第443回:トレッドパターンを一新!
トーヨーのミニバン向け新型スタッドレスタイヤをテスト
2017.09.23
エディターから一言
トーヨータイヤが開催した新型スタッドレスタイヤの試走会に参加。約6年ぶりにフルモデルチェンジされた、ミニバン向けスタッドレスタイヤの実力やいかに?
拡大 |
拡大 |
拡大 |
日本には“ガラパゴス”なスタッドレスタイヤが必要
ついこの間まで盛んにセミが鳴き競っていたのに、いつしか長袖が必須という季節に。こうなると、雪国のクルマにとって、早くも考えなくてはならないのが足元の冬支度。そう、“降りだす前”の冬タイヤ=スタッドレスタイヤの装着だ。
日本の冬で厄介なのは、多くの積雪地帯で日中には積もった雪が溶けだし、それが夜になると再び凍って、見事なまでのアイスバーンを形成してしまうこと。
しかも交通量が多い都市部では、その上を多くの車両が通過することで表面をピカピカに磨き上げ、この上なく滑りやすい路面が誕生してしまう。そんな“磨き”の行程は、スリップを伴う発進と停止が繰り返されることで、本来なら最も高いグリップ力が必要となる交差点付近でより顕著になってしまう。この悪循環は“日本特有”と表現しても過言ではないほどだ。
日本の雪道には、そんな環境を念頭に開発された“ガラパゴス”なスタッドレスタイヤでないと通用しない……と、ハナシは続く。ここに紹介するのは「市場は日本のみ」とした上で今シーズン向けに新発売された、トーヨータイヤの新商品だ。
ミニバン向けスタッドレスの最新モデル
2017年8月1日付けで発売された新タイヤの名称は、「ウィンタートランパスTX」。トーヨータイヤの場合、主にミニバンを対象としたタイヤに与えられる名称が「トランパス」。そこにウィンターの文字が加えられていることで、それが「ミニバン向けのスタッドレスタイヤ」であることはすぐに理解できる。
前任のモデル、「ウィンタートランパスMK4」の登場は2008年。その進化型である「MK4α」が登場したのは2011年だから、今回のTXは“約6年ぶりのフルチェンジ”ということになる。それゆえトレッドパターンも一新。MK4シリーズが採用してきた左右非対称コンセプトは受け継ぎつつも、その非対称パターンぶりはより顕著になり、ひと目で新タイヤであることが認識できる。
内側表面に高いアイス性能を発揮するスーパーソフトコンパウンド、外側表面には操縦安定性を重視したソフトコンパウンドを採用し、両者の下層部には経年劣化の抑制をサポートするソフトキープコンパウンドを採用するという、MK4の時点で初登場した「トリプルトレッド構造」は、3種のコンパウンド素材も含めてキャリーオーバー。
一方で、スリップ角がついた状態での効きを意識し、あえて斜めにレイアウトされた「アーマーサイプ」や、ふらつき低減を狙った外側ショルダーへの高剛性ブロックの採用など、フルモデルチェンジされたトレッドパターンとともに今回大きく変えられたのが、基本となる構造設計だ。
「サイズによって一部構造が異なる」と注釈が入るものの、カーカスの巻き上げを通常の乗用車用タイヤよりも長いトレッド付近にまで延長し、横剛性を強めることでミニバンの高い全高ゆえのふらつきを低減させる「スーパーハイターンアップ構造」や、内側ショルダー部のブロック倒れ込みを抑制し、アイス制動性能の向上を図った「3Dダブルウェーブグリップサイプ」は、TXで初採用の技術となっている。
ふらつき感が気にならない
4WD仕様の「トヨタ・ヴォクシー」や「エスクァイア」、FWD(前輪駆動)の「フォルクスワーゲン・ゴルフトゥーラン」にそんな新タイヤを装着してテスト走行を行ったのは、九州・宮崎のコースとともに東洋ゴム工業が所有する、北海道常呂郡佐呂間町に位置する、冬季試験専用のサロマテストコース。
厳冬期にはマイナス20度ほどまで冷え込むこともあるというものの、訪問時の気温は“わずかに”マイナス2度ほど。「氷上で滑るのは、路面を踏み込んだ際に発生するミクロの水膜が原因」とされることを考慮すると、むしろ「最高に厳しい」といってもいい条件だったことになる。
大小複数のコーナーと軽く100km/h以上まで試せる直線からなる外周路は、一部がアイスバーン化した圧雪路面を基本とする。テスト車をドライブすると、なるほど全高の高いモデル特有のふらつき感が気にならないことにまずは好印象を抱いた。ヴォクシーでは前任モデルのMK4αとの乗り比べも行うことができたが、常にハンドリングの自在度がより高く感じられるとともに、特にコーナリングからの立ち上がり時に、「よりしっかり踏ん張ってくれる」という印象が強かった。
残念ながら今回はテストコース外に出るチャンスがなく、舗装路でのチェックはかなわなかったが、こうした印象は当然そんな条件でもポジティブな方向に働くと予想できる。
たとえ雪国にあっても、冬場にドライ路面を走行するというシーンは少なくないはず。そんな場面で「夏タイヤとの差が小さくなった」とも実感できるはずだ。
新たなトレッドパターンが威力を発揮
一方、やはりMK4αとの比較で実感できたのがアイス性能の向上。特に、外周路の登り勾配区間に現れたアイスバーン部分では、一旦停止後の再発進のたやすさに明確な違いを感じることとなった。
前述したようにトレッドコンパウンドはキャリーオーバーとされるゆえ、こうしたアイス性能の向上は、基本的に新しいトレッドパターンの威力と考えられる。
ブロック壁面の凹凸が支え合うことでサイプの倒れ込みを抑制させる「3Dダブルウェービンググリップサイプ」や、加速/制動時に1本のサイプ内で両端が閉じても中央部は開いた状態をキープする「吸着3Dサイプ」の採用によるエッジ効果の向上、そして接地圧の均一化が功を奏していると推測できる。
ちなみに「トヨタ・ノア」の4WD車に195/65R15サイズのアイテムを装着して40km/hからフルブレーキングという試験では、MK4αに対して停止距離が12%短縮したという社内データが得られているという。
そんな新タイヤは、今ではすっかり“日本のファミリーカー”として定着したミニバンを基本に、「オンロード寄りSUVへの装着も意識した」とされる。
発売時点では15インチから19インチまでの、全31サイズが設定されている。
(文=河村康彦/写真=東洋ゴム工業/編集=藤沢 勝)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
NEW
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。 -
第970回:クルマの背中に浮かぶ文字たち――空いた字間が語るもの
2026.7.16マッキナ あらモーダ!アナタは自動車のボディー背面に施されたメーカー/ブランドのロゴについて考えたことがあるだろうか? 字間を詰めたり、広げたり、時代によって変わるそのトレンドと、その背景にあるメーカーの思惑を、自動車史にも精通する大矢アキオが語る。












