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【スペック】全長×全幅×全高=4790×1915×1320mm/ホイールベース=2750mm/車重=1810kg/駆動方式=FR/5リッターV8DOHC32バルブスーパーチャージャー付き(510ps/6000-6500rpm、63.7kgm/2500-5500rpm)/価格=1530万円(テスト車=1586万4000円)

ジャガーXKRクーペ(FR/6AT)【試乗記】

大人の余裕 2011.11.29 試乗記 塩見 智 ジャガーXKRクーペ(FR/6AT)
……1586万4000円
フロントマスクを中心にデザインを一新したジャガーの2シータースポーツ「XK」シリーズ。最もスポーティーな「XKRクーペ」でその走りを試した。
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良いマイチェン

ジャガーほど大人に似合うクルマをつくるメーカーはない。街中を見回してほしい。フェラーリやポルシェには大人も乗っているが、ジャニタレみたいなのも乗っている。それがジャガーとなると、不思議と大人しか乗っていない。僕調べだと半分くらいの確率で白髪が交じった大人が乗っている。そりゃなかにはナニワ金融道みたいな人も乗っているが、少なくとも皆さん、自分は上品な大人だと信じている人ばかり。そして皆さん似合っていらっしゃる。そんなジャガーの、現状最もスポーティーなモデルである「XKR」に、似合いそうもない僕が試乗した。

現在、ジャガーはセダンの「XJ」「XF」と、スポーツカーの「XK」をラインナップする。どのモデルも共通して自社開発の5リッター直噴V8エンジン(XFには3リッターV6もあり)と、そのエンジンをスーパーチャージャーで過給したモデルを設定する。スーパーチャージドモデルにはその証しとして車名の末尾に「R」が付く。

XKシリーズは2012年モデルで顔つきが変わった。もはや定番マイチェンツールであるLEDがヘッドランプユニットへ埋め込まれたほか、ユニット自体の形状も変わった。顔つきは以前に比べ、若干アグレッシブな印象になったが、先代から引き続き採用された、往年の「Eタイプ」を連想させるオーバル型のフロントグリルは健在。このため、すぐにジャガーのスポーツカーだとわかる。クルマ全体の性能が向上し、今やブランドにとって、識別してもらえることはライバルよりパワフルであること以上に大切と言っても過言ではない。
リアに回ると、立ち気味のスポイラーが目を引く。昔の人は「マイチェンに佳作なし」と言ったが、たまにはこういうヒットもある。

フロントマスクは、LED内蔵のヘッドランプが採用され、バンパーやクロームサイドパワーベントのデザインも新しくなった。「XKR」は上下のグリルがブラックフィニッシュとなるほか、アッパーグリルに「R」のバッジが追加される。
フロントマスクは、LED内蔵のヘッドランプが採用され、バンパーやクロームサイドパワーベントのデザインも新しくなった。「XKR」は上下のグリルがブラックフィニッシュとなるほか、アッパーグリルに「R」のバッジが追加される。 拡大

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乗り心地は最高、エンジンはもっと最高

乗り込んでスタートボタンを押すと、例のダイヤル式のATドライブセレクターがニョキッと出てくる。操作性が良いわけでも悪いわけでもないが、個性的だ。どうせマニュアル操作にはパドルを使うのだから、セレクターのデザインは遊んでよいのだ。そういえば、かつてのジャガーはATセレクターを「J」の形に動かすようデザインされていたが、あれは機能的でかつ個性的だった。

エンジンを始動させると、抑制されていながらも、低くくぐもった、どう猛さを秘めていることが容易に想像できるアイドリング音が聞こえる。街中を流す限り、XJに劣らぬ快適な乗り心地を保ってくれる。20インチタイヤを見事に履きこなし、ギャップを超えても不快な突き上げは一切感じない。それでいて、コーナーの連続を積極的に飛ばす際には明らかにダンピングが強まり、ドライバーの安心感は高い。面倒な「飛ばす時に押せ」といったスイッチの類いはなく、クルマが挙動をセンシングして猫の目のようにセッティングを変化させる。21世紀の猫足だ。

大人だ、上品だなどと書いたが、このクルマが積むエンジンが最高出力510ps/6000-6500rpm、最大トルク63.7kgm/2000-5500rpmと、とんでもないスペックであることは紛れもない事実で、フル加速させると脳が置いていかれる感覚に陥る。プレミアムスポーツのハイパワー合戦は、エコブームとは異なる時空で相変わらず続いており、ジャガーもライバルとがっぷり四つで組んでいるのだ。今回、燃費は計測できなかったが、このエンジンはパフォーマンスのわりには効率が高いことを、別のクルマ(レンジローバー)で確認済み。とはいえ、リッター当たり「ひと桁の後半」キロにとどまるだろう。燃費に徹した運転をすればもっといくだろうが、きっと誰も踏むのを我慢できない。

インテリアは、センターコンソールにピアノブラックフィニッシュの合板を採用。新デザインのステアリングホイールには「R」のバッジも追加された。
インテリアは、センターコンソールにピアノブラックフィニッシュの合板を採用。新デザインのステアリングホイールには「R」のバッジも追加された。 拡大
「XKR」に搭載されるのは510psの5リッターV8スーパーチャージャーエンジン。そのほか、385psのV8エンジンを搭載する「XKラグジュアリー クーペ」と「XKポートフォリオ コンバーチブル」が2012年の「XK」シリーズのラインナップ。
「XKR」に搭載されるのは510psの5リッターV8スーパーチャージャーエンジン。そのほか、385psのV8エンジンを搭載する「XKラグジュアリー クーペ」と「XKポートフォリオ コンバーチブル」が2012年の「XK」シリーズのラインナップ。
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テスト車には、20インチシルバーTakobaアロイホイールがオプションで装備されていた。タイヤサイズは、フロント235/35ZR20、リア285/30ZR20。
テスト車には、20インチシルバーTakobaアロイホイールがオプションで装備されていた。タイヤサイズは、フロント235/35ZR20、リア285/30ZR20。 拡大
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ほどほどがいい

ひとつ断っておかねばならないのは、乗り心地がよいからといって、大人3人以上の乗車を試みてはいけないということ。担当編集者を後ろに乗せると「へこんだ座面にお尻が入りきらない!」と叫んでいた。編集者は女性だったので、クルマが悪いのか人間が悪いのか検証するのはやめておいたが、Rに限らずXKシリーズは、車検証上はともかく、実際は大人2人のためのクルマだ。

結局のところ、ジャガーの魅力はなんなのかということを考えると、やり過ぎないことではないだろうか。過ぎたるはなお及ばざるがごとし。ヒストリーを振り返っても価格を考えてもアストン・マーティンほどハイブランド過ぎることはなく、イタリアのライバルほどギラギラし過ぎておらず、ポルシェやフェラーリほどやんちゃなイメージでもない。けれども、プレミアムスポーツに必要な要素は漏らさず備えている。

その高いレベルでのほどほど感が、オーナーを節度ある大人に見せる。1530万円のXKRを買ったうえで「スポーツカーが好きだが、ジャガーくらいにしておいた」「何でも買えるが、ジャガーくらいにしておいた」「去年ヨット買っちゃったから、クルマはジャガーくらいにしておいた」とか言いそう。すてき過ぎる。

ただ、ジャガーも商売だから、スポーティー過ぎる仕様を望む人に対して、「XKR-S」というカッコもパフォーマンスもより過激なモデルを間もなく発売するらしい。うーん、それはそれで楽しみだ。

(文=塩見智/写真=荒川正幸)


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【テスト車のオプション装備】
XKRエアロパック=11万5000円/ジャガーロゴ入りレッドブレーキキャリパー=4万5000円/リアカメラパーキングコントロール=5万円/20インチシルバーTakobaアロイホイール=9万9000円/ブライトステンレススチールペダル=5万5000円/アダプティブクルーズコントロール=20万円/ダークオークウッドパネル(無償オプション)
【テスト車のオプション装備】
XKRエアロパック=11万5000円/ジャガーロゴ入りレッドブレーキキャリパー=4万5000円/リアカメラパーキングコントロール=5万円/20インチシルバーTakobaアロイホイール=9万9000円/ブライトステンレススチールペダル=5万5000円/アダプティブクルーズコントロール=20万円/ダークオークウッドパネル(無償オプション) 拡大
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