第395回:レクサスならではの価値の創造を目指して
新型「LS」のチーフエンジニアにインタビュー
2017.01.22
エディターから一言
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通算5代目に当たる新型「レクサスLS」が、2017年のデトロイトモーターショーで発表された。新世代のFR車用プラットフォーム「GA-L(グローバル・アーキテクチャー・フォー・ラグジュアリー・ビークル)」を採用し、デザインから走行性能まで全方位的に進化した新型LSに込められた思いを、開発を担当した旭 利夫チーフエンジニアに聞いた。
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「初代を超えるインパクトを持ったLSを作ろう」
実に11年ぶりのフルモデルチェンジとなるレクサスのフラッグシップサルーン、LS。5代目の開発を担当した旭 利夫チーフエンジニアにまず尋ねたのは、その開発の時系列的な経緯だった。
旭チーフエンジニア(以下、旭):開発をスタートしたのは2012年。もちろん、それ以前にも模索はありましたが、正式にゴーが出たのはその頃です。
――4代目の登場が06年ですから、通常のスケジュールであれば、5代目の開発も佳境かというタイミングですよね。
旭:リーマンショックをはじめ、さまざまな外的環境の変化もありました。でも一番大きかったのは社長(豊田章男レクサスインターナショナルCBO<チーフ・ブランディング・オフィサー>)の意向でしょうね。時程ありきではなく、とにかく初代を超えるインパクトを持ったLSを作ろうという。
――GA-Lプラットフォームの開発スケジュールとリンクしていたわけではないのですか?
旭:それを待ち受けていたわけではないのですが、結果的にアーキテクチャーの刷新ともタイミングが重なった。であれば、同時に進行するのが筋だろうと。
――開発で一番時間が掛かったのはどの工程ですか?
旭:立ち上がり時の商品企画とデザインの決定にはほぼ2年を費やしています。これはわれわれの開発スケジュールにおいては相当長い時間といえます。その後の実質的な開発は3年半近く掛かりました。特にデザインに関しては、7つのデザインモックアップから絞り込み、最終段階でも2つのフルモックアップを作って検討しましたね。
レクサスならではの価値を醸成
――初期段階にそこまで費やすことになった理由は何ですか?
旭:時勢的な動向を見極めていたというよりも、むしろレクサスのフューチャーチャプターとして必要なものは何なのかという議論と意思疎通のための時間ですね。エモーショナル&エキサイティングみたいなところは既に前段階でも意識していたことですが、ジャーマンスリーと並んで見てもらえるようになっても、超えることはできない。であれば、退くのではなく、より強固にそこを推し進めることでレクサスならではの絶対的な価値を醸成して、お客さまに進んで選んでいただけるような存在になるべきだと。それを「LC」とLSのローンチをもって、具体的に示すべきだということになりました。
――その趣旨は非常によくわかりますし賛同できるところですが、話がLSとなると特に日本では多くの法人ユーザーがショーファードリブンに使っているという現実もあります。
旭:そこはもちろん意識しています。が、意識するが余り、中途半端なものになっては元も子もない。救いになったのは法人ユーザーの意向の大半が、現行型と同等のユーティリティーを確保できるならカッコいいに越したことはないという話になったことです。
――新型は従来でいうところのロング相当で車寸が一本化されました。
旭:デザイン、ユーティリティー、過去の販売動向等を勘案しての判断です。ホイールベースは現行のロングより35mm伸びていますが、新型では前輪の切れ角を拡大し、DRS(ダイナミック・リア・ステアリング)を採用することで従来と同等の小回り性能を確保しています。あと、これは感覚的な評価になりますが、GA-Lの採用により重心や視界が大きく変わったことで、取り回しは本当に軽くなりました。体感的には「GS」と大差ないと思っていただける、そのくらい変わっています。
ハイブリッドや4WDも用意
――キャビンはトラディショナルな6ライトを初めて採用していますが、非常にクリーンに仕上がっています。グリーンハウスの生産精度などは苦労されそうですね。
旭:6ライトを採用した最大の理由は乗降性です。後ろドアの後端を短くできれば、狭い場所でも大きく開くことができますから。ただしデザインとの調和はマストでしたから、サッシュドアでありながらガラス面をピラーと面一化するフィニッシュとしました。ウィンドウとサッシュの段差は通常7mmですが、新しいLSでは3mmまで詰めています。新しいLSにはこの他にも今までとはまったく異なる生産技術を要するディテールが多くあるのですが、そこは田原工場が新たなトライとして頑張ってくれています。
――サスペンション形式やジオメトリーは基本的にLCと違いはありませんか?
旭:基本的には同じです。が、あくまで基本的であって、バネやショックアブソーバー、スタビライザーやブッシュともろもろの構成はまったく違います。足まわりの設定は基本的に仕向け地別はなくワンスペックで考えていますが、米国ではコイルスプリングの仕様もニーズがあるので、エアと併売する予定です。
――パワートレイン面では今回、初出となる3.5リッターV6直噴ツインターボのみの発表となりましたが、当然ハイブリッドもあるわけですよね。
旭:もちろん予定しています。そしてこれはアナウンスしていませんが、どちらも4WDは用意しています。仕向け地によってラインナップは変わるかもしれませんが、北米市場はもう四駆はマストですからね。
先進運転支援システムで巻き返しを図る
――現行LSではライバルに対して、特にADAS(先進運転支援システム)系の装備の脆弱(ぜいじゃく)さが目立っているのが現状です。
旭:そこはわれわれも十分認識していまして、新しいLSで一気に巻き返すつもりです。今回は発表内容以上のことはお教えできませんが、ADAS系に関してはいくつか隠し玉を持っています。それは発売までの間、どこかのタイミングでお伝えできるでしょう。あと、HUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)に関しても今回は大きなトライをしています。
――開発途上では国土交通省がサイドミラーのカメラ化を認可するという発表がありました。
旭:あれはわれわれが想定していたよりも早いタイミングだったので、実はちょっと驚きました。もちろん開発は着手していますし、内装はそれに対応できるような設計にしてあります。ただし、性能に万全を期すには検証が足りないということで、今回は採用を見送りました。
――LCの試乗経験から推するに、スポーティーなキャラクターであることには十分期待が持てますが、一方でLSは低中速域での乗り心地や静粛性といったコンフォートファクターが以前からの伝統として強く求められると思います。
旭:GA-Lの採用で、イニシャルの動的特性は一気に向上しました。その伸びしろを可能な限り生かしつつ、快適性は少なくとも現行型に比肩するところに置くというのが開発のイメージでしょうか。現在、発売に向けての細かな煮詰めを総力でやっているところですので、発表の折にはぜひ販売店で新しいレクサスの世界をご体験いただければと思います。
(インタビューとまとめ=渡辺敏史/写真=レクサスインターナショナル/編集=竹下元太郎)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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