BMW 220iグランツアラー(FF/8AT)/BMW 220d xDriveグランツアラー(4WD/8AT)
家族で駆けぬける歓び 2015.05.20 試乗記 「アクティブツアラー」に続く、BMWブランドのFF車の第2弾は「2シリーズ グランツアラー」である。3列シートを備えたコンパクトMPVに駆けぬける歓びはあるか? クロアチアからの第一報。日本車の牙城に挑戦
市場の嗜好(しこう)を漏らさず受け止めんと張り巡らされたBMWのモデルラインナップにおいて、FF系「2シリーズ」は今後のビジネススキームを占うキーとなるモデルだ。
同門のMINIとのアーキテクチャー共有化による収益率の向上はもとより、これまでBMWとは疎遠だったエントリーユーザーへのアプローチが、顧客層の拡大や平均年齢の若返りといった副次的な効果ももたらすことになる。彼らにとってFFという選択は、合理性だけでなく自らのモデルの最大の弱点、すなわちスペースユーティリティーをかなえる上でも欠くことのできないものだったのだろう。
既に発売されている「2シリーズ アクティブツアラー」はその思惑通り、ここ日本市場においても新規ユーザーの獲得に大いに貢献しているという。そのアクティブツアラーをベースに3列シートを擁するパッケージを備えた2シリーズ グランツアラーが狙うのは、軽自動車と並んでローカライズされた嗜好をもつミニバンのマーケットだ。
主役はむしろディーゼルか?
グランツアラーの全長は4556mm、ホイールベースは2780mmとなり、アクティブツアラーに対してそれぞれ215mm、110mm長い。そして全高は53mm高い1608mm。アップライト寄りの着座姿勢で短い全長に3列の席間を確保したという点からみれば、「フォルクスワーゲン・ゴルフトゥーラン」あたりが近い存在といえるだろう。
このパッケージを実現するために、グランツアラーのモノコックはAピラー中間付近までがアクティブツアラーと共通になるが、それより後ろ側は全て新規で起こされている。
日本に投入されると目されるエンジンバリエーションは、気筒あたり500ccを燃焼室の理想的キャパシティーとするBMWのストラテジーにのっとった最新のモジュラーユニット。ベーシックなモデルにはMINIでもおなじみの1.5リッター3気筒、スポーティーモデルには2リッター4気筒のそれぞれ直噴ターボが搭載され、組み合わされるATは前者が6段、後者が8段となる。
そして現在、日本仕様への搭載を検討中というのが、2リッター4気筒のディーゼル直噴ターボユニットだ。前述のガソリンユニットと同様に、ツインパワー・ターボテクノロジーを擁する最新のアーキテクチャーにのっとったそれは、FFモデルの「218dグランツアラー」の場合、150psの最高出力と330Nm(33.7kgm)の最大トルクを両立。8段ATとの組み合わせでは欧州基準値で4.5リッター/100km(約22.2km/リッター)の燃費とともに9.3秒の0-100km/h加速、および205km/hの最高速を実現している。導入の暁には、日本車を含むミニバン系では「三菱デリカ」に次ぐディーゼルモデルとして魅力的な選択肢となりそうだ。
乗り心地がより上質に
60:40スプリットで最大130mmのスライディングを実現しながら、40:20:40の独立フォールディング機能も備えるなど、アクティブツアラーと遜色ない使い勝手を確保した2列目シートに加え、床面に対してフルフラットに格納できる3列目シートを備えるなど、積載力の強化にも配慮されたシートアレンジはグランツアラーの大きなセリングポイントだ。
一方で、3列目のシートは座面と床面の段差が小さく、つま先の入れ場もほぼ無に等しいなど、大人が座り続けるには相当厳しい姿勢を強いられる。実際、エンジニア側も3列目は恒常的ではなく必要時に、主に子供が座ることを想定しているという。
ともあれ、着座環境に対する工夫、そしてパッケージ能力でいえば、日本のミニバンには一日の長があることは間違いない。逆にいえば、それを補って余りある走りの良さこそがグランツアラー最大の個性ということになる。
前ストラット、後マルチリンクのサスペンションはアクティブツアラーのそれを継承しつつ、電動パワーステアリングの設定と併せて専用のチューニングが施されたシャシー周り、そして持ち前の高い車体剛性もあって、グランツアラーのライドフィールはアクティブツアラーにも増して上質感に満ちている。
路面アタリのまろやかさや微細な振動の抜けの良さは、ホイールベースの延長が奏功している一面もあるのだろう、そのスッキリ感やしなやかさは、足を屈(かが)めて乗り込んでみた3列目のシートですら十分に感じられるほど。
乗車位置に関わらず平等に快適な乗り心地をかなえるミニバンは少ないが、BMWはグランツアラーで相当入念にそのあたりを煮詰めてきたことがうかがえる。
日本向けは3列シートが標準
もちろんハンドリングも、アクティブツアラーほどのシャープネスは持たずとも十分にスポーティーだ。コーナーでは操舵(そうだ)応答の正確さやロードホールディングの高さのみならず、アクセルを踏み込むほどに後ろ脚がズシッと据わる感触を伝えてくるあたり、リアグリップを重視するFR屋のBMWらしいフィーリングだなぁと感じさせてもくれる。
欧州仕様では高額なオプションとなる3列シートを標準装備とした状態で日本導入されるこのグランツアラー、インポーター側は価格も十分に説得力のあるものを目指して現在調整中という。
とはいえアクティブツアラーの価格帯から想像するに、300万円台の中盤は超えてくるだろう。大は小を兼ねるという考えでいえば、ユーティリティーの高い日本のミニバンにはかなわないかもしれない。が、「足るを知る」向きにとっては、その決断に報いてくれるだけの高いクオリティーを供してくれる存在といえるだろう。
(文=渡辺敏史/写真=BMW)
テスト車のデータ
BMW 220iグランツアラー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4556×1800×1608mm
ホイールベース:2780mm
車重:1495/1570kg(DIN/EU)
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:192ps(141kW)/5000rpm
最大トルク:28.6kgm(280Nm)/1250rpm
タイヤ:(前)205/55R17 91W/(後)205/55R17 91W
燃費:6.1-5.9リッター/100km(約16.4-16.9km/リッター、EUテストサイクル複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
BMW 220d xDriveグランツアラー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4556×1800×1608mm
ホイールベース:2780mm
車重:1565/1640kg(DIN/EU)
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190ps(140kW)/4000rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/1750rpm
タイヤ:(前)205/55R17 91W/(後)205/55R17 91W
燃費:5.1-4.9リッター/100km(約19.6-20.4km/リッター、EUテストサイクル複合モード)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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