レクサスLC500hプロトタイプ(FR/CVT)/LC500プロトタイプ(FR/10AT)
新境地か 古典的魅力か 2016.12.09 試乗記 レクサスの新たなラグジュアリークーペ「LC」シリーズにスペインで試乗。新世代のハイブリッドシステムを搭載した「LC500h」と、5リッターV8エンジンを搭載した「LC500」には、それぞれにまったく異なる魅力が宿っていた。 拡大 |
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清涼なハイブリッド、刺激的なV8
スペインはセビリアにて開催された待望の試乗会。ヨーロッパらしい荒れた市街地から、交通量の少ない高速道路、ぬれた郊外ワインディングロード、そしてサーキットまでを走って新型クーペから筆者が感じ取ったのは、「他にはないライドテイスト」という、レクサスの新たな価値であった。
筆者が、レクサスが実現すべき世界観にマッチしていると思ったのは、ダンゼンにLC500hのほうだ。
新開発マルチステージハイブリッドシステムが提供するドライブフィールは、これまでのどのハイブリッドカーともまるで異なるうえに、欧州のメジャーブランドに伍(ご)するドライバビリティーとパフォーマンスも兼ね備えている。さらに、「問答無用に楽しい」とか「痺(しび)れるほどに官能的」といった、海外のメジャーブランドの得意とするテーマにあえて軸足をおかず、異質のライドテイストを実現していた。
それは、例えば透明感や清涼感といった修飾語で表現すべき、まったく新しい乗り味だ。加速フィールはどこまでもリニアで右足に忠実。「スポーツ+」モードで心地よく、良い加減で腹に響くサウンドがうれしい。ハンドリングは、極めて素直、真正直。重心は常に低く感じられ、Dレンジでの走りはいつなんどきもリズミカルで御しやすい。つまり、乗りやすい。それでいて、サーキットドライブも実に嫌みなく、コントローラブルでキレイにまとまる。汗ひとつ、かかせない。澄み切った水が奥深い井戸から誕生する。LC500hの味わいには奥の深い一本気があった。
対して、V8自然吸気のLC500は、まるで違うキャラの持ち主だ。もちろんLC500hよりも、聞くからに、そして、ひと踏みするからに、速い。マニュアル操作によるシフトダウンでは、ジャガーやマセラティを彷彿(ほうふつ)とさせるエキサイティングなノートを響き渡らせる。サーキット走行も、さらに楽しめた。
けれども、それがもう古くさい事態だ、とも言える。10段ATで新境地を開いたとはいうものの、LC500hに比べると、“借りてきた土俵”で戦っているクルマに思えてならない。その乗り味にレクサスらしいオリジナリティーは希薄。名うての欧州スポーツカーよりもいくらか安いからといって、認められるとは限らない。過去、いろんな日本車がそういう戦いをしてきた。
もっとも、個人的に今どちらが欲しいか、と問われれば、LC500のほうと答えてしまうから厄介だ。ハイブリッドモデルは、これからますます進化成熟するだろう。一方、大排気量マルチシリンダー自然吸気は、もうほとんど味わえる最終局面を迎えつつある、と思うからだ。
(文=西川 淳/写真=トヨタ自動車/編集=堀田剛資)
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【スペック】
LC500hプロトタイプ
全長×全幅×全高=4770×1920×1345mm/ホイールベース=2870mm/車重=1985kg/駆動方式=FR/エンジン=3.5リッターV6 DOHC 24バルブ(299ps/6600rpm、35.5kgm/4900rpm)/モーター=交流同期電動機(179ps、30.6kgm)/トランスミッション=CVT/燃費=--km/リッター/価格=--円
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LC500プロトタイプ
全長×全幅×全高=4770×1920×1345mm/ホイールベース=2870mm/車重=1935kg/駆動方式=FR/エンジン=5リッターV8 DOHC 32バルブ(477ps/7100rpm、55.0kgm/4800rpm)/トランスミッション=10AT/燃費=--km/リッター/価格=--円

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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