わざわざ「女性向け」って言う必要ある?
「ダイハツ・ミラ トコット」に感じた疑問
2018.06.25
デイリーコラム
チーフエンジニアと製品企画の仁義なき戦い
「チーフエンジニアを説得するのが大変だったんですよ!」
過日の取材でのこと。ダイハツ製品企画部 木村友喜女史はマイク片手に強弁した。何の話かというと、従来モデルからすっかり“イメチェン”を遂げた新型軽乗用車「ダイハツ・ミラ トコット」の話だ。
まだトコットが影もカタチもなかった頃、次なる“女性向け軽自動車”を成功させんがために懊悩(おうのう)していた木村女史は「今までの『かわいいクルマ』の延長線じゃダメだ!」と天啓を得た。そしてその旨をチーフエンジニアの中島雅之氏に具申したところ、「ほんなら代案を出してみいや」のヒトコト。木村女史は大いに発奮し、社内のプロジェクトチームを率いて全国津々浦々の販売店やダイハツの新入社員相手にリサーチ&ヒアリングを敢行。従来車種の「ミラ ココア」とは一線を画す、シンプルさが身上のトコットが誕生したというわけだ。
上述の内容については、ちょっとだけ記者の誇張が含まれているものの、大筋は間違っていないはずだ。少なくとも「次期モデルを“新型ミラ ココア”にするか、全く違う新型車にするか」すら決まってなかった段階で、かんかんがくがく・けんけんごうごうあったのは両者の弁から間違いなく、しかも事前資料にはわざわざ「チーフエンジニアやマネージャーたちの持っている、『女性イコール“かわいい”物好き』という従来の固定概念を覆すのは非常に難しいことでした」なんてプロジェクトチームの回顧まで書かれている。ギョーカイの末席を汚して10年になる記者だが、こんな文句をメーカーの配布資料で目にしたのは今回が初。本日のめでたい発表会を機に、中島氏と木村女史が仲直りすることを切に祈るばかりである。
かようにユニークなエピソードを内包しつつ、いよいよ登場したダイハツの新型軽乗用車ミラ トコット。記者はこのクルマについて……否、“女性向け”とうたわれる軽乗用車すべてについて、ひとつ物申したいことがある。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
よく見たら、実はどれもカッコイイ
読者諸兄姉におかれては、あらためてトコットの写真をご覧いただきたい。特にサイドビューに注目。質素だが言い訳がましいところのない、非常にいいスタイリングをしている。今時、ここまで自信満々な2BOXデザインのコンパクトカーは、世界的にもそうはないのではなかろうか? それくらい、いいスタイリングをしている。
トコットだけではない。従来モデルのミラ ココアも、実は変則6ライトの凝ったデザインをしていた。皆さん、街で見かけるミラ ココアの姿を頭に思い浮かべてほしい。そして乙女チックなあざといコーデを消去していただきたい。このクルマがいかにしっかりした基本デザインの持ち主だったかが、わかるはずだ。
極めつけは、ライバル筆頭の「スズキ・アルトラパン」だ。トコットが「フィアット126」の生まれ変わりなら、こっちは4ドアの「850」である (褒めているように聞こえないかもしれませんが、記者としてはいずれも最上級の賛辞です)。
何が言いたいかというと、世の“女性向け”とうたわれる軽乗用車はいずれも、よく見ると非常にいいデザインをしているのだ。しっかりとボンネットがあり、Aピラーが立ち、水平基調のマジメなショルダーラインをしている。それらは「運転のしやすさ」や「見切りのよさ」といった、デザイン以外の要因によってもたらされるものなのだが、結果的にクラシックでしっかりとした、非常に自動車らしいカタチを形成しているのだ。
一方、その他の軽乗用車を見ると、そのほとんどはミニバンの縮小版みたいなナリである。もちろん相応な理由も需要もあってのことなのだが、装飾を取っ払って基本フォルムを比べたら、やはりトコットやココア、ラパンのほうが、はるかに意図のはっきりした線や面をしていると思うのだ。
男だってオシャレな軽が欲しいんだよ!
で、かようにステキなデザインをまとう女性のための軽乗用車について、記者はなににガッカリしているのかというと、まさに“女性のため”に売られていることそのものにガッカリしているのである。
例えが古くて面目ないが、反町隆史の“男旅カー”「トヨタ・ヴォクシー」に女性が乗っててもおかしくはないが、桐谷美玲に「ワタシのオシャレ低燃費論」なんて開陳された日にゃ、オトコは恥ずかしくてミラ ココアなんか買えないよ。木村女史は先述のヒアリングにおいて、一部の女性から「カワイイ系の軽自動車は、私たちにはムリ!」ときっぱり言われたらしい。男の私からも言わせてください。私たちにもムリ!
だからこそ、ダイハツやスズキには、こうした軽自動車を“女性向け”ではなく売ってほしい。スズキもかつては、アルトラパンにターボ付きのかっ飛びウサギを設定していたではないか。ダイハツも「ムーヴコンテ」で失敗したかもしれないが、ぜひ今一度挑戦して、「女もすなる軽自動車といふものを、男もしてみむとてするなり」と私らに言わせてほしいのだ。
……という質問というかお願いを木村女史に投げかけたところ、「実は私も、(このクルマを)女性向け、女性向けと言うのは好きではありません。トコットなら、オシャレな男性にもきっと『待ってました!』って言ってもらえると思います」と力強くおっしゃっていた。
微妙に質問と回答がねじれの関係っぽくなっていたが、この際細かいことはいいんだよ。取りあえずは今日のよき日に拍手を送りつつ、「トコット ターボTR-XXアヴァンツァートR」とか、「トコットX4」とか、期待しています。
(webCG ほった)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
-
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する 2026.8.24 2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。
-
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性 2026.8.21 欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。
-
FCEVで世界一の販売台数 「ヒョンデ・ネッソ」にみる水素の可能性と普及へのカギ 2026.8.20 フルモデルチェンジしたヒョンデの燃料電池車(FCEV)「ネッソ」は、1014km(参考値)の一充填走行距離を実現したという。進化したゼロエミッションの走りを味わいながら、ヒョンデが目指す水素社会の可能性とFCEVの未来について考えてみた。
-
新型「キックス」がスマッシュヒットの日産 次なる一手のコンパクトミニバンとはどんなクルマか? 2026.8.19 新型「キックス」が好評の日産が、次はコンパクトミニバンの発売をプランしているという。日産の国内ラインナップには(なぜか)なかったジャンルのモデルだが、果たしてどんなクルマになるのだろうか。「シエンタ」「フリード」といった強力なライバルに、どのような武器を手に挑むのだろうか。
-
次期「スカイライン」はこうしてつくられる! 日産が今やろうとしている開発効率化の取り組みとは? 2026.8.17 日産はいま車両開発期間の大幅短縮に向けて、大きなチャレンジをしているという。現在開発が進んでいる次期「スカイライン」に適用されるというその手法は、従来のやり方とどう違うのか? 世良耕太が解説する。
-
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
NEW
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。










































