ランボルギーニ・ウラカンLP610-4スパイダー(4WD/7AT)
オープンスポーツの真打ち 2016.03.10 試乗記 ランボルギーニの快進撃を支える「ウラカン」、そのラインナップに加わったオープンモデル「ウラカンLP610-4 スパイダー」に試乗した。“激動期”にある同社が送り出した最新オープンスポーツの実力やいかに?異例の長期政権
ウラカン スパイダーの国際試乗会は2月2日に、常夏の米国マイアミで開催された。そして、今、ボクはこの原稿をジュネーブショーのプレスデー(3月1日と2日)の後に書いている。ランボルギーニにとって、そしてランボファンにとっても、2016年2月は“激動の1カ月”であった。
マイアミで行われた日本メディア向け合同インタビューで、ランボルギーニのステファン・ヴィンケルマン社長兼CEOは、大変ご機嫌な様子に見えた。それはそうだろう。2015年のランボルギーニ社は、世界セールスが同社史上初めて3000台以上(3245台)となり、売上高も約4割アップの8億7200万ユーロ(約1100億円)に達していた。しかも、相手は、実質的に世界で2番目の市場からやってきたメディアである(発表では、アメリカ、中国に次ぐ第3位となっていたが、ここでいう中国とはGreater Chinaであり、香港と台湾を含んでいる)。機嫌の悪くなるはずもない。そう思っていた。
昨年末から、ウワサはあった。新たにランボルギーニの社長兼CEOに就任するボローニャ出身のステファノ・ドメニカリ(元フェラーリ、元FIA)がアウディグループに入り、ランボルギーニと人的関係の深いドゥカティを任せられていた。さらに、アウディ本体から新たなCFO(最高財務責任者)が送り込まれ、財布のひもをがっちり握った。新型SUV「ウルス」の生産体制を整えるため、企業規模を全てにおいて2倍にすることを発表した。つまり、下地は整っていた。そこから連想を働かせたものも多かったのだ。
何しろ、ステファンはすでにランボルギーニ在籍11年である。世界的に有名なスーパーカーメーカーとはいえ、メジャーグループ傘下の小さないちブランドにすぎない。“サラリーマン社長”としては異例の長期政権だったから、いつ変わってもおかしくはなかった。
そして激動の1カ月
ステファンの、そんなウワサをかき消してあまりあったのが、世界20台限定のハイパーモデルを顧客に案内しはじめたという、もうひとつの大きなウワサであった。しかも、これきりではなく、ランボルギーニは今後も毎年、超プレミアムな限定車を出していくのだという!
結果的に、ジュネーブショー初日のプレスデーでは、両方のウワサとも真実となって出現した。もっとも、フェルッチョ(ランボルギーニの創始者)生誕100周年モデルである「チェンテナリオ」の方は、クーペ20台(175万ユーロ=約2億2000万円)、ロードスター20台(200万ユーロ=約2億5200万円)の合計40台(既に完売)であったが。余談ばかりで申し訳ないけれど、ジュネーブショーに展示されたチェンテナリオはオプションのヴィジブルカーボン仕様で、そのプラスコストはなんとウラカン1台分なのだそう。もちろん、ウラカンがオマケで付いてくるわけじゃない。
ウラカン スパイダーの試乗会を皮切りに、チェンテナリオの発表、CEOの交代、おまけにチェントロスティーレ(デザインセンター)のトップまで交代したから、歴史的な1カ月であった。プレスデーで立ち話をした技術部門のトップ、マウリツィオ・レッジャーニに、「次はあなたですね」と言ったら、大笑いされてしまった。ちなみに、デザイントップのフィリッポ・ペリーニはイタルデザインのトップデザイナーに異動した。ランボルギーニの新デザイナー、ミッチャ・ボルカートはポルシェ出身だ。
そして、ステファン・ヴィンケルマンはといえば、ランボルギーニ最後のモーターショーでアウディトップのルパート・シュタートラーから熱い抱擁を受け、感極まった様子であった。
話をマイアミに戻そう。
実は、試乗会後のディナーの席で、ステファンの隣に座ったボクは、単刀直入に彼にこう聞いていた。「初めて会ってから、もう11年ですね。組織としてはちょっと長い在任期間です。どう思いますか?」
すると彼は、ちょっと遠いまなざしで、こう言った。
「ずっと(ランボルギーニのCEOを)やってほしいかい?」
「ええ、もちろん。ランボファンにとって、あなたは現代のミスターランボルギーニであり、ヒーローですから」
「そうか……」
それきり、彼は話のネタをウラカン スパイダーに戻してしまった。今思えば、“そういうこと”だったのだろう。
クーペに劣らぬ快適さ
前置きがかなり長くなってしまった。こちらも(やっと)ウラカン スパイダーの話に戻るとしよう。
世界中で好調なセールスを記録し、ランボルギーニ躍進の立役者となったウラカンの、オープンモデルである。注目のトップ機構は、「ガヤルド」と同様、ソフトトップタイプとした。布製とはいっても、3レイヤーの頑丈なもので、音振(騒音と振動)に対するパフォーマンスはクーペとまるで変わらないという。開閉はもちろん、ワンタッチのフル電動式で、要する時間はおよそ17秒。50km/h以下でなら、走行中の操作も可能だ。
変わらないといえば、ワンモーションのベルリネッタスタイルも、クーペとスパイダーとで大きな違いはない。ただし、エアインテーク周りのデザインは異なっている。このあたりは、フィリッポのこだわりだったに違いない(試乗会に彼はいなかった。イタルデザインのジュネーブショー出展車両「GTゼロ」で忙しかったからだ!)。
スパイダーのメカニズムはクーペと共通である。610psのデュアルインジェクション5.2リッターV10自然吸気エンジンをミドに積み、7段DCTと電子制御4WDシステムを組み合わせる。各種補強により重量が120kg増えているが、クーペから0.2秒落ちの3.4秒という0-100km/h加速スペックを見る限り、性能差はほとんどない。最高速度は325km/h。
面白いのはリアウィンドウで、オープン時とクローズド時とでは、異なる高さで停止するようになっている。開けたときは、少し上まで上がって乱流の発生を抑えるという。
それ以外にも、パッセンジャーのちょうど肩口後ろあたりに小さなウインドディフレクターが備わっているなど、オープン時の風の巻き込み対策も万全。実際、マイアミの街中クルージングからハイウェイ走行まで、オープンで走ってもずっと快適でいられた。
V10サウンドを浴びながら走る贅沢
パフォーマンスは、相変わらず、刺激的だ。よくできた4WDシステムとDCTミッションのおかげで、610psの自然吸気という、ライバルターボ勢に見劣りするエンジンスペックながら、クーペと遜色のない加速パフォーマンスをみせた。しかも、乗り心地はいたって快適で、前アシの応答性も常に確かで手応えよく、すがすがしいほどに“デイリーユースフル”なスーパーカーだ。
そして、何よりもうれしいのは、そのV10自然吸気サウンドを、めいっぱい、浴びるように楽しめること。クローズド状態で垂直のリアウィンドウのみを下げてもコックピット内には迫力のV10サウンドが侵入してくるが、やっぱりフルオープン状態にはかなわない。
音も立派なエネルギー消費であるから、この時代、盛大なエンジンサウンドを運転しながら浴びるように聞くなどということは、贅沢(ぜいたく)きわまりない話だろう。しかもそれが、クルマ運転好きの心を大いに奮わせる、V8やV12とはまた別種の、独特で重層的な官能サウンドだったとしたら? 近ごろのオープン・スーパーカーブームもさもあらん、というわけだ。
前出の開発責任者、マウリツィオは、例のディナーの席でこう宣言した。「オレの目の黒いうちは、スポーツカーには自然吸気エンジンだ」。ランボルギーニ大躍進の中心を担った3人のうち、残ったなじみの一人が、いつまでもサンターガタにいてくれることを、切に願う次第である。
(文=西川 淳/写真=アウトモビリ・ランボルギーニ)
テスト車のデータ
ランボルギーニ・ウラカンLP610-4スパイダー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4459×1924×1180mm
ホイールベース:2620mm
車重:1542kg(乾燥重量)
駆動方式:4WD
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:610ps(449kW)/8250rpm
最大トルク:57.1kgm(560Nm)/6500rpm
タイヤ:(前)245/30R20/(後)305/30R20
燃費:12.3リッター/100km(約8.1km/リッター、欧州指令EC/1999/100準拠 複合燃料消費率)
価格:3267万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。車両本体価格は日本市場でのもの。
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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