ポルシェ911カレラGTS(RR/7AT)/911カレラGTSカブリオレ(RR/7AT)/911カレラ4 GTS(4WD/7AT)/911カレラ4 GTSカブリオレ(4WD/7AT)
911のベストバイ 2014.12.18 試乗記 さらなるスポーツ性と装備の充実を意味する「GTS」グレードが、いよいよポルシェの本丸「911カレラ」にも設定された。430psに達した3.8リッターフラット6を搭載する新型「911カレラGTS」シリーズの走りを、アメリカ西海岸で試した。「カレラS」と「GT3」の間に位置
先代タイプ997の後期型で初めて登場した「911カレラGTS」が、タイプ991と呼ばれる現行911にも、いよいよ設定された。遠くはるか「904GTS」で最初に使われ、その後は「924」に「928」、そして「カイエン」「パナメーラ」に付けられてきたその名は、今年になって「ケイマン」「ボクスター」にも採用が拡大されている。特に911で言えば、今の「GT3」ではハードに過ぎるけれど、研ぎ澄まされたスポーツ性が、やっぱり欲しいという人が、そのターゲットとなるだろうか。
もっとも、すでに911のラインナップには「カレラ」、そして「カレラS」があるわけだから、これらはそれぞれ誰向けなのかあらためて考えさせられてしまうのも事実ではある。さすがに最近のポルシェ、ラインナップを広げ過ぎている感、なきにしもあらずだ。
ちなみに2010年にデビューした先代について、プレスリリースでは「911カレラ カブリオレ購入者の4人に1人がGTSを選択しており、カレラ クーペ全車の約23%のリアにはGTSの文字が付けられています」とつづられている。回りくどいが、要するにカレラGTSデビュー後は「ターボ」やGT3以外の911のうち4分の1を、このカレラGTSが占めたということになる。となれば、やはり導入は成功だったと見るべきだろう。
ともあれ、この911カレラGTSの一番のアピールポイントはエンジンである。最高出力は430ps。カレラSの400psに対してGT3が475psと大きく開いたギャップの、ほぼ中間に位置する数値である。
プラス100rpmで30psの強化
水平対向6気筒3.8リッターエンジンからさらに30psを引き出すのは、自然吸気だけにECUにちょっと手を加えるだけで……というわけにはいかない。変更されたのは主に吸気系。従来の1つのインテークマニホールドフラップに加えて、各シリンダーのインテークパイプごとに1つ、つまり計6つのレゾナンスフラップを追加したバリアブルレゾナンスインテークシステムは、エンジン回転数とスロットル開度に応じて開閉して、吸入経路をその時々で最適な長さに調整する。
それに合わせて吸気側のカムリフトは0.7mmプラスの11.7mmに増大しており、バルブスプリングも強化型へ。さらに、吸気ポート内壁にはポリッシュ加工が施されて、吸気の流れをスムーズにしている。
こうしたいわゆるメカチューニングによって最高出力の発生回転数は7500prmと、カレラSよりも100rpm上に移行している。わずか100rpmと言うなかれ。その結果として、プラス30psを得ることができたのだ。
増大したパワーに合わせてシャシーも強化されている。何より大きいのは、後輪駆動も含めた全モデルに、4WDモデルと同様のワイドトレッドが与えられたこと。そのほか、PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメントシステム)が標準装備とされ、足元にはセンターロック式の鍛造アルミニウム製20インチホイールがおごられることとなった。
「GT3」を上回る“日常快感度”
国際試乗会のスタート地点となったホテルのエントランスには、これでもかというほど多くの911カレラGTSが並んでいた。無理もない。何しろ911カレラGTSには7段MTと7段PDKの2種類のギアボックスが用意され、駆動方式は後輪駆動と4WDから選ぶことができ、さらにはクーペだけでなくカブリオレも設定されているのだから。
いずれにも共通して胸躍らせる要素として挙げられるのが、やはりエンジンである。トルクは低回転域から余裕があり、どこから踏んでも力強いキックが得られる。実際にトルクカーブを見ても、2500~6500rpm辺りの広い範囲でカレラSより一枚上手のトルクが生み出されているのだが、それが単に力強いだけでなく自然吸気らしい素直なレスポンスで、艶っぽい息吹とともに生み出されるのが、何よりうれしくさせる。
回すほどにパワーは高まっていき、7000rpmを超える頃には突き抜けるような高音混じりのメカニカルサウンドが響き渡り、一気にトップエンドを迎える。レブリミット9000rpmのGT3には及ばないが、いやいやこちらだって快感度は相当なもの。当然だが、リミットまで引っ張りきる快感は、GTSの方がより味わえる場面が多いはずだ。
一方、シャシーについては後輪駆動に4WD、可変スタビライザーのPDCC付きに足元が軽くなるカーボンブレーキのPCCB付きとさまざまな仕様が混在していたため「カレラGTSとはどうだ」とひとことで断定はしにくいのだが、特に後輪駆動では、ワイドトレッドの安定感が旋回性能に大きく寄与していると感じた。安定性が担保されているからこそシャープさを、より際立たせられるというわけである。
7段MTの導入を望む
端的に言ってしまえば、速いのは、というか御しやすいのは、やはり「カレラ4 GTS」だ。狭いワインディングロードでカレラGTSについていくのは、まさに鼻唄まじりである。そこで攻守を入れ替えてみると、カレラGTSで同じペースを保つには、前輪のグリップを常にしっかり意識している必要があった。カレラ4 GTSでは駆動力で前に引っ張ってくれる分、早めにアクセルを開けていけるけれど、カレラGTSではしっかり向きが変わり前輪のグリップに余裕が生まれるのを、ほんの一瞬待つという感じだろうか。そこを見きわめて慎重に、しかしリアエンジンならではのトラクションを信じて大胆に踏んでいくのがRRドライビングの快感である。
要するに、どちらもその特性を生かして走らせるのは、この上なく楽しかったということになる。好みや走らせるステージに合わせて、いずれかを選べるというのは何ともうれしいところだ。
そう、四輪駆動も、何ならカブリオレも選べるし、大きな羽根がついているわけではないからそこまで目立つわけでもなく、つまり普段遣いに十分対応する。それでいて走りは文句なしに刺激的。ラインナップを増やし過ぎだ……なんて言ってた舌の根も乾かぬところだが、これこそ911のベストバイでは、と言いたくなる。ちなみにいろいろと試して最終的に至った個人的ベストバイは、「カレラGTSカブリオレ」であった。
ただし、日本仕様は何とMTの設定がない。せっかくタッチが改善されて、ご機嫌で操作できるようになったのに、何ともったいない……。GT3がPDKだけとなった今、カレラGTSにはぜひ、MTの追加を検討してほしいと、ポルシェジャパンには切にお願いする限りである。
(文=島下泰久/写真=ポルシェ)
テスト車のデータ
ポルシェ911カレラGTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4509×1852×1295mm
ホイールベース:2450mm
車重:1425kg
駆動方式:RR
エンジン:3.8リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:430ps(316kW)/7500rpm
最大トルク:44.9kgm(440Nm)/5750rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20/(後)305/30ZR20
燃費:8.7リッター/100km(約11.5km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:1702万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
ポルシェ911カレラGTSカブリオレ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4509×1852×1292mm
ホイールベース:2450mm
車重:1495kg
駆動方式:RR
エンジン:3.8リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:430ps(316kW)/7500rpm
最大トルク:44.9kgm(440Nm)/5750rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20/(後)305/30ZR20
燃費:8.9リッター/100km(約11.2km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:1923万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
ポルシェ911カレラ4 GTS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4509×1852×1296mm
ホイールベース:2450mm
車重:1470kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.8リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:430ps(316kW)/7500rpm
最大トルク:44.9kgm(440Nm)/5750rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20/(後)305/30ZR20
燃費:9.1リッター/100km(約11.0km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:1827万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
ポルシェ911カレラ4 GTSカブリオレ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4509×1852×1294mm
ホイールベース:2450mm
車重:1540kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.8リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:430ps(316kW)/7500rpm
最大トルク:44.9kgm(440Nm)/5750rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20/(後)305/30ZR20
燃費:9.2リッター/100km(約10.9km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:2017万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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