第400回:510psのAMG GTで富士の本コースを激走!
メルセデスAMGでサーキットの走り方を学ぶ
2017.04.02
エディターから一言
拡大 |
豪快な高性能マシンを取りそろえたメルセデスのサブブランド「メルセデスAMG」。F1でも活躍を見せる同ブランドのドライビングセミナーが、富士スピードウェイで催された。イベントの内容を、実際に参加したwebCG編集部員がリポートする。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
今一番霊験あらたかなイベントかも……
突然だけど、日本人にとって、なんだかんだいって「メルセデス・ベンツ」って特別なブランドだと思いません? 「いきなり何言いだすんだコイツは」と思った方は、ぜひ身近な人に「高級輸入車の代名詞といえば?」と聞いてみてほしい。よほどの天邪鬼でなければ、たいていの人は「べ……ベンツ?」と答えるに違いない。ちなみに、編集部の関とわが家の両親は、そう答えました。
“グローサー”が御料車として使われていた戦前・戦後は別にしても、やっぱりメルセデスは輸入車としての歴史が長く、その時間が「高級車の代名詞」というイメージを日本に根付かせたのだろう。いやはや。ブランドを育てるというのは気が遠くなるようなお仕事なのである。
しかし、昨今プレミアムブランドが重視しているスポーツイメージについて問われると、こちらはどうにも印象がぼんやりな気がする。AMGという強烈なサブブランドはあるものの、メルセデス本体が国際格式のモータースポーツから距離を置いていた時期が長く、また本国のDTMを除くと、AMG名義でレースに参戦していた例も少なかったからだろう。
でも、そうしたちょっと古いメルセデスのイメージと、ここ数年の実情とがかけ離れているのも事実だ。「SLS AMG」「AMG GT」と、2代にわたりAMGのスポーツカーにGT3モデルを設定し、世のカスタマーレースを盛り上げてきたし、何よりF1でのあの活躍っぷりである。曲がりなりにもギョーカイで碌(ろく)を食(は)む人間が、3年連続でドライバーとコンストラクターのタイトルを独占しているメーカーに向かって「アナタ、モータースポーツのイメージがないよネ」などと言ったら、同業者に張り倒されるだろう。
以上。
壮大な前フリとなってしまったが、今回はそんな「実はサーキットも得意」なメルセデスAMGの、ドライビングアカデミーをリポートさせていただく。F1屈指の強豪が主催するサーキットセミナーである。2017年3月3日現在、もっとも霊験あらたかなイベントと言っても過言ではないだろう。
おもてなしに見るメルセデスの底力
そんな霊験あらたかなAMGのセミナーは、日本の霊峰、富士山の麓にある富士スピードウェイで催された。クラスは日帰りで基礎的なドライビングスキルを学ぶ「ベーシックトレーニング」と、1泊2日でみっちりサーキットを走りこむ「アドバンスドトレーニング」の2種類。記者はもちろん後者……ではなく、自身の腕を勘案してベーシックトレーニングを受講させていただいた。内容はフル加速&フル制動に、スキッドパッドでのスリップ体験、オートクロス(ジムカーナのようなもの)と多岐にわたり、プロドライバーの先導による本コースの走行も体験できる。個人的にはベーシックでも十分におなかいっぱいである。
ピットビルでの開会式&ドライバーズブリーフィングが済んだら、早速各コースでの講習がスタート。ちなみに、今回のイベントでは富士の本コースに加え、広大なP2駐車場、ドリフトコース、ショートサーキットなども会場として使われる。いやはや、スケールがでかい。
もうひとつ、記者が「へえ」と思ったのが、メルセデス側がプログラム用のクルマを用意していること。オーナーは自分のクルマで走る必要がないので、フル加速にフル制動、ウエット路面でのスリップ体験と、遠慮ナシにクルマを酷使できるというわけだ。
また、マイカーで走る必要がないのなら、わざわざ自走でサーキットまで来る必要もないわけで、会場には公共交通でやってくる参加者向けに御殿場駅と富士スピードウェイを結ぶバスも用意されていた。参加者の負担を少しでも減らそうという配慮なのだろう。さすがプレミアムブランドのイベント。OMOTENASHIができている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
いろいろな意味でクルマが気になる
記者がまず受講したのは、ウエット路面でのスリップ体験だった。ここでのお相手は「メルセデスAMG C63 Sクーペ」。その横滑り防止装置(ESP)には「ESP ON」「ESP SPORT Handling」「ESP OFF」の3つのモードが備わっており、わざとクルマを滑らせて、それぞれの利き方を体感するという内容だ。
まずはESP ONでコーナーに侵入し、インストラクターの合図でアクセルを踏み込む。通常はここでズリっと後輪が外へ滑り出すのだが、ESP ONだと即座に制御が介入。電子制御の恩恵で、クルマは無事にウエット路面を脱出できるというわけだ。これがESP SPORT Handlingだと、ズバっとリアが出てドライバーはカウンターステアを切らなければならない。そしてOFFだともうお手上げ。私ごときがどうあがこうと、クルマはその場でくるりんターンである。
いやはや。ESPのありがたみを思い知る貴重な体験であった……のだが、しがない恵比寿のリーマンとしては、ESPの利き以上にとにかくクルマが気になった。さらりと紹介したけれど、アナタ、車両本体価格1348万円(税込み)、最高出力510psのAMG C63 Sクーペでスリップ体験である。えらいこっちゃ。しかも、参加者のためにそれが5台も6台も供されていたのだから、豪気というかなんというか……。
次に体験したブレーキング関連のプログラムでも、貴重な体験に加えてやっぱりクルマが気になった。というのも、このプログラムはフル加速からのフル制動を何度も繰り返したり、制動中にハンドルを切って路上の危険物を回避したりという、クルマ的に非常にハードな内容だったからだ。しかし用意された「AMG C43 4MATIC」のセダンとクーペ、それに「AMG E43 4MTAIC」は、少なくとも記者の取材中は1台もトラブルを起こすことなく、また操作フィールに変化をきたすこともなく、プログラムを乗り切っていた。さすがは天下のメルセデス。安心と信頼の足まわりである。
ちなみに、ここで使用されたE43にはミシュランの「パイロットスポーツ4 S」が装着されていた。記者は存じ上げておらなんだが、実はこれ、ミシュランの最新フラッグシップタイヤなのだとか。このタイヤも、上述のタフネスぶりに貢献しているのかもしれない。
次は、いよいよ本コースでの走行である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
インストラクターに学ぶ“富士の走り方”
午後最初のプログラムである「リード&フォロー」では、インストラクターの先導のもと、富士の本コースでサーキットの走り方、そしてラインの取り方を学ぶ。
記者はこうした機会を得るたびに思うのだが、インストラクターって本当に運転がうまいですね(当たり前だ)。僭越(せんえつ)ながら、走行ラインが非常にきれいで、「100Rはムリにインベタしなくてもいいのね」「さすが。ムダにブレーキは踏まないのだな」と、とにかく勉強になった。
まあ、だからといってそれをすぐに実践できるわけではないのだが。何せワタクシ、数百m先を走るインストラクター氏の「ここから減速を始めてください」という無線に反応し、ブレーキングポイントのはるか手前でブレーキを踏んでしまうようなソコツ者である。後ろのクルマはいたく困惑したであろう。その節は、ご迷惑をおかけしました。
ちなみに、カルガモ走行とはいえ舞台は富士の本コース。クルマは最高出力367psの「AMG C43 4MATICクーペ/セダン」である。スピードの出ること出ること。1.5kmにおよぶストレートではアクセル全開で常に歯を食いしばっていた……のだが、記者は後に、この体験すらヌルいものだったと思い知ることになる。
C43による本コース走行の後は、P2駐車場での楽しいオートクロスである。供されたのは「AMG A45 4MATIC」「AMG CLA45 4MATIC」というコンパクトモデルで、小さなクルマをぶん回す気持ちよさと、タイムアップに没入する高揚感にどっぷり浸った。いやはや楽しい。超楽しい。余談だが、記者はAMGモデルのなかでは一番A45が好きである。クルマの魅力は馬力でも値札の額でもないことを教えてくれる、まこと下克上なAMGである。まあそれでも、720万円の高級車なんですけどね。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
わが人生の最高到達速度を更新
朝から続いたAMGドライビングアカデミーも、いよいよこれが最後のプログラム。インストラクター氏に先導されての本コース走行である。……とだけ書くと、「また?」とか「オイオイ、それはさっきやっただろう?」とか言われそうだが、今回は相方が違う。ピットレーンに居並ぶは、最高出力510psの本気のスポーツカー「AMG GT S」である。C43も素晴らしかったけど、もう、なんというかクルマの緊張感が違う。みなぎっておられる。
「1周目はスピードに慣れてもらう意味もこめて、少しゆっくり目で行きますね」と言いつつコースへ出ていくインストラクター氏だが、待って待って。十分速いですよ先生。それでもどうにか追っかけていけるのは、先生の優しさと、ツッコミ気味でコーナーに進入しても、ベッタリ路面に張り付いたままRを突き進んでいけるAMG GTであればこそ。横Gに対する強さというんでしょうか、その辺りがC43とは全然違う。そしてスポーツシートに押し付けられるわき腹が痛い。イテテテテ……。
もちろんだが、ストレートでのスピードの乗り方も別物。メーター……だったかヘッドアップディスプレイだったかはおぼえていないが……に表示される車速がぐんぐんと伸びていく。Panasonicの青いゲートをくぐったときの速度は、わが人生最高到達点の274km/h! そこからフルブレーキング。さしものAMG GTといえど、お尻がムズり、ドライバーは血の気がうせた。
やべえ、怖え、そしてたまらん(鼻息)。
驚かされるのは、クルマそのものの性能はもちろん、この車速でのサーキット走行を容認するメルセデスの懐の深さだろう。なにせ「ベーシックトレーニング」のプログラムで274km/hである。よほど自分のプロダクトに自信がなければできないですよ、これは。
かように、AMG GTで「これ以上はない!」という非日常を満喫した記者が顔を火照らせてピットレーンへと戻ると、サーキット走行に供されていた車両がずらりと並んでいた。思い起こせば、今日のプログラムのために何十台のAMG車が用意されていたのだろう? 全部足したら何馬力だよ?
いずれにせよ、さすがはメルセデスのセミナーである。陸の王者のサーキットイベントは、やはりこうでなければ。
(文=webCG ほった/写真=メルセデス・ベンツ日本、webCG ほった)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
-
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す 2026.3.3 電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。
-
第862回:北極圏の氷上コースでマクラーレンの走りを堪能 「Pure McLaren Arctic Experience」に参加して 2026.2.25 マクラーレンがフィンランド北部で「Pure McLaren Arctic Experience」を開催。ほかでは得られない、北極圏のドライビングエクスペリエンスならではの特別な体験とは? 氷上の広大な特設コースで、スーパースポーツ「アルトゥーラ」の秘めた実力に触れた。
-
第861回:冬道性能やいかに ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」を北の大地で試す 2026.2.18 2025年9月に日本ミシュランタイヤが発表した最新のオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」と「クロスクライメート3スポーツ」の冬道性能を確かめるために、北海道に飛んだ。ドライやウエット路面に続き、ウインターシーンでの印象を報告する。
-
第860回:ブリヂストンの設計基盤技術「エンライトン」を用いて進化 SUV向けタイヤ「アレンザLX200」を試す 2026.2.13 ブリヂストンのプレミアムSUV向けコンフォートタイヤ「アレンザLX100」の後継となるのが、2026年2月に発売された「アレンザLX200」。「エンライトン」と呼ばれる新たな設計基盤技術を用いて開発された最新タイヤの特徴を報告する。
-
第859回:トーヨーのSUV向け冬タイヤを北海道で試す! アナタのベストマッチはどれ?
2026.2.10 トーヨータイヤが擁するSUV向けの冬タイヤに、北海道で試乗! スタンダードなスタッドレスタイヤから「スノーフレークマーク」付きのオールテレインタイヤまで、個性豊かな4商品の実力に触れた。アナタのクルマにマッチする商品が、きっとある?
-
NEW
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
NEW
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。


















































