フォルクスワーゲン・ザ・ビートルR-Line (FF/7AT)
ワイルドなヤツ 2016.11.09 試乗記 フォルクスワーゲンのブランドアイコンモデル「ザ・ビートル」に新グレードの「ザ・ビートル R-Line」が追加された。限定車以外では始めて、ブルーモーションテクノロジーを採用した1.4リッターTSIエンジンを搭載し、燃費も上々。では、一番“おいしい”ポイントは? 他グレードとの比較を試みた。やる気満々の黒縁ルックス
先日、『webCG』でザ・ビートルの試乗記をお届けしたが、この時、新設されたR-Lineグレードにも短時間試乗した。従来ザ・ビートルには安い順に「ベース」「デザイン」「2.0 R-Line」(旧「ターボ」)の3グレードがあった。これにデザインと2.0 R-Lineの中間に位置するR-Lineが加わった。ベースとデザインが1.2リッターエンジンを、2.0 R-Lineが2リッターエンジンを搭載するのに対し、R-Lineは1.4リッターエンジン(いずれもターボ付き)を搭載する。
R-Lineはその他のザ・ビートルとは見た目が少し違う。フロントバンパーにクロームストリップがあしらわれ、リアに黒塗装のディフューザーやスポイラーが装着されるほか、サイドスカートやホイールハウスの縁も黒く塗装される。早い話がフロントからリアまで、クルマの下がぐるりと黒く塗装されているのだ。この黒い縁取りは今夏国内500台限定で発売された「ザ・ビートル デューン」と同じやり方だ。エンジンも同じ。ただしあっちはアウトドアの雰囲気を出すために車高が15mm上がっているが、R-Lineはノーマルのまま。デューンのほうが先に日本に導入されたが、要するにデューンのベースとなったのがR-Lineなのだろう。
黒い皿に盛られたカラシといった風情のザ・ビートルR-Line。単色の普通グレードよりもワイルドさを感じさせる。同じ1.4リッターでも「ゴルフTSIハイライン」のエンジンよりも最高出力が10ps高い150psのエンジン(「パサート」と同じ)は、ザ・ビートルのベースとデザイン用の1.2リッターエンジンに比べ、決定的に優れているというわけではないが、やはり全域で余裕がある。同じ速度に達するのにアクセルを踏み込む量が少なくて済むという印象だ。
先代の「ニュービートル」は、「オリジナルビートル」のリバイバルとして登場したこともあり、ビートルらしさを強調するためにデフォルメが強く、かわいらしかったが、大人が乗るのは気恥ずかしいと思わせた(あくまで私の印象)。だが現行のザ・ビートルは、なにかこうシュッとしたデザインで、大人というかオジサンの僕にも、乗りたいなと思わせる。
では自分が買うならいったいどのグレードを選ぶか考えてみよう。その結果、まず2.0 R-Lineは特別速いが、当然のことながら最も高い。ザ・ビートルで峠を攻めるというのも少し違うし(実際に峠を走らせたらけっこう楽しいとは思うが)、頑張ってローンを組んで最上級グレードを買うというイメージのクルマでもない。残る3グレードのうち、R-Lineの黒縁のルックスはやる気満々という感じがしてさほどそそられない。今回の主役を早々に候補から落として申しわけないが、ザ・ビートルに乗るならノーマルにさらっと乗りたいのだ。エンジンも1.2リッターで十分よく走る。
残ったベースかデザインでは非常に迷った。デザインだけに標準装備される主な装備を比較すると、コーナリングライト不要、オートライトは欲しいけど我慢できる、フォグランプ不要、自動防眩ルームミラー不要、キーレスアクセスはぎり我慢可能、コンフォートシートはうらやましいがスタンダードでもぎりOK。問題はホイールがアルミか鉄のキャップ付きという違いだが、むしろ鉄でキャップも取ってしまうという手法で乗り切れる。というわけで、ベースで余った資金は旅行でも、という結論に達した。ただし、ベースだとザ・ビートルに用意される全8色のうち4色しか選べず、新色のストーンウォッシュドブルーメタリックをはじめ魅力的な色を封じられるという落とし穴があったのだが、とはいえ白、黒、赤、青も悪くない。
(文=塩見 智/写真=池之平昌信/編集=大久保史子)
【スペック】
全長×全幅×全高=4285×1825×1495mm/ホイールベース=2535mm/車重=1340g/駆動方式=FF/エンジン=1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(150ps/5000-6000rpm、25.5kgm/1500-3500rpm)/トランスミッション=7段AT/燃費=18.3km/リッター/価格=294万5000円
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塩見 智
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