第494回:新型「スバル・フォレスター」がデビュー!
ニューヨークショーで見た、率直な感想は?
2018.04.07
エディターから一言
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ニューヨーク国際自動車ショーで、いよいよ世界初公開された新型「スバル・フォレスター」。日米問わず根強いファンを持つスバルの最量販モデルは、果たしてどのような進化を遂げたのか? モーターショーの会場から、その第一印象をリポートする。
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このデザインは間違いなく確信犯
ニューヨーク国際自動車ショーの会場で見た新型「スバル・フォレスター」の第一印象は、「これはまた、潔いまでにキープコンセプトなクルマだな」というものだった。こんなことを言うとデザイナー氏は気を悪くするかもしれないが、本当に従来モデルとソックリなのだ。ついでに、3列シートSUVの「アセント」とも。
確かに、じっと目を凝らせば「DYNAMIC×SOLID」という最新のデザインコンセプトに沿う特徴も見受けられるのだが、“パッと見”で脳に刻まれるのは、やはり2007年デビューの3代目から受け継がれてきた部分(ライバルと比べて立ち気味のAピラー、広いグリーンハウス、ルーフの後端付近まで水平基調を保つルーフラインなど)が主なのである。それどころか、顔を見れば六角形のフロントグリルや“つり目”のヘッドランプといった従来モデルの特徴がそのまま受け継がれているではないか。これはもう、ゼッタイ、確信犯だろう。
もちろん、記者がこの外観イメージを「あえての確信犯だな」と考えた理由はそれだけではない。というのもこのクルマ、デザイン以外は従来モデルから一新されているのだ。
車両骨格はスバルの新世代アーキテクチャー「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」に置き換わっているし、エンジンも新開発の2.5リッター直噴ユニットに変更。フォレスターの伝統だったターボエンジンの設定は廃止された。ドライブトレインにも新たにアクティブトルクベクタリングを採用するなどの改良が見られるし、顔認証技術を応用し、ドライバーが乗車すると自動でドライビングポジションやエアコンの設定を調整する“おもてなし機能”を採用するなど、技術的に新しい試みも積極的に取り入れられている。
乗ってみても(運転はしていませんが)進化の程は明らか。インテリアは意匠が変わっただけでなく、ダッシュボードやドアトリムにもステッチを施すなどして質感を向上。長くなったホイールベースのおかげで、後席のニールームは明らかに広くなった。ちなみに、ボディーサイズは全長×全幅×全高=4625×1815×1730mmと、従来モデルよりちょこっとだけ大きくなっている。
ターボはなくとも走りに自信あり
運転はしていないので分からないが、ドライブフィールも期待を裏切らないものに仕上がっているという。会場では開発責任者の布目智之氏に話を聞く機会を得たのだが、「比較的リジッドで“ねじれ”などがないプラットフォームを使えたことにより、足をしっかり固めつつ、マウントなどをソフトにすることができた。操縦安定性は非常に上がっているが、同時に乗り心地も両立できている」「不快な振動を抑制する上で、SGPを非常に有効に使うことができた」とのことだった。
また、読者の皆さんが気にされているであろう動力性能・運動性能に関しては、「SGPの採用により、良好だった従来モデルからさらに高めることができた。制御面でも、スポーティーに走りたいと思えばそのように走らせられるよう工夫を施している」とコメント。ターボエンジンの消滅を嘆く意見に対しては、「今回のモデルの2.5リッターエンジンは、悪路でもどこでも強さを発揮する、下からトルクをしっかり出せる非常にいいエンジンとなっている。お客さまの期待に応えられるものに仕上がっているのではないか」と述べ、新しいNAエンジンの仕上がりに自信をうかがわせた。
同時にチーフデザイナーの大関 透氏にも話を聞いたのだが、「『ヴィジヴ フューチャーコンセプト』にもっと寄せたデザインになると思っていた」という記者に対し、「通常のモデルについては、上質さであったり、よりもっと快適に、安心して遠くまで行けるようなクルマとして造ったが、『スポーツ』については、時に未舗装路を走ったりしてアウトドアを楽しむような、アクティブな方にも楽しんでもらえるクルマとして造った。『このクルマでいろんな楽しさを提供したい』というコンセプトカーの思想は生きている」とのことだった。
SUVとしての本領で勝負
今回の取材で感じたのは、新型フォレスターが特定のとがったイメージで勝負するクルマとしてではなく、よりSUVとしての本領で勝負する方向に進化したということである。伝統のシンメトリカルAWDに加え、布目氏も述べていた“力強さ”が身上の新エンジン、現行モデルと同等の220mmというロードクリアランス、ダイヤル式とすることで操作性を高めた「X-MODE」など、走破性(と、それに付随する操作性)に関する部分にコダワリが見て取れるのはいつものこと。同時に、より使いやすくなったラゲッジルームに、最新のインフォテインメントシステム、後席用のUSB充電ポート、Wi-Fiホットスポットをはじめとしたテレマティクス機能など、このクルマはSUVの“U”(Utility)の部分にも力が入っている。
なぜスバルがこうした方向性を選んだかといえば、SUVカテゴリーにおいて、もはやフォレスターがニッチではなくメジャーな存在だからだろう。主戦場たる北米での年間販売台数は、モデル末期の2017年ですら17万7563台。ランキングでは同門の「アウトバック」に継ぐ11位に位置している。また、そのアメリカ市場でユーザーが持つスバルのブランドイメージは「安全、耐久性や信頼性、冒険的」(スバル・オブ・アメリカのアラン・ベスキー上級副社長)とのこと。今回のフォレスターの進化は、ユーザーがブランドに寄せる期待に応えた当然の結果なのだろう。同時に先述のブランドイメージは、日本のユーザーがスバルに寄せるそれとも大きく乖離(かいり)はしていないと思う。
それでもやっぱり、日本のユーザーの中には、ボンネットに空気穴が開いたスバル車に郷愁を抱く私のような人間もいる。「メジャーなクルマだからこそランアップ拡充を!」という考え方もあるわけだし、スバルにはやっぱり、アセントの2.4リッターターボを積んだ豪快なフォレスターも造ってほしいと思ってしまった。
いずれにせよ、新型フォレスターについては、そう遠くない未来に日本仕様もお披露目されそうな気配である。販売店ではすでにさまざまな“前情報”が発信されており、そこには「ターボに替えて、実はマイルドハイブリッドの設定も!」などという耳寄りな話も含まれている。興味のある方は、ぜひ続報に耳をそばだてておいてほしい。
(文=webCG 堀田剛資/写真=スバル、ケニー中嶋、webCG)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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