アバルト124スパイダー(FR/6AT)
アメリカンなイタリアン 2017.02.13 試乗記 コアなファンから熱狂的な支持を得ている「アバルト124スパイダー」。でも輸入元は、MTモデルばかりが注目されることに少々悩んでいるらしい。そこで今回は、不遇をかこつ(?)ATモデルに試乗。スポーツカーとしての出来栄えを確かめた。 拡大 |
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ATで乗るのが楽しい贅沢カー
アバルトの販売が好調だという。2016年の販売台数は2240台に達した。昨年7月からディーラー体制がフィアットと統合され、多くの人々の目に触れるようになったことがプラスに働いたのだろう。もちろん、最大の要因は124スパイダーがラインナップに加わったことだ。「マツダ・ロードスター」がベースになっているとはいえ、エンジンもスタイリングもまったく異なるイタリアンカーとして熱狂的な支持を得た。
ただ、FCA的には少々物足りないところがあるらしい。MTモデルばかりがもてはやされて、ATモデルの販売が伸び悩んでいるのだ。ユーザーの多くは男性で、サソリの毒がどうしたとかいう文言に弱いコアなファンである。アバルトはMTでなきゃ、とガンコに思い込んでいるに違いない。しかし、ライトな層に食い込んで販売成績を伸ばすには、AT版を売っていくことが必須になる。
正直なところ、せっかく初めて124スパイダーに乗れるのにATか……という気持ちがあったことは否定できない。しかし、乗ってみたらとんだ心得違いだったと気づいた。ATスパイダーはとてもいい。コンベンショナルな6段ATは、このクルマのキャラクターに打ってつけのトランスミッションだった。
ロードスターは、MTで乗るほうが楽しかった。1.5リッターエンジンはパワフルとは言えず、ダイレクトなシフトフィールを感じながら軽快に走らせるクルマだ。124スパイダーは違う。フィアットご自慢のマルチエアエンジンは、1.4リッターながらインタークーラー付きターボの力を借りて170psの最高出力を絞り出す。回転を上げていくと、はっきりと過給が効いてくるのがわかる。古典的なドラマ性が魅力のエンジンだ。
オープンにしていても風の巻き込みは少なく、強力なエアコンとシートヒーターのおかげで乗員はぬくぬくと過ごせる。寒風の中で高速道路を走っても、車内は快適な空間だ。実用性は高くない。トランクは超狭くて、2人で1泊旅行にいくのもつらいレベルだ。まあ、あまり役には立たないクルマだ。ひたすら気持ちいいだけ。つまり、究極の贅沢(ぜいたく)カーである。パッとホロを下ろし、アクセルをひと踏み。「気持ちイ~!」と叫んで帰ってくるという使い方がふさわしい。忙しくギアチェンジしていては感興が削(そ)がれてしまう。
スパイダーという名前が、クルマの性格を的確に表している。ロードスターというとどうもスポーツっぽい響きがあり、走り屋青年が好む感じだ。カブリオレはフランスかぶれのオシャレさんで、コンバーチブルは説明的だ。スパイダーは英語のクモである。イタリア人はああ見えてアメリカのことが大好きだ。アメリカ文化がカッコいいと思っている。クーペのこともスプリントなんて呼んでいるわけで、オープンカーを英語でクモになぞらえるのもカッコつけのつもりなのだろう。
スパイダーはイタリア人好みのアメリカ風味がまぶされたクルマなのだ。おおらかに乗り、シャレのめして走ろう。124スパイダーは米伊のクルマメーカーが一緒になったFCAから生まれた。アメリカンなイタリアンは、日本人にとってもすてきなクルマだ。
(文=鈴木真人/写真=FCAジャパン/編集=近藤 俊)
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【スペック】
全長×全幅×全高=4060×1740×1240mm/ホイールベース=2310mm/車重=1150kg/駆動方式=FR/エンジン=1.4リッター直4 SOHC 16バルブ ターボ(170ps/5500rpm、25.5kgm/2500rpm)/トランスミッション=6AT/燃費=12.0km/リッター/価格=399万6000円

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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