第25回:クルマ好きのど真ん中直球
2017.01.17 カーマニア人間国宝への道マニアックさが足りない!
「ランチア・デルタ1.6マルチジェット」(ディーゼル)なんつーマニアックなクルマにたどり着く前は、まっとうにマツダのスカイアクティブDも検討していた私なのだが、「CX-5」、「アテンザ」と続けて見送り。「アクセラ」も当初、ディーゼルの設定が300万円超えのグレードしかなく見送り。「デミオ」はデザインが今ひとつで見送り。「CX-3」はデザインも猛烈に良かったが、当初足まわりが跳ねまくり(現在は大幅に改良)、スカイアクティブD 1.5はシングルターボでタービンが回るまでのレスポンスがイマイチ(現在は大幅に改良)で見送り。CX-3は現在なら再検討の余地も十分アリのはずだが、再検討してもやっぱり見送るだろう。
なぜか?
ディープなカーマニアである私から見て、マツダのスカイアクティブD搭載モデルは、どれも最後の決め手に欠けるからだ。
具体的にはズバリ、マニアックさが足りない!
マツダのクルマ作りは、クルマ好きというニッチ層狙いで、カーマニアの評価が非常に高い。もちろん私もすばらしいと思っている。が、買うには至らない。
なぜならマツダは、「クルマ好きのど真ん中直球」ばかり投げているからだ! クルマ好き層狙いという段階ですでにニッチだが、マツダの狙いはそのニッチのど真ん中直球。ナックルボール狙いの私のストライクゾーンには今ひとつ入ってこない。
狙うは極北
例えば、先般のマイナーチェンジでスカイアクティブD 1.5とGベクタリングコントロールが投入された「アクセラスポーツ」。実にいいクルマだった。エンジンは適度なトルクとレスポンスを発揮して極めて実用的(≒牛丼的)だし、Gベクタリングコントロールは私好みのステアリングのシャープさをもたらしてくれていた。ほとんどまったく文句のつけようがないほどイイ! これで値段は230万円から。スバラシイじゃないか!
でも、あまりにもまっとうで、ディープなマニアには物足りなかった。なにかもうちょっとヘンテコなところが欲しかった! 「AZ-1」みたいな。それはムリですかね? ムリですねハイ。
いま、「オマエなんか相手にしてられっかよ~」という空耳が。
ですよね。まったくその通りです。私がよろこんで買うようなクルマを作るようじゃマツダもおしまいです! マツダは今のままでいい! そのまま我が道を往ってください!
ちなみに、そんなニッチ中のニッチである私が「アクア」や「シエンタ」の新車を買ったのは(注:ともにすでに売却)、どっちもカーマニアが好みそうな雰囲気がゼロだからです。
ゼロとはすなわち極北。マニアに極北があるように、パンピーにも極北がある。その両極を押さえるべく、アクアやシエンタを発表直後に新車でオーダーしたのだ。アクアなんか、予約開始日にディーラーの前に並んだからね。並んだのオレひとりだったけど。
目指すはカーマニア人間国宝!
だってさ、私がアクアやシエンタに乗ってると、みんなビックリしてくれるんだもん! 「どうしたんですかコレ?」って。「買ったんですよ」って言うと「ええええっっっっ!」って。驚いてくれるって、やっぱりすごいことでしょ? マニアがマニアを驚かせるのって大変だから。ランチア・デルタ1.6マルチジェットくらいマニアックじゃないと驚いてもらえない。
あるいは4年半前、「フェラーリ458イタリア」を買った時とか。あの時はみんな驚いてくれたなぁ。「まさか……」「すごすぎます!」「非富裕層として恐らく世界初の快挙でしょう」とかって。
でもね、アクアやシエンタを買った時も、同じくらい驚いてくれたんだよ! マジで! わかるこの感覚? 別に驚かせるためだけにアクアやシエンタを買ったわけじゃなく、買う価値があると思ったから買ったんだけど、マニア中のマニアがあえて大衆の海のど真ん中に飛び込むというのはある種の荒行で、尊敬されるんですよ! 尊敬されたいんだよオレ! なにせカーマニア人間国宝を目指してるし!
そんな私が「アクセラ15XD」を買ったとしよう。おそらく誰ひとり驚いてくれない。「普段の足としていい選択ですね~」とかそんな反応が待っているはず。それってつまんないじゃん!?
カーマニアにとってクルマ選びは最大の自己表現。そこでいかにもな選択をするのはいかがなものか。もちろん自分が満足できりゃなんだっていいんだけど、アクセラスポーツ15XDではまっとうすぎて、どこかココロの飢えを感じてしまうだろう。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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