スズキSX4 Sクロス(FF/6AT)
胸を張ってオススメできる 2017.09.26 試乗記 デビュー3年目の改良により、新しいフロントデザインとトルコン式6段ATが採用された「スズキSX4 Sクロス」に試乗。スズキがハンガリーで製造しているクロスオーバーSUVは、運転がしやすくて快適な、優れた“道具”に仕上がっていた。“PCDイチイチヨンサン”の意味するところ
借りたクルマを試乗しているときにメモをとるか、とらないか。もちろん、それは人による。なかにはそれこそインプレッション記事の何フレーズかを乗った直後に現場で書くような人もいるけれど、私はあまりメモらない(昔はさかんにイロイロと書いたものだけど)。メモ帳に書き込むとしたら、せいぜいタイヤの指定内圧の数値ぐらい。じゃあ今回はどうだったかというと、「720+430=1150」。車検証記載の前後軸重およびその合計値を書きとったのみ。ここから計算すると、SX4 Sクロスにおいて車重全体に占める前軸重量の比率は約62.6%。同じ日に乗った「ダイハツ・ムーヴ」のターボは同じく約62.3%だった。
指定内圧230kPaは覚えていたけれど、先ほどフとした気まぐれでオーナーズマニュアルのPDFファイルを閲覧していたらオッ。このクルマ、ホイールのPCDがデカい。いまのこのクラスの日本車であれば100mmが相場であるところ、イチイチヨンサンつまり114.3mm。車輪の取り付け剛性を高くしようと思ったら、フツーに考えてPCDはデカいほうが有利。例えばポルシェは130mm。ついでにいうと、その昔(ザッと50年前)の「スバル1000」なんかはもっとデカかった(140mm)。
車輪の取り付け剛性というかハブ剛性の高い低いは、走行フィーリングの違いとしてちゃんと出る。それとこれもアタリマエなことに、履くホイールやタイヤがよりインチアップで重たく、よりハイグリップになれば、求められる剛性はそれだけ(あるいはもっと?)高くなる。同じ「スバル・インプレッサ」なのに「WRX STi」だけはPCDが100ではなくイチイチヨンサンになってたりしたのがいい例である。「ニュルを全開で走って、燃料は満タンにしておけば4周はもつんです。でもハブが3周しか(笑)」みたいな話をその昔、聞いたような。だから強化しなくちゃでイチイチヨンサンに、だったはず。
コワれるコワれないの話はアレとしても、舵の正確さを追い込んでいくと最後(あるいはむしろ最初に?)いきつくのは車輪の取り付け剛性のモンダイだったりする。SX4 Sクロスを運転したのはもう何週間も前のことだけど、そのときの印象の記憶はまだガッツリ脳内にある。それがあったうえでのイチイチヨンサンだったので、なおのことオッと思った。車重がイチイチゴーマルのクルマにしてはミョーにデカいぞ。
なお、ホイールのPCDが100かイチイチヨンサンか(というか100より明らかにデカいか)なんて、ホントはクルマの姿をパッと見ただけでわからないといけない(笑)。気がつかないと。あーあ。
ここでちょっと気になったので調べてみたところ、近いところで「マツダCX-3」もホイールのPCDはイチイチヨンサン(5穴)だった。「日産ジューク」も、「トヨタC-HR」も。デカいホイールがフツーにつくとなると、メーカーの人たちもそれなり対応する、ということだろうか。
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とにもかくにも乗り心地が良い
SX4 Sクロスは乗り心地がすごく良い。「車体の上下動がピッチングにならずにバウンシングになる」とか「走行中の車高が基準位置より下にだらしなく落ちる感じがない」とか、書こうと思うといろいろ書ける。「ダンパーの圧側の減衰が……」なんてのもありますね。「勢いよく沈み込んで反転して伸び側でキュッと止まる」……ことがないという。日本車だと思うとビックリするくらいサスペンションの仕上げがちゃんとできていて、実際というか、このクルマは狭義の日本車ではない。あるいは国産車ではない。メイド・イン・ハンガリー。マジャールスズキの製品である。「だから欧州車っぽい」といってもウソには全然ならないけれど、しかし……。
乗り心地がすごく良いとどうなるかというと、まず快適である。長距離長時間にわたって乗っても疲れない。もっというと、別のクルマをしばらく運転したあとの疲れが、これに乗るとなおる。ホントになおった。乗り換えて走りだした瞬間、心身のコンディションがシャキッとしたのがわかった。でまた、同じことではあるけれど、こういうクルマは乗ったあと=降りたときに余韻が残らない。乗ってたときのことがあとをひかない。スパッと気持ちや行動の切り替えができる。いやこれ、ホントに日本車なのか!?
なお、このクルマの乗り心地に関しては写真家のコーゴさんもホメていた。いわく、「後席がすごく快適」。後席も、ですよね。“引っ張り撮影”のカメラカーに使う場合、後席の乗り心地のよさは写真のアガリに関わる重大事である。いわゆるカメラぶれが起きやすいか起きにくいか。ちなみに、コーゴさんのマイカーの「ルノー・セニックRX4」は後席の乗り心地がものすごくイイ。後席も、だろうけど。「だから、乗り換えたくなるクルマがなくてねえ」(オーナー談)。
自信をもって運転ができる
えー、SX4。乗り心地。視点をブレさせる原因になる雑多な揺れが大幅にカットされているからだと思われることに、走行中、目の前のガラス越しの風景が違って見える感じすらある。もっというと、自分の動体視力が突然ググッとよくなってしまったかのような。なので、このクルマだと、いつもの道がいつもの道とちょっと違ったものになる。自分の運転もちょっと変わる、というか変わった。これに関しては、いわゆる操縦性や安定性のよさからくるものも要因としては当然ある。要は、すごく自信をもって運転できる。安心感が高い、といってもいい。
例えば。ハンドルを動かすと同時にロールが始まる、始まってしまう感じ……が、このクルマにはない。ハッキリと旋回モードに入って初めてロールが始まる感じで、体感的には少なくとも0.2Gぐらいまではゼロロールである。こういうクルマも、日本車には珍しい。1Gつまり静止状態でフロントのロワーアームの下反角(スズキ用語だと“垂れ角”)がちゃんとついているクルマの典型的な動き。主バネやアンチロールバー等によるものではないメカ的な、あるいはジオメトリー的なロール剛性がちゃんと確保されていると考えられる。だから真っすぐも得意。直進性がよいというよりは、直進力が強いといいたくなる。クルマと道路を真上から眺めて考えると直進性は2次元の話になるけれど、ホントは3次元の話だと思う。えー、ヨーとロールとピッチ。3次元というよりは、3軸ですか。
あとコーナリング関係。ハッキリと旋回モードになって初めてロールが始まる感じがあるのと、それと舵の利きの感じも良い。ソロッとハンドルを動かし始めたらグーッときり増していって……のところで、その途中のどこかでアッとなって思わず手の動きを止めちゃったりということがない。ズイイーッと気持ちよくきっていける。フルロックまで……はいかなかったけれど、私が知るなかでもっともイジワルくRがキツい(しかも奥でさらにグイッと深くなる)コーナーがいくつもある某峠の下りでも印象が変わらなかったので、素直にこれはスゴいといいたい。スゴいというか、エラく気持ちがイイ。ワインディングロードを真上から俯瞰(ふかん)する第2の視点があるみたいな感じで、ヨユーで走れる。
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よくできたフランス車を思わせる
プジョーやシトロエン、あとほかに初代「ルノー・セニック」あたりのときもそうだったと記憶していることに、笹目二朗さんが試乗記で「(フロントの)ロールセンターを高くとって」とか「ニュートラルステア」とかの言葉を使いながら説明してくれたクルマの動き。走り。それはこういう感じ、といってもいいと思う。SX4というかスズキはフランス車の美点をちゃんと理解して自分ちのクルマに採り入れている……ような気がする。そのへん、シャシー設計や操安性および乗り心地の仕上げの担当者にゼヒ聞いてみたい。「いや別に」とかいわれたりして(笑)。
私はなにも、SX4が「フランス車みたいだからイイ、好き」といっているのではない。このクルマの運転しやすさや快適さには高度の普遍性がある。で、それがどんな感じかを説明しているまでのこと。運転しやすく快適なクルマとはこういうもの、というスズキの答えがこれであるとしたら、それはそれじたいとして大いにメデタくかつ尊敬すべきことである。乗り心地のよさひとつをとっても、こんなにイイのは日本車には1台もないと思う(ただしもちろん、SX4が日本車ではないとしたら)。あったら表彰したいぐらいだ。念のためにというか、SX4の兄弟モデルといっても間違いではないだろう「エスクード」の広報車(1.4ターボ)を予約してある。この文章のここを書いているいまの時点でいうと、あと2時間後にはそれを借り出して運転しているはずだ(間に合いますようにw)。エスクードもマジャールスズキ物件ですが。
ここまでイイと、気になるのはダンパー関係。サプライヤーはどこか。フェイスリフト前のをプレス試乗会で乗ったあとに聞いたらKYBヨーロッパ物件とのことだった。ザックスがついているのかと思ったら、「違います」。あらー。フツーに考えて、今回のもKYBヨーロッパでしょう。ちなみにKYBヨーロッパ、純正の採用実績としては例えば「ルノー・カングー」(先代も現行も)がある。「プジョー3008」も、少なくとも先代のDRC(ダイナミック・ロール・コントロールの頭文字)つきの(日本仕様がそれだった)はKYBヨーロッパ物件だったはず。ということでつまり、KYBヨーロッパはフランスのメーカーとつきあいがある。しかも、そこでそれなりの結果を出している(上記のうちで特にヨカッタのは初代カングー)。KYBヨーロッパのダンパーを国産品とは呼べないが、しかしKYBヨーロッパが日系サプライヤーであることは間違いない。ですよね?
ささやかな欠点はあるものの……
パワートレイン関係。CVTだったトランスミッションがプラネタリーの6段ATに変わったのは大いに、加点要素。1.6リッター自然吸気ガソリンのエンジン(ECUはボッシュ物件だった)はちゃんと良い。運転しやすい。チカラがある。ツキがイイ。乗り心地や操縦性安定性のよさを体験するうえでジャマというかガッカリ要因に全然、なっていない。マニュアル変速だったらもっとサイコーだけど。「あ、モリさん。これ、エンジンマウント、エキフーですよ!!」とはコーゴさん談。エキフーとは液体封入(タイプ)。ザラビリ系の振動が車内に侵入してくるのを抑制しつつ、でもエンジンのユサユサはしっかり抑えたい。だから採用、ということでしょう。
残念ポイントがなかったわけではなくて、それはブレーキのタッチとハンドルの手応え。ブレーキペダルの踏み応えに関しては、簡単にいうとカルすぎる。あるいは、ちょっと強めの踏力をかけるとズニューッとだらしなくストロークが深くなっちゃう系。ハンドルの手応えは、舵角が深くなるのにつれて(タイヤの出すコーナリングフォースが強くなるのにつれて)手応えがググッと増えて、あるいは重くなって……くれない系。いまのクルマの平均値に照らしていえば、いずれもまあフツーではある。特にどうこういうべきほどのことはないともいえる。でも、ほかのところのデキがこれだけイイと、相対的な残念度はちょっとならず高い。いわゆる「惜しい!!」というやつである。
SX4、一台のクルマとして見た場合にオススメできるか、できないか。私は「できる!!」と考える。断言しちゃう。運転しやすくて快適でリーズナブルな道具としてのクルマを探しているならこれ、オススメします。
(文=森 慶太/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
スズキSX4 Sクロス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4300×1785×1595mm
ホイールベース:2600mm
車重:1150kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:117ps(86kW)/6000rpm
最大トルク:151Nm(15.4kgm)/4400rpm
タイヤ:(前)215/55R17 94V/(後)215/55R17 94V(コンチネンタル・コンチエココンタクト5)
燃費:16.2km/リッター(JC08モード)
価格:206万2800円/テスト車=228万3606円
オプション装備:※以下、販売店オプション ナビゲーションシステム(14万3478円)/フロアマット(2万0412円)/ETC車載器(1万9656円)/ドライブレコーダー(3万7260円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1214km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:429.1km
使用燃料:29.3リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:14.6km/リッター(満タン法)/15.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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森 慶太
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