マツダ・アテンザセダンXDプロアクティブ(FF/6AT)/アテンザワゴンXD Lパッケージ(FF/6AT)
熟成を深めたフラッグシップ 2015.01.16 試乗記 「マツダ・アテンザ」が「CX-5」とともに大規模なマイナーチェンジを受けて完成度を一段と高めた。2.2リッターディーゼルエンジンを搭載するセダンとワゴンのステアリングを握り、デビューから2年を経たフラッグシップモデルの“進化論”を検証した。攻めのビッグマイナーチェンジ
アテンザがマイナーチェンジした。発売から2年とちょっと。有名な風邪薬風に言うなら“早めのマイチェン”だ。今回はCX-5とアテンザのマイチェンを同じタイミングで発表。同時に、今後「通常2~3年でマイチェン、4~5年でフルモデルチェンジといったパターンにとらわれることなく、どのクルマも改善、改良できる部分があったらなるべく早く反映する。マツダ車を一括で企画し、新しい装備は高いクルマから……といったことにこだわらず、タイミングが合えば安いクルマからでもどんどん採用する」という内容の決意表明もあった。また時を前後して、マツダ本体のデザイン本部が監修した新しいデザインのショールームを今後増やしていくことも発表された。マツダ、イケイケ! こうなりゃアマティ計画復活だ(若い人はググってね)! と期待したいところというのは冗談で、着実に大きくなってほしい。
アテンザがどう変わったかというと、クオリティーが上がった。安全装備が充実した。4WDが設定された。マイチェンの規模としては小さくない。
そこかしこに質感向上の跡
まず足まわり。新構造の前後ダンパーを採用したほか、フロントロワアームのブッシュ形状を、自重がかかった状態で最適となるような形状とした。NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)の低減にも力が入れられた結果、数値上、車内に伝わる騒音が、荒れた路面で約10%、高速走行時だと約25%減ったという。中のウレタンなど、シートの素材や構造も見直され、乗り心地向上が図られた。
あまり状態のよくない横浜の街中を走らせてみると、前述した改良のどれが効いているのかを見分けることこそ難しかったが、幅広い速度域で路面からの振動はよく吸収され、遮音についても満足できたので、複合的に効果を発揮しているのだろう。マツダ自慢のスカイアクティブ-D 2.2のディーゼルターボエンジンと6段ATは特に変更なし。圧縮比が低いこともあって、もともとディーゼルとしては振動・騒音の少ないエンジンだが、その特徴が強調されることとなった。
クオリティーが向上したのは挙動の面だけではない。良く言えば古典的、悪く言えば広島的(!?)だったインテリアのデザインとマテリアルの質感が大きく向上した。パーキングブレーキが電動化され、センタートンネルにあったレバーが消えた。その代わりにダイヤルスイッチがデーンと鎮座。カップホルダーには蛇腹のカバーが付き、かさばるものを入れていない時にはスッキリする。このほか、クロムの部分をツートーンとするなど、全体の質感向上が図られれている。
マツダのデータでは、アテンザユーザーの55%が輸入車と比較検討したという。国産車の中ではマツダ車は欧州車と比較されることの多いクルマに分類される。アテンザのクオリティーが輸入車を上回るまでに至らずとも近いところまで肉薄していれば、比較検討された際にコストパフォーマンスや地方のサービス体制の充実ぶりなどを総合的に考慮した結果、マツダを選んでもらえる可能性が増えるという作戦のはずだ。誤解を恐れずに言えば、アテンザは地方のための欧州車なのだ!
北国のユーザーに朗報
デザイン、クオリティーが変わり、装備が充実したことも大きいが、一番のニュースは4WDの追加じゃないだろうか。どうして最初から設定されなかったのか不思議でしかたなかった。マツダのだれに聞いても明確に教えてくれないのだが、どうもそれほど需要があるとは考えていなかったようだ。マイチェンで設定されたということはマツダの見通しよりも需要があったのだろう。ともあれ、これからは比較的近いポジションにいると思われるスバルの「レヴォーグ」「レガシィB4」「レガシィアウトバック」あたりと販売面でより激しい勝負を繰り広げるはずだ。
外国の極寒地域はスパイクタイヤを禁じていないし、雪もサラサラだから意外と2WDでも対応できるそうだが、日本はスパイクタイヤ禁止で、冬場に気温が0度前後をうろちょろし、雪が降ったり溶けたり凍ったりでさまざまな路面状態を走らねばならないため、実は北欧などより条件は悪い。4WDが必須の地域に住む人々は多い。だからこそ軽自動車にまでくまなく4WDが設定されているのだ。いいクルマが出来たのなら、なおさら4WDを設定して多くの人に使ってもらうべき。なのでアテンザの4WD追加はグッドニュース以外のなにものでもない。
アテンザに採用されるのはCX-5と同じオンデマンドタイプの4WDだが、このシステムはCX-5のマイチェンを機に、PTO(パワー・
マツダの4WDシステムは、前輪がスリップしないと後輪にトルクが配分されないわけではなく、路面状況や車体が坂道にあるかどうかなどを検知し、前輪がスリップする前から後輪にトルクが配分されるケースもある。オンデマンドが簡易的なタイプで、常時四輪が駆動するタイプこそ本格的といった物言いは過去のもの。まだ試せていないが、アテンザの4WDシステムもきっと有用なはず。
ほぼ死角のないオールラウンダーへ
最近はスバルなら「アイサイト」、メルセデス・ベンツなら「レーダー・セーフティー・パッケージ」という風に、各社、先進安全技術のパッケージに名前をつけてPRしている。マツダの場合は「i-ACTIVSENSE」。
その中でも最も注目すべきは「アダプティブLEDヘッドライト」。ハイビーム時に対向車や先行車を検知すると自動的にロービームに切り替わるのがこれまでの最先端だった。アダプティブLEDヘッドライトは、フルLED化によって、対向車や先行車を検知した場合にその部分のみ光を当てないようにできるため、対向車や先行車のドライバーを眩惑(げんわく)させない。念のためにロービームを選ぶこともできるが、ハイビームのままにしておいても問題はない。暗くなったら自動的に点灯するため、照明に関してドライバーが操作することはもうない。
また、アダプティブLEDヘッドライトは、低速走行時はワイドな配光に、高速走行時は範囲を絞って遠方まで光を届かせる配光に切り替わる。マツダはスタンレー電気や小糸製作所と組んで開発したようだが、他の自動車メーカーもさまざまなサプライヤーと組んで程なく同様の機能を実用化するだろう。ヘッドライトの新しいトレンド。
先に掲載していただいたCX-5のインプレッション記事にも書いたが、ミリ波レーダーを使ったレーダー・クルーズ・コントロールについて、マツダはスバルのアイサイトのように全車速対応とはせず、30km/h未満になるとキャンセルとなる。建前としては、こうした技術は“不完全な自動運転”ではなく“運転支援”の一種だ。けれども、他社は全車速に対応し、ドライバーを感心させている。どちらが新しい時代を感じることができるかといえば、全車速のほうだろう。やろうと思えばできるんだからすぐやったほうがいいと思う。
ディーゼルエンジンの燃費がもたらす長い航続距離、4WDがもたらす全天候性、そしてワゴンの場合はさらに高いユーテリティー性まで手に入る。アテンザはマイナーチェンジでほぼ死角のないオールラウンダーとなったと思う。しつこいようだが、レーダー・クルーズ・コントロールが全車速対応になれば完璧だ。
(文=塩見 智/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
マツダ・アテンザセダンXDプロアクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1840×1450mm
ホイールベース:2830mm
車重:1530kg
駆動方式:FF
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:175ps(129kW)/4500rpm
最大トルク:42.8kgm(420Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/55R17 97V/(後)225/55R17 97V(ブリヂストン・トランザT001)
燃費:20.0km/リッター(JC08モード)
価格:327万7800円/テスト車=349万9200円
オプション装備:特別塗装色(スノーフレイクホワイトパールマイカ)(3万2400円)/セーフティクルーズパッケージ(スマート・ブレーキ・サポート<SBS>&マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール<MRCC>、スマート・シティ・ブレーキ・サポート[後退時]<SCBS R>、リアパーキングセンサー<センター/コーナー>、ドライバー・アテンション・アラート<DAA>)(7万5600円)/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(2万7000円)/Boseサウンドシステム(AUDIOPILOT2+Centerpoint2)+9スピーカー(8万6400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:878km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
マツダ・アテンザワゴンXD Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1840×1450mm
ホイールベース:2750mm
車重:1570kg
駆動方式:FF
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:175ps(129kW)/4500rpm
最大トルク:42.8kgm(420Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/45R19 92W/(後)225/45R19 92W(ブリヂストン・トランザT001)
燃費:19.6km/リッター(JC08モード)
価格:374万2200円/テスト車=385万5600円
オプション装備:電動スライドガラスサンルーフ(チルトアップ機構付き)(8万6400円)/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(2万7000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1275km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
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