スバルXVハイブリッド 2.0i-L EyeSight(4WD/CVT)
スバルファンもこれなら納得 2013.08.29 試乗記 スバル独自のハイブリッドシステムを搭載した「XVハイブリッド」。「燃費がイイ」だけでは決して満足しないファンの期待に、スバル初のHVはどう応えたのか?薄味でも効果はてきめん
2013年6月末の発売から2週間で販売5000台を突破するほど注目を集めた「スバルXVハイブリッド」。慣れ親しんだスバルらしさとエコカーの要素を巧みに融合させたのが成功のポイントらしい。購入者の比率は40歳台、50歳台、60歳以上がそれぞれ23~29%、全体の90%以上が衝突防止/被害軽減機構「EyeSight」を装着。落ち着いた良心的なユーザー像が見える。
乗った印象を簡単に言えば、あまりHVらしさは感じられない。すでに広く報道されているから詳細なメカニズム解説は省略するが、ガソリン仕様の「XV」と基本的に同じ水平対向4気筒2リッターエンジン(最高出力150ps/6000rpm、最大トルク20.0kgm/4200rpm)とコンビを組むCVT(リニアトロニック)のプライマリープーリーに、小出力のモーター(13.6psと6.6kgm)を取り付けた“だけ”。意地悪く言えば「電動アシスト付きガソリン車」。EV走行が可能とはいえ、それを積極的に選ぶスイッチはなく、ニッケル水素バッテリーの電力量も5.5kWhにすぎないから、ごく限られた条件下で短時間、短距離(最高40km/hで1.6kmまで)しか使えない。だから普通に運転する範囲では、ほかのHVで感じるような“電力感”というか、モーターの存在を強く伝える要素は薄い。それでもスッと加速する時、ガソリンXVよりアクセルの踏み込み量が少なくてすむことから、「なんとなくトルクあるな」と思わせることはある。
注目の燃費は、カタログ(JC08モード、レギュラーガソリン)では20.0km/リッターで、ガソリン仕様より30%ほど延びている。路上の実用燃費を見ると、そこそこ混んだ首都高速で12~13km/リッター、すいていれば15km/リッター、郊外の一般道が流れていれば12km/リッター、渋滞を避けて裏道をたどると10km/リッター以下、高速道路の追い越し車線ペースで15~18km/リッター、近県の観光地のブラブラ見物で8~10km/リッターというところだった。ガソリンXVによる同様の走行パターンより、平均して35~40%は良い。ドライバーの心がけだけでこんな改善は無理だから、たしかにHV化の効果は大きい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
燃費だけでなく走りも改善
もう一つ、場面によっては「ECOクルーズコントロール」も燃費低減に大きく貢献する。スバル自慢のSIドライブを基本のIモードに入れ、全車速追従機能付きクルーズコントロール(いわゆるアダプティブ・クルーズコントロール)をセットし(114km/hまで可能)、ECOクルーズコントロールのボタンを押すのがその手順。前述の通りEV走行モードには40km/h以下でないと入らないが、この場合には、それまで惰力などを巧みに多用してバッテリー残量がたっぷりあれば、80km/h以下でアクセルを放した時、自動的にエンジンが止まって電力だけによる走行状態になる。その区間はガソリン消費ゼロなので、うまく利用すると平均20km/リッター近くで巡航できる。これらの操作は、すべてステアリングスポーク上のボタンで完了する。
一方、ことさら燃費の改善だけを追わなかった開発陣の意図は、走れば走るほど身にしみる。スラッと明快な吹け上がり、前:後=50:50を基本に25:75~75:25まで変幻自在にトルク配分を調整するAWD(4WD)機構がもたらす万全のトラクション性能など、どこからどこまでスバルそのものなのだ。やや硬めのサスペンションは、粗さよりたくましさが前面に出て、どこでも自信たっぷりに突破できる。荒れた舗装面でのコーナリングでは少しリアが跳ね気味になるが、姿勢が乱れることはない。ステアリング・ギア比をガソリンXVの16:1から「WRX STI」並みの14:1(専用部品)に高めたのも正解。1550mmの全高と200mmの最低地上高(かなりの悪路も平気)にもかかわらず、スポーツセダン顔負けのペースをたもてる。
こだわり派にもオススメ
実はそこに、HVであることが効いてもいる。天井裏をはじめ各部に厳重な遮音処置(非常に有効)を施したのを含め、重量1500~1510kgとガソリンXVより130kgほど重くなったものの、バッテリーや周辺機器を荷室の床下という低い位置に要領よく押し込んだため、重心が少しも高くなっていない。それどころか、前後の重量配分が前59.7:後40.3と、ガソリンXV(前62:後38)より好バランス化された。しかもリアの重量増に応じてボディーもサスペンションも補強されたため、一気に応力がかかった時の踏ん張りが向上している。こんな結果が出るのなら、ガソリンXVにも施してほしい手術だ。
ちなみに、このバッテリーなどの搭載によって荷室の床は3cmほど高くなったが、それでも北米向けテンパータイヤ装備仕様と同じだから、積載能力は実質的に犠牲になっていない。つまり、たくましいクロスオーバー車としてのXVの良さは、完璧に守られている。
一口にHVと言っても、実質的にレンジエクステンダーEVと呼べるほどのタイプもあれば、このXVのように、懐疑派にも違和感を抱かせないものまで自在に作れるのが今。特に熱心なスバルファン(スバリスト)は、これまで築いてきた独特のイメージにこだわりたいはずだから、新時代へ踏み出すにあたり、ぎりぎりの境界線を求めて、開発陣も苦心したに違いない。そして、この経験あらばこそ、いつの日にか先進技術の旗を高く掲げた、新時代の先陣を疾走するスバル・スーパーHVが登場するはずだ。
(文=熊倉重春/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
スバルXVハイブリッド 2.0i-L EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4450×1780×1550mm
ホイールベース:2640mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:150ps(110kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:20.0kgm(196Nm)/4200rpm
モーター最高出力:13.6ps(10kW)
モーター最大トルク:6.6kgm(65Nm)
タイヤ:(前)225/55R17 97V/(後)225/55R17 97V(ヨコハマ・ブルーアースE70)
燃費:20.0km/リッター(JC08モード)
価格:278万2500円/テスト車=305万5500円
オプション装備:SRSサイドエアバッグ+SRSカーテンエアバッグ(6万3000円)/リアビューカメラ付きSDナビゲーションシステム(21万円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1417km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:463.5km
使用燃料:39.3リッター
参考燃費:11.8km/リッター(満タン法)/12.0km/リッター(車載燃費計計測値)

熊倉 重春
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。































