第516回:電動化は? スピードスターの発売は?
ポルシェ911の気になる“これから”をキーマンに聞いた
2018.08.09
エディターから一言
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満を持して“ピュアEV”の市販車名を発表すると同時に、古典的な走る楽しさを追求した「911スピードスター」の発売も示唆。未来を見据えつつ、クルマ本来の魅力も大切にするポルシェの“これから”を、スポーツカー戦略のキーマンに聞いた。
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70周年に合わせて発表された2つのサプライズ
2018年6月8日、ドイツ・シュトゥットガルトにあるポルシェミュージアムで、ポルシェのスポーツカー誕生70周年を記念したイベントが盛大に行われた。そこでは、2つのサプライズが用意されていた。
70周年イベントでポルシェAGのオリバー・ブルーメ社長が発表した1つ目のサプライズは、ポルシェ初の純粋な電気自動車「ミッションE」の市販車名が「Taycan(タイカン)」であることだった。そして2つ目は、イベントの終盤で行われた「911スピードスター コンセプト」のワールドプレミア(世界初公開)だった。
“スピードスター”は単なるオープンカーではない。オープントップと優れたドライビングダイナミクスを兼ね備えた特別なモデルにのみ与えられる名称だ。1952年に誕生した「356 1500アメリカロードスター」を起源とし、1957年の「356A 1500GSカレラGTスピードスター」、1988年の初代「911スピードスター」、2010年に356台のみ生産された“タイプ997”の「911スピードスター」など、過去に8つのモデルが“スピードスター”の名で造られた。
最新の911スピードスター コンセプトは、傾斜が強くなったフロントウィンドウや縮められたサイドウィンドウ、ダブルバブルのリアカバーなど、356にはじまる過去のスピードスターの特徴を再現。徹底した軽量化のため、リアカバーはカーボンファイバー製で、内装からはナビゲーションやラジオに加え、エアコンまでもが省かれている。
シャシーやエンジンは「911 GT3」に由来するもので、最高出力500psを発生する水平対向6気筒に6段マニュアルトランスミッションを組み合わせる。そして、伝統的なフックスデザインのセンターロック式21インチホイールや、チタン製マフラーを装着していた。
会場を訪れていた“ミスター911”と呼ばれる911、718モデルライン担当副社長アウグスト・アッハライトナー氏に、このコンセプトカーに込めた思いを聞いた。
タイカンには911に通じるものがある
————スピードスターのリリースはいつ頃になりそうでしょうか? また限定販売といううわさもありますが、どれくらいの数になりそうでしょうか?
アッハライトナー:皆さんの反応をみた上で量産化が決まりますが、この感じだとおそらく量産化はされると思います。市販化に向けては、コンセプトカーのままでは認可されない箇所もたくさんあるので、それらの修正が必要になりすし、リリースは早くても来年になります。台数についてはまだ正式には決まっていません。
————スピードスターはそもそも特別なモデルですが、特にこのモデルはGT3のパワートレインを用いたさらにスペシャルバージョンと聞きました。なぜ、ベースにGT3を選ばれたのでしょうか?
アッハライトナー:だって、GT3のオープンに乗ってみたくないですか?(笑) 個人的には、夢のクルマが実現した思いです。このスピードスターは私が担当している911の生産車部門と、モータースポーツ部門(レースカーやGT系のマシンの開発部門)が一緒になって開発したものです。GTモデルの責任者には以前から、「オープンのGT3を造ろうよ」と言ってきました。それがようやく叶ったのです。
———ちなみに、今日はタイカンという名のお披露目の場でもありましたが、アッハライトナーさんは、タイカンのテスト車両にも乗られているのでしょうか?
アッハライトナー:ええ、それは素晴らしいものでした。もちろん私は911が好きですし、最初はどんなものか不安もありましたが、プロトタイプを試乗して得た経験はとても興味深いものでした。クルマに乗り込んで、ドアを閉め、ステアリングの位置などの調整を終えると、とても落ち着きました(「Feel at home」)。
———その「Feel at home」という表現、昨年アッハライトナーさんにインタビューさせていただいた際に、911を表現する言葉として使われていたのがとても印象的だったので覚えています。
アッハライトナー:そう、911に通じる何かを感じました。もちろん、キーをひねってもエンジン音は聞こえません。ただ、照明が光るだけです。でもスポーティーでコンパクトで、ものすごい加速をし、大変すばらしいハンドリング性能をもったクルマでした。現段階ではまだ完成ではありませんしもう少し時間も必要ですが、間違いなく“ポルシェ”になるでしょう。(元レーシングドライバーでありポルシェアンバサダーの)マーク・ウェバーがプロトタイプをテストしていましたけど、とても感心していましたよ。
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現行型では難しいかもしれないが……
———一方で911も電動化に進むとうわさされています。新世代の“タイプ992”の発表も近いと思われますが、911も今後は電動化していくのですか?
アッハライトナー:現在の911にはあまりスペースがありません。準備をするには、まだ数年の時間が必要になります。私たちはもちろん、内燃エンジン、フラット6をできるだけ使いたい。それが911らしさですから。
———911のレース車両にはハイブリッドモデルもありましたが、ハイブリッドの可能性はないのでしょうか?
アッハライトナー:難しい質問ですね。現在はっきりとしたプランがあるわけではありませんが、将来的にはハイブリッドになるかもしれません。ホンダの「NSX」をご存じですよね、私の個人的な意見では、あれはとても良い仕事をしています。大変面白い。あれに近いものが911に起こる可能性はあります。
いろいろと話を聞いていると911のEV化はどうも一筋縄ではいかなそうだ。もちろんそこはタイカンが担うパートゆえ、911は911として進化していくだろう。しかし同時に、“ミスター911”がホンダNSXを高く評価し、「あれに近いものが911に起こる可能性はある」と語ったのはとても興味深いことだった。ポルシェの電動化戦略が、同社のスポーツカーにどのような影響を及ぼしていくのか。これからも注目していきたい。
(文=藤野太一/写真=藤野太一、ポルシェ/編集=堀田剛資)

藤野 太一
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