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第372回:「スバル360」などの名車にイッキ乗り!
スバルのクルマ作りの歴史を学ぶ(後編)

2016.10.14 エディターから一言 堀田 剛資
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配車スペースで記者を待ち受ける「スバル1000」。ここにきていよいよクラシックカーの洗礼を受けることに。
配車スペースで記者を待ち受ける「スバル1000」。ここにきていよいよクラシックカーの洗礼を受けることに。 拡大

富士重工業のクルマ作りの歴史を学ぶ“スバル歴史講座”で、「スバル360」や「スバル1000」といったヒストリックカーにイッキ乗り! 新型「インプレッサ」も含め、イベントで試乗した新旧スバル車のドライブフィールをリポートする。

「スバル1000」のインテリア。細身のステアリングホイールと横長の速度計のデザインに、時代を感じる。
「スバル1000」のインテリア。細身のステアリングホイールと横長の速度計のデザインに、時代を感じる。 拡大
ステアリングコラムから生えたシフトレバー。慣れればどうということもないのだろうが、フロアシフトとは全然違う操作方法……というか、操作方向に悪戦苦闘した。
ステアリングコラムから生えたシフトレバー。慣れればどうということもないのだろうが、フロアシフトとは全然違う操作方法……というか、操作方向に悪戦苦闘した。 拡大
エンジンルームの奥底にのぞく、インボードディスクブレーキ。スバルOBの大林眞悟氏いわく、「FF車なので奥行きのない水平対向エンジンを積みたい」→「幅があるので、当時主流のダブルウイッシュボーンサスペンションを使うとアームがホイール内のブレーキに干渉する」→「インボードブレーキを使おう」という理由で採用されたのだとか。
エンジンルームの奥底にのぞく、インボードディスクブレーキ。スバルOBの大林眞悟氏いわく、「FF車なので奥行きのない水平対向エンジンを積みたい」→「幅があるので、当時主流のダブルウイッシュボーンサスペンションを使うとアームがホイール内のブレーキに干渉する」→「インボードブレーキを使おう」という理由で採用されたのだとか。 拡大
後ろ下がりのスタイリングが特徴的な「スバル1000」のリアビュー。個人的にはかなりステキなデザインだと思うのだが、当時は不評だったそうな。
後ろ下がりのスタイリングが特徴的な「スバル1000」のリアビュー。個人的にはかなりステキなデザインだと思うのだが、当時は不評だったそうな。 拡大

コラムシフトに悪戦苦闘

(前編に戻る)

スバル車として初めて水平対向エンジンが搭載されたスバル1000。今日に続く、左右対称の駆動レイアウトを旨とするスバル車の祖ともいえるモデルです。

それはさておき、ドアを開けたらアラ不思議、センターコンソールにシフトレバーがありません。というか、そもそもセンターコンソールがありません。これは、コラムシフトというやつですね。フロントシートが左右独立式なので、いわゆる「ベンコラ」(ベンチシート&コラムシフト)とは違いますが……。いやはや困りました。私、コラムシフトのMTって運転したことがないのですよ。そのせいで試乗中はシフトポジションを間違えまくり。クラッチもストロークが異常に長いわりにミートポイントはずいぶん手前。なんじゃこりゃ。わけが分かんないよ!

かようにパワートレインについては四苦八苦させられたスバル1000でしたが、そのほかの点は、かなりしっかりしていた印象があります。ほっそーいステアリングホイールを右に左に振ってみると、大げさな応答遅れもなく、普通に車体が動いてくれます。デコボコ道でも上屋が強烈にゆすられるなんてことはなく、先ほど試乗した「レオーネ」(前編参照)と比べても、さほど時代を感じさせません。説明資料を広げると、ゼロスクラブのフロントサスペンションにインボードディスクブレーキと、マニアックな用語がズラリ。プロペラシャフトがないことによるフラットな前席のフロアといい、こりゃあ当時としては革新的なクルマだったに違いありません。先述の、いかにも時代を感じさせる(失礼!)シフトの操作方法とのギャップに、頭がくらくらします。

試乗後、展示エリアで「さぞすごいクルマだったんでしょうね……」と説明員にお話ししたところ、「でも整備が複雑でしょう? 特にインボードディスクブレーキ。ディーラーにはずいぶん文句を言われたらしいですよ。せめてドラムだったらよかったんでしょうけど」とのこと。なるほど。やはり自動車とは、プロダクト単体で評価をしてはいけないものなのだと反省いたしました。

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乗り心地のよさにビックリ

さて、いよいよ日本自動車界の大御所にして、本日の主役であるスバル360の登場です。
これまでとは違う前開きのドアを開け、人の家でもないのに「お邪魔します」と言って乗車した私に、「うむ、苦しゅうない」とスバル360が答えたかどうか。まあ無機物なので答えるはずはないのですが、実際、車内空間はちっとも苦しくありません。RRなので足元スペースはすっきりしており、例えば「ローバー・ミニ」のように窮屈な体育座り的着座姿勢をとる必要はありません。

シートは運転席と助手席が一体となっているので、同乗するスタッフにも腰を浮かせてもらってから、「よっこらせ」とスライド調整。着座位置を整えたら、現代のクルマと同じように床に生えたサイドブレーキを下ろし、いよいよ出発です。

うおお。軽い! クルマが軽い! 360ccの2ストローク空冷2気筒エンジンは予想していたよりずっとパワフルで扱いやすく(あくまで“予想していたより”ですが)、軽いボディーをとっとこ前に進ませます。シフトレバーは床から生えた普通のHゲート。奥へと踏み込むのではなく、足首で床へと踏んづけるように操作するクラッチには難儀しましたが、それ以外、特に気難しいところはありません。

そして何より、乗り心地がいい! 試乗した4台のなかで、一番いいのではないでしょうか? 柔らかな乗り味で、商品性能評価路のデコボコ道を軽やかにいなして走ります。コーナリングも、“クルマなり”な速度で走っていれば至って自然。ブレーキは恐ろしく利きませんが(笑)、それ以外に戸惑ったり、違和感を覚えたりする点はありませんでした。

さて、このセクションで最後に試乗した「アルシオーネ」ですが……。申し訳ありません。直前に試乗したスバル360に感動しすぎて、あまり記憶がありません。だって、これまでの3台と比べたら、もうすっかり現代のクルマじゃないですか。オートマだし、シートベルトに自動巻き上げ機能は付いているし。「サスペンションがヘタっている」ということで、デコボコ道ではややドシンバタンとしましたが、後は大排気量の水平対向6気筒がスムーズでトルクフルで、いいエンジンだなあと思った以外、特に気になった点はありませんでした。ごめんよ、アルシオーネ。

日本自動車史に燦然(さんぜん)と輝く小さな巨人こと「スバル360」。試乗車は2015年の「東京モーターショー60周年記念パレード拡大」で、吉永泰之社長が運転した個体そのものである。
日本自動車史に燦然(さんぜん)と輝く小さな巨人こと「スバル360」。試乗車は2015年の「東京モーターショー60周年記念パレード」で、吉永泰之社長が運転した個体そのものである。
「スバル360」のインテリア。外観から抱いていたイメージより、足元スペースはゆったりとしている。
「スバル360」のインテリア。外観から抱いていたイメージより、足元スペースはゆったりとしている。 拡大
クラッチペダルは床の方へペタンと踏んづけるようにして操作する。足首の角度で操作するような感覚で、慣れるまでは“半クラ”の操作に難儀した。
クラッチペダルは床の方へペタンと踏んづけるようにして操作する。足首の角度で操作するような感覚で、慣れるまでは“半クラ”の操作に難儀した。 拡大
試乗車は1968年製とのことで、恐らくは最高出力が25psに高められたモデル末期の個体と思われる。それ以前のモデルは高性能版の「SS」を除くと最高出力が20psなので、もっと非力だっただろう。
試乗車は1968年製とのことで、恐らくは最高出力が25psに高められたモデル末期の個体と思われる。それ以前のモデルは高性能版の「SS」を除くと最高出力が20psなので、もっと非力だっただろう。 拡大
最後に試乗した「アルシオーネ」。直前に乗っていたのが「スバル360」だけに、そのギャップにビックリ。普通に、現代のクルマである。スムーズでトルクフルな2.7リッター水平対向6気筒エンジンが好印象だった。
最後に試乗した「アルシオーネ」。直前に乗っていたのが「スバル360」だけに、そのギャップにビックリ。普通に、現代のクルマである。スムーズでトルクフルな2.7リッター水平対向6気筒エンジンが好印象だった。 拡大

“旧型”にしてしまうのがもったいない

当日はこのほかにも、プラットフォームの進化を体感するための新旧モデルの比較も行われました。用意されたのは「レオーネ ツーリングワゴンGT」(1984年)、「レガシィGTセダン」(1989年)、従来型インプレッサ、そして新型インプレッサの4台。それぞれ、スバルにとって第2世代、第3世代、「SIシャシー」と呼ばれる第4世代、そして「スバルグローバルアーキテクチャー」こと第5世代のシャシーが使われたモデルです。

乗った感じとしては、初代レガシィは運動性能はともかく、ステアリングフィールが乏しく、また(これは経年劣化の分を差し引かないといけないのでしょうが)、ボディーから感じられる“守られ感”の希薄さ、および荒れた路面でのバタつき、盛大なギシギシに冷や汗をかきました。偉そうな表現で大変恐縮ですが、高い動的性能に動的質感が追いついていない、といった感じです。

一方で「え、こんなにいいクルマだったっけ?」と驚かされたのが従来型インプレッサ。特に荒れた路面での乗り心地が素晴らしく、「フルモデルチェンジしちゃうの、もったいなくない?」と勝手に心配するほどでした。

これに対して新型インプレッサはというと、しっかり感が一枚上乗せされた感じ。荒れた路面では従来型よりむしろ新型の方が“路面に正直”な気がしますが、普通の舗装路を走っているときのザラザラ感のなさは、こちらが上手。ウエット路……というか水たまりに突っ込んだときの水音も、こちらの方が遠くに聞こえる気がしました。

プラットフォームの比較で最初に試乗した「レガシィGTセダン」。200psのターボエンジンを搭載したスポーツセダンである。
プラットフォームの比較で最初に試乗した「レガシィGTセダン」。200psのターボエンジンを搭載したスポーツセダンである。 拡大
走らせてみると、スラロームでの身のこなしなどに不満はなかったが、操舵フィールにやや希薄さを覚えた。ただ、装着タイヤがかなり古いものだったので、その点は差し引かなければいけないかもしれない。
走らせてみると、スラロームでの身のこなしなどに不満はなかったが、操舵フィールにやや希薄さを覚えた。ただ、装着タイヤがかなり古いものだったので、その点は差し引かなければいけないかもしれない。 拡大
久々に試乗して、「こんなに乗り心地のいいクルマだったっけ?」とビックリした従来型「インプレッサ」。
久々に試乗して、「こんなに乗り心地のいいクルマだったっけ?」とビックリした従来型「インプレッサ」。 拡大

シャシーの進化に思いをはせる

また、これはプラットフォームではなく動力系のお話なのですが、エンジンが低回転域から力強かったのが好印象。従来型の感覚を引きずったままアクセルを踏んでいたら、ややスピードが出過ぎて戸惑いましたが、慣れればこちらの方が車速の管理がしやすいのは間違いありません。また、ちょっとした踏み込みに対するレスポンスもいいので、先述のシッカリしたシャシーとも相まって、スラロームが非常にやりやすかったのも印象に残りました。

最後に試乗したレオーネについては……。これは多くを語りますまい。このクルマは、むしろ先ほどのセクションで試乗したヒストリックカー群に属するクルマです。悪路でのギシギシに耐えかねてスピードを落としてしまったのはもちろん、ドライバーのヘッポコぶりとも相まって、スラロームでコーンを1本素通りする羽目になったのも致し方ないことでしょう。

もっとも、前項のスバル360のインプレッションでも同様の表現を使いましたが、このクルマだって“クルマなり”な速度で走ればなんの問題もないはず。プラットフォームの進化とはすなわち、より幅広い速度域で、より乗員がリラックスして走れるようになることなのでしょう。いやはや、得がたい経験でした。

(文=webCG ほった/写真=富士重工業、webCG)
 

プラットフォームの比較試乗に用意されていた新旧4台のスバル車。右奥に並んでいるのが、新型「インプレッサ」だ。
プラットフォームの比較試乗に用意されていた新旧4台のスバル車。右奥に並んでいるのが、新型「インプレッサ」だ。 拡大
最後に試乗した「レオーネ ツーリングワゴンGT」。1984年のクルマでありながら、デジタルメーターや車高調整機構付きのエアサスペンションが備わっていた。ぜいたくなクルマだったのだ。
最後に試乗した「レオーネ ツーリングワゴンGT」。1984年のクルマでありながら、デジタルメーターや車高調整機構付きのエアサスペンションが備わっていた。ぜいたくなクルマだったのだ。 拡大
構内のコースを行く「スバル360」。
構内のコースを行く「スバル360」。 拡大
堀田 剛資

堀田 剛資

猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。

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