フォルクスワーゲン・ゴルフGTE(FF/6AT)
重く、静かなゴルフ 2015.11.30 試乗記 フォルクスワーゲン初のプラグインハイブリッド車「ゴルフGTE」に試乗。エコフレンドリーなだけでなく、「GTI」譲りのダイナミックな走行性能も兼ね備えているという同車の走りを、箱根のワインディングロードで試した。電動化ゴルフ第1弾
フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル排出ガススキャンダルは収束の気配を見せるどころか、ガソリンエンジン車のCO2問題にまで広がってしまった。まったく今でも信じられない思いだが、とにかく一刻も早くすべてを明らかにしなければ、信頼回復も何も始まらない。言うまでもないことだが、ディーゼルエンジン自体に問題があるわけではなく、不正で違法なのはルールをないがしろにしたVWの行為である。この機に今後は欧州メーカーもディーゼルから電動化に舵(かじ)を切るだろう、というような論調で報じているメディアもあるが、それは短絡的というものだ。2020年に95g/kmというCO2平均排出量を目標に掲げているヨーロッパでは、現状では何らかの電動化を取り入れなければならないことは明らかだが、だからといってディーゼル車が短期間に電気自動車(EV)や、プラグインハイブリッド車(PHEV)に入れ替わると考えるのは現実的な話ではない。羹(あつもの)に懲りたVWがディーゼルを見放すという予測はあまりにも牽強(けんきょう)付会に過ぎるだろう。
まあ、PHEVのゴルフGTEの日本導入がこのタイミングになったのは何とも皮肉で勘ぐってみたくもなるが、そもそもVWグループジャパンは、既に1年以上も前にEVの「e-up!」と「e-ゴルフ」を発表している。ただし、今回の事件が明るみに出る前から実際の発売は伸び伸びとなり、現在も未定のままだ。理由として日本仕様の急速充電器への対応がまだ万全ではないという事情が伝えられている。結果的に、このGTEが日本で正式に発売された最初のモーター付きゴルフということになった。
「GTE」を名乗るわけ
ゴルフGTEは、容量8.7kWhのリチウムイオン電池を搭載し、150ps(110kW)/5000-6000rpmと25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpmを発生する1.4リッターTSIエンジンと、6段DSGユニットに一体化された、同じく109ps(80kW)/33.9kgm(330Nm)のモーターを備えたプラグインハイブリッドのゴルフ。アウディ版の「A3スポーツバックe-tron」と兄弟車ということになる。バッテリーは12kWhの「アウトランダーPHEV」に次ぐ容量で、最大53.1kmまでなら電動走行可能、速度も130km/hまでモーターだけで走ることができる。したがってバッテリー残量が十分で、都内近郊であれば高速道路を使っても一度もエンジンに火を入れることなく用事を済ませることができるというわけだ。フル充電に要する時間は200Vで約3時間という。
いっぽうでシステム最大出力は204psと35.7kgm(350Nm)を生み出すというから、事実上GTIと同等である。GTEモードを選択すればパワフルな走行が可能になり、1580kgという車重にもかかわらず0-100km/hを7.6秒で加速するパフォーマンスを誇る。「GTE」のバッジは、必要ならばその辺のハイブリッド車を蹴散らすこともできる走行性能を主張しているのだ。
できるだけEV走行
GTEモードの他にEモードとハイブリッドモードを選べるが(さらにバッテリーチャージモードをインフォテインメントシステムのモニターで選択可能)、ゴルフGTEは状況が許す限り、できるだけモーターで走ろうとする。ただし、他のゴルフと同じ感覚で走りだすと、滑らかではあるがやはりいささかモッタリと動き出す。それも仕方がないことで、GTEは2リッターターボを積むGTIより約200kg、1.4TSIを積む「ハイライン」より250kgほど車重が重く、前述のとおり1580kgに達する。普通に走っている限りは滑らかで静かだが、この重さははっきりと意識せざるを得ない。
ハイブリッドモードの場合は目いっぱい右足を踏み込んで、かなり奥にあるキックダウンスイッチを越えればエンジンが始動するが、そこまで踏まなくてもモーターだけで十分交通の流れに乗ることができる。GTEモードの場合は、スロットルペダルのストロークの半分ぐらいでパワーメーターの針が“ブースト”に飛び込み、エンジンとモーターが協力してグイッと押してくれるのが分かるが、どの場合でもクラッチの断続やエンジン始動、あるいはこれまた頻繁に働くコースティングから復帰する際も、そのショックやノイズはまったく感じられず、シームレスにきわめて滑らかに走る。
身軽とは言えないのに乗り心地やハンドリングは洗練され、落ち着いたものだ。これは駆動用バッテリーをリアシートのフロア下、本来の燃料タンクのある場所に配置し、なるべく運動性能に影響が出ないように配慮したおかげでもあるだろう。また電子制御でデフロック的効果を生みアンダーステアを巧妙に抑え込むXDSの働きも自然だ。追い出された燃料タンクはラゲッジルームの床下に移され(タンク容量も40リッターと小さくなっている)、そのせいでラゲッジスペース容量は標準型ゴルフの380リッターから272リッターへ減っている。
意外に伸びない燃費
フロントのVWエンブレムの裏に充電ポートが隠されているが、外部電源による充電は200Vだけに対応しており。いわゆるチャデモ(CHAdeMO)による急速充電は使えない。ご存じの方も多いと思うが、国内に設置されている急速充電器のメーカーは20社以上もあり、その中には接続してもエラーが出て使用できない充電器があり、テスラもその問題を抱えているという。VWはその点を考慮して普通充電のみに絞ったと思われる。
実際には30km強でなくなるバッテリーを使い切ったその先の燃費は思ったほど良くなかった。一度きりの箱根往復で決めつけるわけではないが、それでもJC08モード燃費(ハイブリッド燃料消費率)23.8km/リッターに対して、車載コンピューターが示した14.5km/リッターという平均燃費はちょっとがっかりである。というよりこのぐらいなら、スタンダードのゴルフでも十分可能なレベルである。家のガレージで充電して、近場の用事には電池だけで走り、遠出の場合はハイブリッドとして使用するというパターンがゴルフGTEの良さを引き出す使い方だろう。ただし499万円という車両価格は、新し物好きのクルマ好きも二の足を踏むに十分な値段だ。最大38万円ほどの補助金が出るとはいえ、何しろTSIエンジン搭載の標準型ゴルフTSIハイラインのざっと170万円増し、GTIと比べても100万円高にもなるからだ。
もっとも、この値段以外はまず文句をつけるところがない。ハイブリッドだからという言い訳は一切必要ない、車として見事な出来栄えである。だからこそ、ここで最初の疑問に戻ってしまう。これほど誠実な製品を作るVWが、なぜ不正に手を染めたのか。これからまた長い長い時間をかけて、ひとつずつ真摯(しんし)に答えていかなければならないだろう。
(文=高平高輝/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフGTE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4265×1800×1480mm
ホイールベース:2635mm
車重:1580kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6AT
エンジン最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
エンジン最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
モーター最高出力:109ps(80kW)
モーター最大トルク:33.6kgm(330Nm)
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:23.8km/リッター(ハイブリッド燃料消費率、JC08モード)
価格:499万円/テスト車=527万800円
オプション装備:有償オプションカラー<オリックスホワイト マザーオブパールエフェクト>(6万4800円)/DCCパッケージ(21万6000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:5265km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:364.2km
使用燃料:27.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.2km/リッター(満タン法)/14.5km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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