.3リッターエンジンを得た新型アクシオXは、ひとことで言えば、プレーンなスモールサルーンである。CVTと組み合わされるエンジンは「ヴィッツ」と同じ95psの4気筒。なぜかヴィッツほどの滑らかさや静粛性は感じられず、その点では「レンタカーのカローラ」っぽくもあったが、もちろんそうしたフリートユースもアクシオXの大きなターゲットである。
試乗車はいかにも営業車的なグレーの内装だったが、アイボリーのシートに、ブラウンのファブリックでくるんだ内装パネル、なんていう組み合わせも選べる。安いクルマにそういうのって……、と思っている人がいたら、一度だまされたと思ってディーラーに見に行ってもらいたい、というくらい“なりおおせた”インテリアである。上級グレードのみかと思ったら、1.3Xにも「Gエディション」として用意されていた。そこまで奮発すると、「今日の不動産屋さんはクラウンで案内してくれた」と喜ばれるのかもしれない。
カローラ流の心遣いがそこかしこ
アクシオ1.3Xから乗り換えると、フィールダー1.8Sは別物のカローラである。エンジンはシリーズ別格の140ps。パワフルというか、もはや“速いクルマ”だ。足まわりも歴然とスポーティーである。
旧型でいうと、アクシオとフィールダーの販売比率は半々だという。アクシオの個人ユーザー平均年齢は60歳をゆうに超えるが、キムタクの活躍もあって、フィールダーは20代からも支持されている。しかし意外なことに、こちらも法人需要が3割を占めるという。つまりこのクルマも営業車としてだれが乗るかわからない。
そうした“カローラの事情”がもたらした新しい改良点は、視界の改善だ。フィールダーもアクシオもボディーの直近がよく見えて、狭いところでも取り回しに苦労しない。フロントピラーを後退させたり、ウエストラインを下げたり、ドアミラーをドアに付けるなどして、前方や斜め前方の死角を減らした成果である。
細かいところでは、4枚のドア内側にある取っ手部分が長くなった。そこを握って開閉するとき、ヒンジから遠ければ遠いほど軽い力でできる。わざわざ“ロングプルドアハンドル”という名前を付けている。でも、これがそんなに大層なことなのか!? と思ったかたは、ニッポンのカローラをご存じでない人である。
表立ってPRこそしていないが、開発中は、高齢者の動きが疑似体験できる高負荷スーツを着て使い勝手を評価したという。ダウンサイジングも、視界の改善も、ロングプルドアハンドルの採用も、ひとつにはユーザーのエイジングの問題と向き合った結果である。カローラの事情は、ニッポンの事情なのだった。
(文=下野康史/写真=郡大二郎)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
日産フェアレディZ NISMO(FR/9AT)【試乗記】 2026.10.28 「日産フェアレディZ」のマイナーチェンジモデルが登場。改良の主眼はZが受け継いできたヘリテージのさらなる深化と性能の強化だという。もはやお値段1000万円(!)に迫らんとする「NISMO」の9段ATモデルを試す。
-
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】 2026.10.27 ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。
-
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.26 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
マツダCX-30 25エアエディション(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.23 マツダのコンパクトクロスオーバー「CX-30」に、一部改良で2.5リッターガソリンモデルが登場。新たなパワートレインを得た最新型は、過去のモデルからどのような進化を遂げているのか? 装備全部盛りの最上級グレードで確かめた。
-
NEW
ホンダ・スーパーONE(前編)
2026.11.1ミスター・スバル 辰己英治の目利き辰己英治さんが今回試すのは、ヤンチャないでたちの「ホンダ・スーパーONE」。軽規格の電気自動車(EV)「N-ONE e:」をベースに走りを鍛えた、電気で走るスポーツコンパクトだ。見た目にも楽しさがあふれる一台の魅力に、“ミスター・スバル”が迫る。 -
NEW
思わずなでたくなってくる 丸いデザインのクルマ特集
2026.11.1日刊!名車列伝最近のクルマのデザインは、シャープなラインが特徴だったり、造形そのものが複雑だったり……。今月は、つるりと丸い、シンプルなエクステリアが印象的な世界の名車を日替わりで紹介します。 -
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】
2026.10.31試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。 -
「BYDラッコ」がアジアにはばたく!? ニッポンの軽自動車規格が海外勢に奪われる日
2026.10.30デイリーコラム中国のBYDが、軽BEVの「ラッコ」を日本以外でも販売すると発表! 日本独自のスモールカー規格は、はたして海外でも受け入れられるのか? 本家・日本のメーカーが、海外展開に及び腰だった理由とは? BYDが食指を動かす、軽自動車の秘めた可能性を探る。 -
メルセデスのトップからのまさかの転身 BMW日本法人の上野金太郎社長にインタビュー
2026.10.29デイリーコラムメルセデス・ベンツ日本からビー・エム・ダブリューのトップへ。いわば巨人の四番から阪神の四番のような異例の転身を遂げた上野金太郎社長。両ブランドの文化や製品の違い、今後の販売戦略などについて話を聞いた。 -
ボルボEX90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(後編)
2026.10.29あの多田哲哉の自動車放談ボルボの新世代EV「EX90」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが試乗。ちょっと気になったところと、クルマとしての魅力を感じたポイントについて熱く語る。






































