スバル・レガシィB4リミテッド(4WD/CVT)
円熟の進化 2015.01.05 試乗記 6代目となり、先代よりさらにひとまわり大きくなった「スバル・レガシィ」。セダンの上級グレード「B4リミテッド」に試乗し、どのような変化を遂げたのか確かめた。セダンとしてのキャラクターを確立
サイズが大きくなり、外観も大きくつり上がったヘッドライトの採用など挑発的になったことで賛否両論を巻き起こした先代「レガシィ」だが、結果を振り返ってみれば、もちろん大ブームとなった初代や2代目ほどではないにしても、十分に成功だったと言っていい。デザインはともかくサイズは、周囲のライバルとの比較では決して大き過ぎるというほどではなく、むしろレガシィをずっと乗り継いでそれなりの年齢に達した人にとっては、その余裕がちょうど良いとすら感じさせたようである。否定的な意見は、日本よりもアメリカを向いてのクルマづくりに対する嫉妬心的な部分もあったんじゃないか、とは今になって思うことである。
そのアメリカでは先代レガシィ、まさに空前の大ヒットとなったものだから、新型がその路線を踏襲し、また進化させてきたのも当然といえる。ボディーは更なるサイズアップが図られ、日本では主力だった「ツーリングワゴン」は廃止されて、ラインナップはセダンの「B4」と「アウトバック」だけになってしまった。日本ではアウトバック、従来はせいぜい1割を占めるだけだったにもかかわらずだ。個人的には、不満な人は「レヴォーグ」をどうぞという売り方はずいぶん不遜なものだなと思うけれども……。
ではB4はどう進化したのか。そもそも日本での販売はそれほどの台数ではなかっただけに、念頭にあったのは、やはりこちらも北米市場のはずである。具体的に狙いとして定められたのは、「トヨタ・カムリ」や「ホンダ・アコード」といったベストセラーと同じ土俵で戦うこと。そのためにもツーリングワゴンからの派生ではなく、セダンとして確固としたキャラクターを立たせることが、これまで以上に意識されたのは間違いない。
心地良い一体感
その見た目は、これが結構悪くない。大味ではあるし、水平対向エンジンは何のため? と思ってしまうぐらいフードが分厚かったりはするけれど、セダンとしてちゃんとまとまりよく、個性を感じさせるものになっている。少なくともワゴンのおまけという感じは、もはやないと言っていい。
インテリアも同様で、コクピット感覚とは真逆の助手席側までフラットなデザインはそれほど凝ったものとは見えないが、実際に横方向の余裕が増しているのも相まって開放感は非常に高い。煩雑ではない分、基本的な使い勝手は悪くなさそうだし、ダッシュボードが全面ソフトパッドで覆われ、ナビゲーションシステムが大型タッチパネルに組み込まれるなど、ようやくクオリティーも満足いくものになってきた。
従来のスポーティーな走りを予感させる筋肉質なセダンといった立ち位置からは、どんどん離れてきている。それも当然で、カムリやアコード、あるいは「フォード・トーラス」などを相手にするなら、北米のクルマにまったく興味のない人にも響かなければいけないのだ。マニアックな匂いは、どんどん消されていく。
メカニズムを見ても、そうした方向性は明らか。特にそのパワートレインは、内部パーツの8割が新設計とうたうとはいえ、ターボでも直噴でもない単なる水平対向2.5リッターエンジンにCVTの組み合わせとなる。正直、それほど期待が高まるものではない。
ところが走りだしたら、ことのほか気に入ってしまったのだった。レヴォーグや「WRX S4」のターボエンジンと比べて踏み込んだ瞬間のレスポンスに優れる自然吸気エンジンは出足がスムーズで、その後の加速も特筆するほど力強いわけではないが、少なくとも中ぐらいまでのアクセル開度では、とてもリニアリティーに富む。
アナログ的ではあるが、心地良い一体感。速からず遅からずの動力性能。「ああ、これぐらいでいいよね」と思っている自分に気付く。
やればできる?
シャシーの仕上がりも、そんなパワートレインによくマッチしている。フルタイム4WDとハードにしつけられたサスペンションによってタイヤをムリヤリにでも路面に押し付けていたようなかつてのフィーリングは今やなく、乗り心地は穏やかなもの。とはいっても単にソフトだという意味ではなく、先代よりもねじり剛性を48%も向上させたという高剛性ボディーに、形式こそレヴォーグやWRXと同様ながら、フリクションの低減に力を注いだサスペンションが、確かな操縦安定性を確保しながら、滑らかで上質な乗り味の実現に貢献している。
試乗車のB4リミテッドに備わる、スタビリティー+フレックスの造語で「スタブレックス・ライド」と名付けられたパッシブ式の減衰力切り替え式ダンパーも、上々の効果を発揮しているようだ。普段はしなやかに動きつつも、鋭い入力が加わった時にはグッと減衰力が高まり、腰砕けになるようなことがない。ちなみにコレが備わらないベースのB4の場合、タイヤが18インチから17インチになっても、乗り味はやはりちょっと硬めな印象になる。速度を上げていった時の、意地悪な言い方をすれば、最近のスバル車らしからぬフラット感を考えても、好印象なのはリミテッドである。
率直に言えば「スバルもやればできるじゃない」というのが、試乗後にまず抱いた印象。他のモデルも特に乗り心地、というより日常的な場面における走りの質という部分に関しては、もう少し頑張った方がいいんじゃないかと感じた……というのは、まったくの余談だ。
ユーザーに寄り添った進化
スバル車に目を向ける動機として今、間違いなく大きな部分を占めている運転支援システムの「アイサイト」は、高解像度カラーのステレオカメラを用いた最新版のver.3が搭載されている。機能は他の車種のものと変わりないが、オッと思ったのは、スピードメーター、タコメーターの外周に仕込まれたリング照明が、通常時はブルーなのに対して、前走車との距離が近づいた時などアイサイトが何らかの警告を出す時にはレッドに変化する仕掛けが盛り込まれていること。警告灯がつくのよりスマートだし識別性も高いグッドアイディアである。
プリクラッシュブレーキの頼もしさもうれしいが、全車速追従機能付きクルーズコントロールによる快適なクルージング性能は、この新しいレガシィB4のキャラクターに、とてもよくマッチしている。隙あらば追越し車線に出てどんどん前に行くのではなく、クルーズコントロールをセットして走行車線をゆったり行く時の心地良さは、きっと「B4を買って良かった」と思わせる、ひとつのポイントになるに違いない。
速からず遅からず、快適だ、ゆったり行く……なんて穏やかな言葉ばかり並べたが、実際に新型レガシィB4のステアリングを握っていると、ついそんな気分になってしまう。これまでの歴史に照らせば、どんどんボディーが大きくなり、豪華になり、一方でトンガッた部分はスポイルされたと評することはできるのだが、しかし実際にはユーザーだって成長し、あるいは年を重ねてきているのも事実。これはユーザーに寄り添った、紛れもない「進化」なのではないかというのが、ステアリングを握りながら抱いた実感だった。
自分も年を取ったんだなと認めるのは、そりゃ面白いことではない。でもそれを、まあ少しは成熟したんだろうと受け入れられるならば、新しいレガシィB4は、そんな自分をとても優しく受け入れてくれるクルマといえるんじゃないかと思う。
(文=島下泰久/写真=峰 昌宏)
テスト車のデータ
スバル・レガシィB4リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4795×1840×1500mm
ホイールベース:2750mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:175ps(129kW)/5800rpm
最大トルク:24.0kgm(235Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)225/50R18 95W/(後)225/50R18 95W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:14.6km/リッター(JC08モード)
価格:307万8000円/テスト車=338万400円
オプション装備:ハーマンカードンサウンドシステム&SDナビゲーション<CD/DVDプレーヤー&AM/FMチューナー>+専用12スピーカー<センタースピーカー、サブウーファー付き>(30万2400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3010km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:288.9km
使用燃料:28.2リッター
参考燃費:10.2km/リッター(満タン法)/10.4km/リッター(車載燃費計計測値)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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