第114回:アクアだ~い好き♡!
2018.12.04 カーマニア人間国宝への道アクアはカーマニアに刺さる!
近所の東京トヨペット店に自転車で出撃した私は、兄弟車である「ノア/ヴォクシー」と合計すれば日本で2番目に売れている「エスクァイア」に試乗し、その完成度の高い冷蔵庫ぶりに激しい空虚感を抱いた、というところまで書いた。
このままでは帰れない。まだオレは何も得ていない! このままじゃ、悲しくて死んでしまう! 少しは心に響くクルマに乗らないと! 何か乗せて~!
清水(以下 清):あの~、「アクア」の試乗車はある?
担当者(以下 担):ありますよ。「クロスオーバー」っていうグレードですけど。
アクアは、海外では「プリウスC」の名前で販売されていて、一応グローバルモデル。それでいて国内でも9番目に売れているという(筆者集計)、希少なモデルだ。
かくいう私、アクアの発売当日、このディーラーに朝イチで並んで予約を入れ(並んだのはオレのみ)、4年間家族のゲタとして使い倒した経験を持っている。細かい不満はいろいろあったが、相当いいクルマだった。
これはカーマニア的な皮肉とかではまったくなく、アクアにはカーマニア的に刺さる部分が大いにあって、非常に愛着を感じていたのだ。マジで。
そんなアクアも、発売からすでに7年。私が東京トヨペット店に並んだのが7年も前のことなのかと思うと光陰矢の如しだが、アクアは7年たってもまだ売れているのだからすごいじゃないか!
アクア クロスオーバーにプチ試乗
試乗車の「アクア クロスオーバー」は、売れ行き不振だった「アクアXアーバン」の後継モデルのようだ。
見た目は悪くない。登場当初のアクアに比べると、フロント左右のフィンや、SUV風のフェンダーガードなどの微妙な“武装”で、かなり見られる雰囲気になっている。カーマニア的には、逆にこの武装が本気っぽくて、こっぱずかしい面もあるが……。
思えば私がアクアを買った時、周囲は大いに驚いてくれた。カーマニアがなぜアクアなんか買ったんスか!? という感じで。「燃費だよ!」と答えても、あまり本気にしてくれなかった。
実際に愛車にしてみると、アクアは重心が低くて、ハンドリングがかなりシャープ。気持ちよく曲がってくれた。「フェラーリ458イタリア」をもほうふつとさせる、ステアリングの初期応答性があったのだ! そう言っても周囲は「ププッ」と噴き出すのみだったが、私は120%本気だった。希望ナンバーも「458」だったくらいだし。
その後アクアは何度も一部改良を繰り返し、そのたびにサスのセッティング等がかなり変わった。個人的には、2013年の一部改良で足がめちゃめちゃフニャフニャになって、最大の美点であるハンドリングが台無しになったのを非常に残念に思ったが、2014年のマイチェンではかなり復帰した。
なにしろアクアには、ハイブリッドバッテリー搭載位置の低さからくる低重心という素性の良さがある。そのハンドリングは、カーマニアも納得モノのはず。
なにせあの黒沢元治氏も、登場当初のアクアのハンドリングを、某誌でかなり絶賛されていたほどだ。多くの同業者がアクアを軽く見る中、私は「わかってるのはオレと元サンだけだな」などと、ひとりごちていたのである。
アクアはやっぱりイイ!
そんな“我が愛するアクア”は、いまどうなっているのか。登場以来、いったい何回マイチェンを受けたのか、もう何が何だかわからないが、とにかく今を知ろう! いまだに売れてるクルマだし!
おおっ!
ノーマルより30mm車高の高いクロスオーバーでも、ハンドリングは十分適度にシャープで気持ちイイ! エスクァイアに乗った直後だから余計に! この素性の良さは、私が国民車に推し続けている「スイフトスポーツ」以上かもしれない……。なにしろ458イタリアをもほうふつとさせる低重心であるからして。元オーナーが言うんだから間違いない。
2代目「プリウス」譲りのハイブリッドシステムは熟成を重ね、ディーラー試乗コースをタラタラ流すには絶品! アクセルを深く踏んじゃうと、電気式無段変速特有のカラ回り感がさく裂してガックリするが、それでも日本の公道の9割は気持ちよく走れるはず!
めっちゃ安っぽくてセンスなかったインテリアも、一部改良を重ねまくり、かなりマトモになっている。これはイイ! やっぱりイイ! アクアだ~い好き♡!(菊川 怜風)
清:やっぱりアクアはいいね。
担:でしょう。ではお買い上げを。
清:アハハハハ。なんで一度買ったクルマをまた買わなきゃいけないの。
担:いえ清水さん、そういうお客さま、多いんですよ。
ええっ!? ど、どーして?
ホ、ホントに? いったいどんな理由で?
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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