ロードスターアンバサダーが語る
初代「ロードスター」をマツダが自らレストアする理由とは?
2017.09.13
デイリーコラム
初代「ロードスター」の発売は28年前
2017年8月4日、自動車イベントの「オートモビル カウンシル」でマツダは、初代(NA型)「ロードスター」のレストアサービスを開始すると発表した。
初代ロードスターは1989年にデビュー。1998年に2代目の「NB」型へとバトンタッチするまで約10年にわたって販売された。デビューから今年で28年目を迎えるが、いまだにその人気は高く、中古車検索サイトなどをのぞくと、100万円を超える個体がゴロゴロと出てくるほど。デビュー当時の販売価格が170万円ほどだったことを考えると、驚きの高値安定ぶりである。
しかし、いくら人気車種であるとはいえ、マツダはあくまで新車の製造・販売を生業(なりわい)とする自動車メーカーである。それに、生産終了から19年を経たクルマのレストアでは、アフターマーケットのパイまで取っちゃえ! というほど収益の見込める事業とも思えない。
そこでマツダの広報部に質問してみた。
――NAロードスターのレストアプログラムについてお聞きしたいことがあるんですけど。具体的には、なぜ始めたのか知りたいんです。
マツダ広報部:それでしたら、当社に山本というものがおりますので、そちらにあたってみてください。
――もしかして山本さんって、あのNDロードスター開発主査にして、現ロードスターアンバサダーの山本修弘さんですか?
マツダ広報部:よくご存じですね。ではどうぞ。
思わぬビッグネームの登場に少々たじろいだが、こんなチャンスはそうそうあるものではない。筆者は思いのたけをぶつけてみた。
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希望するユーザーには新車当時の状態を提供
――ストレートにお聞きします。今回のレストアプロジェクトは、どのようなお考えのもとに始められたのでしょうか?
山本ロードスターアンバサダー(以下、山本):これはストレートですね。ではこちらもストレートに。このプロジェクトはオリジナルに戻すことを価値とし、多くのファンがいるNAロードスターをレストアすることで、古いクルマを文化的資産として大切にするような文化を日本に育むために始めました。お客さまに長く大切にマツダ車を乗り続けていただける環境づくりも目指しています。マツダにとってロードスターは、絶やすことなくつくり続けてきた大切なクルマです。お客さまとロードスター、お客さまとマツダとの絆を大切にしていきたいという思いを込めています。
――実際のレストアなんですが、例えばユーザーが「新車当時の状態に戻してほしい」と希望した場合にも、対応していただけるのでしょうか?
山本:ロードスターのファンミーティングに参加したときに、「古くなったロードスターをオリジナルに戻したい」という声をたくさんお聞きしていたんです。オリジナルのNAロードスターに戻し、乗り味を復元することを大きな価値としていますので、当然、希望されるお客さまには新車当時の状態を提供することを目指します。
――実際のレストアの内容は面談を経てということですが?
山本:面談をする理由は、単にクルマ(製品)を復元するだけでなく、お客さまとNAとの関係もちゃんと知っておきたいからです。車両のグレードや程度(事故歴、損傷など)により、すべての要望にお応えできるとは限りませんが、今後設定する予定の、レストアの基本メニューをベースに、個別に判断していきたいと思っております。
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アンバサダーおすすめのレストアポイントは?
――なるほど、レストアの内容は個別に対応していただけるんですね。では、「ここを替えるとすごい!」とか「これはぜひ!」といった、山本さんのおすすめレストアポイントといいますか、“盛り付け例”を教えてください。
山本:当時の乗り味を再現するために、ブリヂストンさんのサポートを得て新車装着タイヤだった「SF325」を復刻することができました。実はNAの開発当時のシャシーエンジニアが、マツダにもブリヂストンさんにもいるんですよ。そんなエンジニアがチューニングを行ったタイヤをぜひ味わっていただきたいですね。また、幌(ほろ)もリアスクリーンだけを開けられる、いわゆる“NA開け”ができる構造にこだわって復刻しました。同時に復刻したNARDI製のステアリングホイールとシフトノブも欠かせませんよね。また、ボディーの全塗装は、最新の塗料ではクリアコートを施します。当時の色を現在のクオリティーでお届けできるので、きっと満足いただけると思います。おすすめがちょっと多かったかな(笑)
――いえいえ。それを聞いたら、レストアを希望する人はきっと外すことはできませんね。あと、最後に聞きづらいことをお聞きしますが、今回のレストアプログラムは、コスト面でとても難しいものだと思います。果たして採算化のメドは立っているのでしょうか?
山本:これはちょっと答えづらいな(笑)。とはいえ、ちゃんと採算が成り立つように計画し、実行しますよ。そうでないと長くロードスターに乗っていただける環境を維持することができませんから。ご指摘どおりビジネスとしては厳しいハードルがあるのは承知しておりますが、乗り続けたいと願うお客さまのために、全力で頑張りたいと思います。
――ありがとうございました。実際にレストアが始まったら、ぜひ取材させてください。
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“今がいい”からできるプロジェクト
山本さんのお話の中で終始一貫していたのは、お客さまのためということだ。「ビジネスとしては厳しいハードルがある」としつつもプロジェクトを進行させた以上、山本さんの言う「お客さまのため」は単なる美辞麗句の類いではないと思う。
読者の皆さんもご存じの通り、マツダの歴史は浮沈の歴史である。というか“沈”がとても多い。ユーノスやオートザムなどを構えた「5チャンネル化の悲劇」やその後のフォード傘下入り、さらにはフォードの経営悪化により再び放り出されてしまうなど、踏んだり蹴ったりとしかいえない時代すらある。
イベントなどでそんな歴史に関するプレゼンテーションを拝見するたびに、マツダのスタッフはいつも喜々として説明する。「これがいわゆるマツダ地獄というやつですね」などと、笑いながら説明してくれるのである。
つらい歴史を笑って説明できるというのは、マツダの中でその歴史がしっかりと客観化されていて、なおかつ“今がいい”からにほかならないだろう。「人馬一体」や「Be a driver.」といったスローガンを掲げ、それに沿ってつくったクルマが人気を集める。もちろん、年度単位でみれば細かな浮き沈みはあるかもしれないが、今のマツダはとても元気だ。
「長く愛してくれたユーザーにようやく恩返しができる」。ひと息つける状態に落ち着くことができたマツダの、気持ちの余裕から生まれたレストアプロジェクトではないだろうか。
(webCG藤沢)
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藤沢 勝
webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。
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