第70回:「だってフェラーリだから」
2017.12.05 カーマニア人間国宝への道鼻毛の激軽ハンドル
「跳ね馬を2000台直したメカ」ことアリアガレージ工場長の平澤雅信氏によって、赤い玉号はついに仕上がった(たぶん)!
ただですね、買った時点で赤い玉号がガタガタのポンコツだったわけではまったくなく、フツーならそのまんまで何ら問題ありませんでした。めったに乗らないクルマだし、見た目はカンペキだし!
クラシックフェラーリは見た目が9割、あとは動けばそれで良し。そう思えば、ハンドルが軽すぎてステアリングインフォメーションが皆無とか、そんなことは鼻の穴から鼻毛が1本出てるか出てないか程度のこと! ただ私はその鼻毛にこだわる珍しいオーナーだったということに過ぎません。
で、その鼻毛の激軽ハンドルに関して、金髪リーゼント+金のネックレスの酒井メカより、口ベタな訂正が入りました。
酒井「あの、読みましたけど、ペンキは赤じゃなく黄色です」
オレ「え? あの赤い線じゃなかったの?」
酒井「あれじゃないッス」
私は彼から「ペンキで印がついていた」と聞いて、てっきり合印的な線だと思い、それらしき赤い線を発見してこれに違いないと思い込んだのですが、それは私の早とちりだったのです!
組み付けミスでほぼ確定!
実は彼が言ったのは、ユニバーサルジョイントの向きを固定するナットに塗られている黄色い塗料のこと。ステアリングシャフトを抜く際にはそのナットを緩める必要があり、必然的に塗料が剝がれる。ところが赤い玉号のソレは、まだ黄色い塗料がついたままだったというのだ!
酒井「あれ、クルマの完成検査の時に塗る塗料なんスけど、それがついたままだったんス」
オレ「じゃ、ほぼ確実に一度もいじられてないってことだ!」
酒井「そっすね。あれをもう一回塗るってことは、考えられないんで」
つまりつまり、赤い玉号の激軽ハンドルは、マラネッロ本社工場におけるステアリングシャフトの組み付けミスに決定! そのまま完成検査やテストドライバーによる走行もクリアして日本に並行輸入され、その後歴代何名様かのオーナー様も何ら疑問に思わず、ハンドルカルカルのまま31年間過ごしてきた。そういうことでほぼ確定しました!
オーナー様がアレを疑問に思わなかったのはわかる。私は他の328に乗る機会があったからおかしいと思ったけど、初めてなら「こんなもんかな」で納得するしかなかろう。ハンドルが軽いのはラクでいい、という考え方もあるし!
しかし、出荷前に100km以上走行したはずのテストドライバー様が、オレ様でもすぐわかるような異常を報告しなかったのは、日産やスバルの完成検査問題とは別次元の、ゼッタイあってはいけないミスですネ! だからフェラーリ様(ちょっと昔の)って好き! ダハハハハハハ!
だってフェラーリだから
しかしまぁフェラーリに関しては、エンジンやクラッチなどパワートレイン系の修理を依頼するオーナー様はいても、「操縦性がおかしい」とか「ハンドルが軽すぎる」とかいうオーナー様は、実は自分以外に聞いたことがない(唯一の例外が池沢早人師先生)。
私は最初に買った「348tb」について、「まっすぐ走らない臨死体験マシン」と書き、そのカイゼンに心血を注ぎ、ついに主因を「リアサブフレームの剛性不足」と特定、タワーバー的補強フレームを入れることでほぼ解決させ、それについて随分と書き連ねましたが、私と同じようなカイゼンを施したオーナー様がいらっしゃったという話は、ついぞ聞いておりません!
「360モデナ」についても、コーナリング中の唐突な挙動や超高速域での不安定感は、サスペンションと空力設計に問題があることを突き止め、ともにカイゼンすることで別物に生まれ変わらせましたが、同じようなカイゼンを求められた例は「全然ないですねウフフ~」(エノテン)とのことで御座います。
そうです。みんな、フェラーリの操縦性なんかどーでもいーんです! ハンドルがどんだけ激軽だって気にしないんです! テストドライバーですら!
「だってフェラーリだから」
それで解決なんですネ!
でも、フェラーリ様のエンジンが調子悪いのはみんな困る。あとボディーの艶(つや)とか傷とか。だってフェラーリ様の命はエンジンとカッコにあるから! それもまた私が長年言い続けてきていることですが、その私に限って操縦性やステアリングフィールに異常にこだわる変態オーナーなのだということが、ますます明らかになりました!
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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