第278回:待望の走りを一言で表現すると?
スペイン・バルセロナより新型「ロードスター」の走りをリポート
2015.02.18
エディターから一言
スペイン・バルセロナで開催された国際試乗会より、新型「マツダMX-5(日本名:ロードスター)」の走りの実力と、海外メディアの反応をリポートする。
世界が待ち望んでいた10年ぶりの新型
1989年の発売からの総販売台数、93万9028台(2014年11月末現在)。「マツダMX-5/ロードスター」は、世界で最も多くの人に愛されている、ライトウェイトスポーツカーだ。
初代「NA」の誕生から25年、さらに第3世代「NC」の誕生から10年の月日を経て、第4世代の「ND」がお披露目されたのはご存じの通り。日本では2014年12月に静岡県内のクローズドエリアでプロトタイプの試乗会が行われ、2015年1月後半、スペインはバルセロナで公道試乗会が開催された。用意された試乗車は、日本市場向けの右ハンドル車、つまり「マツダ・ロードスター」のプロトタイプだ。そこで筆者は、新型ロードスターをじっくりと走らせることができた。
ボディーサイズは、全長×全幅×全高=3915×1730×1235mm。ホイールベースが2315mm。フロントオーバーハングは極めて短く、そしてノーズ部分の位置が低い。キャノピーを見ると、Aピラーを前モデル比で70mm後退させることで、ルーフを小型化。併せてルーフ収納部分も小さくなり、歴代ロードスターの中で最もコックピットの前後長が短くなった。結果的に、ND型ロードスターはフロントオーバーハングが短い割にロングノーズなシルエットとなった。
エンジンは「SKYACITV-G」の1.5リッター直噴4気筒で、最高出力は131ps/7000rpm、最大トルクは15.3kgm/4800rpm。もとは「アクセラ」用のユニットだが、FF横置きからFR縦置きへのレイアウト変更に伴い、補器類等を新規に設計した。
しかも驚くことに、高回転&高トルク仕様として、シリンダーヘッド、シリンダーブロックを新設計。さらにクランクシャフトのカウンターウェイトについても気筒ごとに重量を変えて、レッドゾーンは7500rpmからという高回転を実現した。6段マニュアルミッションも新設計となっており、ケーシング断面の厚みを部分的に変えることで冷却効率を維持し、ケーシング外部の凹凸をなくしている。また6速のギア比を1.0に設定し、それに合わせてデファレンシャルのギア比を変更した。
エンジンの搭載位置は、先代モデル比で後方に15mm、下方に13mm移動。理想的なフロントミドシップとしている。
車体の基本構造はシンプルで、超高張力鋼板をバランスよく配置し、ボンネットやトランクリッドなどに加えてフェンダーにもアルミを採用。総重量はNC比で約100kgの軽量化となった。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンク。パワーステアリングはこれまでの油圧式から電動式に変わっている。
今回装着していたタイヤは前後とも195/50R16サイズの「ヨコハマ・アドバンスポーツV105」である。
初代「NA」のような走りの緊張感が復活
走行コースは、約80kmの行程。 開発主査の山本修弘氏は「このコースは私が事前調査してじっくり作り上げた。ワインディング路に加えて市内走行も盛り込んでおり、新型ロードスターのよさを十分に分かっていただけるコースレイアウトだと思っている」と自信を見せた。
試乗の基点を出ると、すぐにワインディング路だ。そこでまず筆者が思ったのは、「軽量で軽快だが、決して小さくて軽々しくない」。
さらに少し不思議な気持ちとなったのは、コーナーの進入時。ブレーキングの後、なんともきれいで自然に定常旋回に入るのだ。コーナー出口ではアクセルを踏み込むと、リアサスが動いているのがハッキリと分かる。そして、クルマ全体がスーッとベストラインに乗る。
こうしたコーナリングでの一連の動きの秘密とはなにか?
車両開発本部 車両開発推進部副主査の髙松 仁氏は次の3点を強調した。
ひとつは、クルマの前後方向の傾きであるピッチングの中心点が、ドライバーの重心と同じ位置であること。「NC(第3世代)ではピッチングの中心点がドライバーの重心より前にあるため、ブレーキング時、ドライバーの体が前のめりになる。それが今回解消されている」という。
2つ目は、アクセルペダルの位置。ほかのマツダ車と比べてドライバー側に少し立てて配置されており、さらにヒール・アンド・トウを考慮してペダル表面が厚い。そのため、アクセルオフ時に脛(すね)の筋肉が緊張するので、ブレーキからアクセルへの踏みかえの際、ドライバーはその緊張を解放しようとして、定常旋回時に積極的にアクセルを踏むことになる。
そして3つ目は、リアサスペンションのセッティングだ。
「レバー比の設定により、サスペンションストロークは大きいのだが、作動している時に安定性を保っている。さらにアクセルオンでトーインとなり、アクセルで曲がるイメージを強調した」(髙松氏)
魅力は運動性能だけではない
こうした新型ロードスターの動きを端的に表現するなら、まるで球体の中にいるような感じだ。ドライバーと助手席の乗員が、すっぽりと球体の中に入って、コーナーをコロコロと転がっていくような感覚。動きのフレキシビリティーが極めて高いのだ。通常、よくできたサスペンション、またはよくできたシャシーセッティングというのは、X・Y・Z軸に対する立体的な動き、つまりロール・ピッチ・ヨーという3方向に対して「動きが良い」と表現される。一方、新型ロードスターの場合、そうした表現はしっくりとこない。
それからもう2点。走りながら感動したのは、トルクと音だ。
パワートレイン開発本部 エンジン設計部 PT車載設計グループ主幹の岩崎龍德氏の説明によると、トルクについては「既存のロードスター所有者の方々のご意見、さらに競合他車の製品特性を分析して、最良のトルク特性を考えた。その結果、2000rpm弱から6000rpm強の広い回転域で、最大トルクの90%をキープしている」という。実際、市街地をオートマチックトランスミッションのように、4速(おおむね1750rpmだった)のまま走っていてもまったく苦にならないほど、下から十分なトルクがある。
そして、音だ。
低回転域でのマフラーのこもり音は少ない。人が気になる100Hz帯域がきれいに消えている。ところが2500rpmから5000rpmあたりで、不思議な音が車内を包む。これは何か?
「ドライブシャフトからデフ、さらにリアサスから車体後部を介した共鳴音で車内を包み込んでいる。これを実現するため、デフのマウントブラケットを50g増量した」(岩崎氏)
「グラム作戦」で徹底した軽量化を進めるなかで、こうしたコダワリを貫くところが、いかにもマツダらしい。
それでも2リッターが欲しいというのか!?
新型ロードスターは2014年9月、日米欧で同時にワールドプレミアされ、その直後から、世界のロードスターファンからの「正確な発売日はいつか」「いつになったら乗れるのか」といった声が急増した。その後、米SEMAショー、デトロイトショーなどに展示された際、筆者はアメリカ人ジャーナリストの多くから「写真で見るより、実物はかなりいい」という声を聞いていた。だが同時に「1.5リッターで本当に楽しいのか?」という不安の声も多かった。
そして今回の公道試乗会において、筆者よりひと足先に試乗したアメリカ人ジャーナリストたちは「1.5リッターでも十分だ」と驚いていたという。と同時に「とはいえ2リッターも必要だ」とも言っていたらしい。
試乗会場で配布された英文の資料によると、エンジンラインナップは2つ。1.5リッターと2リッターがあると記載されている。2リッター仕様では当然、アメリカのフリーウェイにおける快適性を重視したセッティングになるだろう。
筆者は試乗の後、新型ロードスターを形容する言葉を探した。出てきたのは「現代版のNA」。初代ロードスターのあの緊張感、あの楽しさを、最新技術によって体現できる。実にうれしいことだ。
(文=桃田健史/写真=桃田健史、マツダ)

桃田 健史
東京生まれ横浜育ち米テキサス州在住。 大学の専攻は機械工学。インディ500 、NASCAR 、 パイクスピークなどのアメリカンレースにドライバーとしての参戦経験を持つ。 現在、日本テレビのIRL番組ピットリポーター、 NASCAR番組解説などを務める。スポーツ新聞、自動車雑誌にも寄稿中。
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