第12回:素晴らしい音楽が欲しいんだ
2017.03.23 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして 拡大 |
豪快なアメ車といえばカスタムやらドレスアップやらのド定番。webCGほったの「ダッジ・バイパー」にも、そこかしこに過去のこん跡が残されているのである……。今回はそんな、バイパーに宿る“思い出のメモリー”と、オーディオ交換にまつわるお話を紹介させていただく。ひと月近くも間を空けてゴメンね!
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思わずヒザから崩れました
東京・武蔵野のわが家にバイパーがやって来てはや5カ月。おかげさまで、最近になってようやく一通りの操作方法が分かるようになってきた。
なにせ、購入当初は運転するだけで必死。ステアリングのチルトの仕方や、メーター照度の調整方法すら分からなかったのだ。過日の取材でワタナベ女史にエラそうに講釈を垂れていた記者だが、実はランバーサポートの空気の抜き方などは、いまだに解明できていなかったりする。
まあ、それらについては最悪の場合、英語のトリセツを読み込みさえすればいい。問題はトリセツにも載っていないもの。すなわち、過去のオーナーが追加した後付けの装備類である。
本ページの写真(証拠写真A)をご覧いただきたい。質感の違いからして後付け品と推察されるこちらのボタンだが、何度ポチポチしてもなにかが動く気配はナシ。灯火類だと目星はついているのだが、クルマの前にも後ろにも、後付けとおぼしきランプは見当たらない。このボタンの存在は、長きにわたり記者を悩ませるナゾだった。
しかし先日、ついにワタクシはその正体を知ってしまった。某日夜、天文台通りの魁力屋に向かう道中において、空調をイジった際に偶然ボタンに手が触れたのだ。
■ついに判明! 「ダッジ・バイパー」のナゾ機能
フラッシュライト[名]《英:flash light》
車体に取り付けたランプ類を素早く点滅させる、自動車ドレスアップの手法。もしくはそのための用品。(同意語)ストロボ
……一応申し上げておくと、記者はノーマル原理主義者ではない。カスタムやドレスアップについても、webCGかいわいではむしろ寛容な方である。
しかし、いらねえ。
この機能はさすがにいらねえ……。
歴代オーナーの影を感じる……
正直取っ払ってしまってもいいのだけれど、ランプの位置や配線の取り回しなどを想像するに、それが大仕事になることは間違いない。お店に頼んでもいいけど、そのためだけに金を払うのも腹が立つ。仕方がないので、この機能については気づかなかったものと自分に言い聞かせよう。
うーん。これはなんのボタンだったかしら?
冗談はさておき、わがバイパーにまつわる過去オーナーのこん跡(?)は、先述のフラッシュライトだけではない。これまでに記者が見つけた遺留品の数々を紹介しよう。
(1)サングラス
ブルガリ製。天井の収納ネットの中から発見。
(2)タイヤマーカー
前オーナー氏はこれを使って、DIYでタイヤを“ホワイトレター”にしていたと思われる。リアバルクヘッドの中央に備わる、収納ネットから発見。
(3)うっすらとオレンジ色の手ぬぐい
元からこの色だったのか、旺盛な微生物の生命活動によるものなのかは不明。運転席の座席下より発見。
どうやら、記者がバイパーを購入した神奈川・川崎の某自動車屋さんは、メンテナンスや納車前整備には十分に力を注いでいたものの、“忘れもの”のチェックについてはそこそこテキトーだったようである。どうせなら札束の入った封筒とか、金の延べ棒とかを残しておいてほしかった。
クルマ本体に話を戻しても、タイヤやホイール、マフラー、シフトノブと、わがバイパーはさまざまな箇所にカスタムの跡が残されている。さすがに法規的にNGなところは直させてもらったが、依然として、webCGデスクの竹下風に言うところの、「歴代オーナーの残留思念が宿るクルマ」であることは間違いなかろう。まあ、気にならないからいいんですけどね。フラッシュライトを除けば。
……いや、気になるところがもうひとつあった。オーディオである。
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まわるまわるよ 時代はまわる
日本に来てから換装されたとおぼしきバイパーのヘッドユニットは、ソニーの「CDX-L410B」。発売は2003年4月というシロモノで、ラジオとCDを聞く以外にホントになにもできやしない。もちろんCDは1枚ごとに交換するタイプで、最初はこれが懐かしくって面白かったのだが、さすがに3日で飽きた。交換させていただく。
訪問したのはwebCG的に毎度おなじみ、安心と信頼のオートバックス代官山店である。早速バイパーに積めそうなヘッドユニットを探して店内をうろうろ。しかし、無い。というかオーディオを陳列したコーナーが見当たらない。当たり前みたいにナビが標準装備され、換装お断りな純正インフォテインメントシステムまで普及している昨今、「オーディオを交換したい」などと言ってやって来るやからは、記者ぐらいしかいないのかもしれない。
しばらく店内をうろつき、ようやく2階の隅にオーディオコーナーを発見。スタッフ氏にうかがったところ、バイパーに搭載できる1DINタイプのヘッドユニットは、現状2機種しか在庫がないとのことだった。いやはや時代であることよ……。ちなみに、銘柄はカロッツェリアとケンウッド。「あのダッシュボードに合うデザインは、こちらですかね」という店長橋本さんの審美眼に従い、前者の「カロッツェリアDEH-5300」を選択する。
ちなみに、いずれもAUX接続やBluetooth通信に対応していることは確認済みである。これでようやく、音楽再生無限ループ地獄ともオサラバさ。
配線はミステリー
もろもろの手続きを終えてクルマのキーを預けたら、オーディオピットでいよいよ作業スタートである。
まずは内装を傷つけないよう、マスキングテープやクッション、毛布などで周辺をガード。ダッシュボードもセンターコンソールもすでに小傷だらけだというのに、なんだか申し訳ない。次いでスタッフ氏の手によりセンターコンソールのパネルが慎重に外され、ダッシュボードから古いヘッドユニットが引き出される。
ずるりと出てきた配線に、スタッフ氏が苦笑いした。素人の記者にもわかる。やっかいな作業になりそうな気配がぷんぷんである。
配線を確認していたスタッフ氏が言った。
「このクルマ、右と左でスピーカーの配線が逆ですね」
「はい?」
「右用の配線が左のスピーカーに、左用の配線が右のスピーカーにつながっていますよ」
何ということか。どおりで『情熱の薔薇』から情熱が抜け落ち、『新しく光れ』にブルースが宿っていなかったわけである。
「……他にもおかしな場所はありますか?」
「イルミネーションの信号が取れていませんね。ソニーの『CDX-L410B』だと、必要になるはずなんですけど……」
OK、スタッフさん。このエッセイは前のオーナーさんも見ているかもしれないから、その話はここまでにしておこう。
まあしかし、そんな性根のねじくれたオーディオとも今日でおさらば。そう思えば、むしろ気持ちもすがすがしかろう、スガシカオ。
作業の様子に納得した記者は、いったんオーディオピットを離れ、店内の物色を再開した。これを機にバイパーの運転環境を近代化しておきたかったのだ。名づけて「バイパーIoT化計画」。
エラそうなプロジェクト名をつけておいてなんだけど、買うのはUSB充電器とクレードルだけ。通信設備なんぞ、携帯電話で十分である。
“自分頼み”は悲劇を招く
それにしても、タブレット端末にまつわる周辺機器コーナーの華やかなこと、にぎやかなこと。先ほどのオーディオ棚とはまさに雲泥の差で、あまりの商品の多さに、何を基準に選べばいいのか分からなくなる。
「クレードルは、やっぱり吸盤型かな」などと知ったかぶりつつ適当な商品に手を伸ばす記者を、橋本店長が見とがめる。
「バイパーのダッシュボード、奥行きはどのくらいありました?」
「そこそこありますよ」
「でもフロントウィンドウ、けっこう寝てましたよね。クレードルを置くスペースは大丈夫ですか?」
「……」
再び氏のアドバイスに従い、無事にエアコン取り付け型の商品を購入。読者諸兄姉におかれては、自身があまり詳しくない商品を買うときには、店員さんに相談することを強くオススメする。
意中の備品を手に入れ、半地下のオーディオピットにカム・バック。ちょうど新しいヘッドユニットを接続したスタッフ氏が、動作チェックをしているところだった。ラジオを受信したり、テスト用のCDを出し入れしたり、クルマのまわりをぐるぐる回り、各スピーカーから音が出ているかを確かめてまわったり……。
お恥ずかしながら告白させていただく。
ワタクシ、「しょせん1DINのオーディオ交換でしょう」と作業をナメてました。ダッシュボードに刺さっているだけにみえるヘッドユニットの交換が、まさかここまで手間のかかるものだとは。同時に、かつて自分がDIYでやった「ローバー・ミニ」のオーディオ交換が、いかにテキトーなものであったかを思い知った。なんだかもう、いろいろと申し訳ない。面目ない。
もろもろの機能が正常に作動しているのを確認し、ようやくヘッドユニットをダッシュボードに差し入れる。外したときと同じ慎重さでセンターコンソールをかぶせ、あらためて各機能の作動に問題がないかを確認。これでようやく作業終了である。
ブラボー。おおブラボー。スタッフ氏と思わず握手を交わしたくなった。
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ジドーシャって素晴らしい
お店にキーを預けて小1時間。生まれ変わったバイパーの姿(ダッシュボード周り)をご覧いただこう。代わり映えがしない? 当たり前である。オーディオが変わり、クレードルが付いただけなんだから。しかし記者は大満足。他誌の長期リポートなんかだと、ここから輝かしいカスタマイズ計画がスタートしたりするんでしょうが、ワタクシの場合はドレスアップにも最新ガジェットにも興味はないので、もうこれで十分である。
早速、わがへっぽこウォークマンをBluetoothで接続。「歩いていくよ サルのままで孤り」と歌う草野マサムネの声に、ハナの奥がツンとなった。
それが新しいヘッドユニットのせいか、配線がマトモになったからか、あるいはプラシーボ効果によるものか。なんであれ、今の自分が気持ちいいのだから今回のオーディオ交換は成功である。カスタマイゼーションは、自己満足と見つけたり。
かつて、わが心の師である竹中直人氏は、某お昼のご長寿番組で免許を取得した喜びをこう表していた。
「免許は本当にうれしかったですね。仕事が早く終わったら、運転して海に行けちゃうんだもん」
クルマの素晴らしさ、クルマを持つ喜びを余すところなく表した至言であろう。
ワタクシもぜひ、『月の爆撃機』でも聞きながら海に……。いや、海はやめておこう。バイパーと海は、どうにも相性が悪いから。
(webCG ほった)
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P.S.
今回お世話になったポディウム&オートバックス代官山店さんから、コラボキャンペーンのお誘いをいただきました。以下に詳細を記しますので、われらがホームグラウンド、代官山をご訪問の際には、ぜひ足を運んでみてください。

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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