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第551回:「ノートe-POWER」の4WDモデルの出来栄えは!?
暴風雪の中で日産車の雪上性能をテストした

2019.02.14 エディターから一言 塩見 智
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試乗会には「リーフ」や「ノートe-POWER」「セレナe-POWER」といった電動化モデルや「ジューク」「エクストレイル」といったSUV、さらに「GT-R」「フェアレディZ」などのハイパフォーマンスモデルが用意されていたのだが、この日に乗れたのはこの中のごく一部のみだった……。
試乗会には「リーフ」や「ノートe-POWER」「セレナe-POWER」といった電動化モデルや「ジューク」「エクストレイル」といったSUV、さらに「GT-R」「フェアレディZ」などのハイパフォーマンスモデルが用意されていたのだが、この日に乗れたのはこの中のごく一部のみだった……。拡大

日産車の雪上性能を試すべく、はるばる北海道までやって来た『webCG』取材班。大量の雪に恵まれたのはよかったものの、肝心の天気は、ときどき視界が“ホワイトアウト”するほどの暴風雪……。限られた試乗時間の中で、リポーターは何を思う?

北海道江別市周辺は朝からこのような猛吹雪に見舞われたため、一般道でのテストを中止にするなど、試乗会は規模を大幅に縮小して進められた。
北海道江別市周辺は朝からこのような猛吹雪に見舞われたため、一般道でのテストを中止にするなど、試乗会は規模を大幅に縮小して進められた。拡大
雪上を「GT-R」が疾走するこちらの写真は、取材日とは別の日に撮影されたもの。webCGの取材チームが参加したこの日は、GT-Rや「フェアレディZ」といったハイパフォーマンスモデルは、早々にしまい込まれてしまった。
雪上を「GT-R」が疾走するこちらの写真は、取材日とは別の日に撮影されたもの。webCGの取材チームが参加したこの日は、GT-Rや「フェアレディZ」といったハイパフォーマンスモデルは、早々にしまい込まれてしまった。拡大
真っ白な雪上を気分よく走る電気自動車の「リーフ」。こちらも別日に撮影されたもの。
真っ白な雪上を気分よく走る電気自動車の「リーフ」。こちらも別日に撮影されたもの。拡大

この日に限って

強い冬型の気圧配置の影響で道内は1日、日本海側と太平洋側西部を中心に暴風雪に見舞われ多重衝突事故が相次いだ……吹雪が起こるメカニズムや対処法に詳しい独立行政法人寒地土木研究所(札幌)の高橋丞二上席研究員は「乗用車はトラックと比べて視点が低く、地吹雪が起きると視界不良になりやすい」と指摘……「郊外では建物が少ないため、周りの風景と道路を見分けづらくなる」とも強調……「ホワイトアウト」時には、ハザードランプをつけて道路の左端に停車するしかない。吹きだまりで立ち往生した場合には排ガスの充満を防ぐためにエンジンを切る必要があり、「常に防寒具などを車内に積んでおくべきだ」と話す。(2月2日付『北海道新聞』)

どうしてよりによってこんな日に……。2019年2月1日、北海道江別市内のクローズドコースで日産自動車のメディア向け雪上試乗会が開かれた。この手の試乗会は車両の台数が限られているため、何日間か連続して行われるのが通例。われわれの前後の日程のメディアは晴れた日に「フェアレディZ」や「GT-R」をドリフト走行させている画像をSNSに投稿しているのに、この日は朝ホテルを出て、バスが会場に着くまで外はずっと真っ白。今考えるとバスの運転手はどうやって道路を認識したのだろうか。

気温が低いと、降った雪はサラサラのまま地面にそっとのっかっているだけなので、少しでも風が吹くとふわっと巻き上がる。ふぶいた日には上からの雪と地面からの雪が入り交じってほんの数m先さえ見えなくなる。しばらく待つしかないが、予報は天候が回復するのは夕方と伝えている。時折風がやんだタイミングで何度かコースインしてみるものの、ほんの数分でまたふぶいて中断。待機所でエンジニアと懇談といわれても、乗った感想を伝えながらでないと話も盛り上がらない。見ればスタッフが高価なエンジン縦置き車両を奥へしまい込んでいる。オワタ……。

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目当ては「ノートe-POWER」の4WD

今回用意された車両の中で最も関心をもっていたのは、ノートe-POWERに新たに設定された4WDだった。2018年に13万6324台を販売(正確には登録)して登録車ナンバーワンを獲得した「ノート」。2017年にもほぼ同じ台数を売ったが、16万台以上販売した「プリウス」の後塵(こうじん)を拝し、2位だった。2018年はプリウスが11万5462台に失速して3位に落ち着いたため、ノートが1位を獲得した(2位は12万6561台の「アクア」)。

現行ノートは2012年夏に発売され、もう6年半が経過しているクルマだ。登場時にはさほど大きな話題となったわけではないが、16年秋にシリーズハイブリッドシステムの「e-POWER」を採用したことで、ユーザーに充電のわずらわしさを強いることなくモーター駆動ならではの新しいドライバビリティーを提供し、あれよあれよとヒットモデルに成長した。1.2リッター3気筒エンジンをミラーサイクル化して発電専用とし、エンジンが発電した電力で「リーフ」にも搭載される電気モーターを駆動する仕組み。バッファとして小さな容量のバッテリーを搭載するものの、発電した電力をそのまま駆動に用いると考えてよい。

過去に何度かFWD(前輪駆動)のノートe-POWERに乗ったことがある。聞こえてくるエンジン音を除けば、まったくもって電気自動車(EV)そのものだ。発進の瞬間はエンジンが停止していることが多く、車両が動き始めてしばらくすると始動し、せっせと発電を始める。エンジンは発電に最適化されているため、最高出力は79ps/5400rpm、最大トルク103Nm/3600-5200rpmにすぎない。だが実際の走りにかかわってくるのは同105ps/3008-10000rpm、同254Nm/0-3008rpmのモーターのほうなので、これなら1.2t前後のノートを活発に走らせるには十分なスペックといえる。モーター駆動の特性で発進の瞬間から最大トルクを発生するのがよい。

2018年7月に追加設定された「ノートe-POWER」の4WDモデル。リアアクスルに最高出力4.8ps、最大トルク15Nmのモーターが搭載されている。
2018年7月に追加設定された「ノートe-POWER」の4WDモデル。リアアクスルに最高出力4.8ps、最大トルク15Nmのモーターが搭載されている。拡大
「ノートe-POWER」の4WDモデルは、運転席のスイッチで任意にFF/4WDを切り替えることができる。
「ノートe-POWER」の4WDモデルは、運転席のスイッチで任意にFF/4WDを切り替えることができる。拡大
雪上でスタックしてしまった「スカイライン」を救出する「エクストレイル」。
雪上でスタックしてしまった「スカイライン」を救出する「エクストレイル」。拡大

リア車軸にも小型モーターをレイアウト

天候が若干回復したタイミングを見計らって4WDのノートe-POWERでハンドリングコースを走行した。当然だが、発進時のEV感は過去の印象と同じでなめらかだ。発進と同時に最大トルクを発生させられるモーター駆動だからアクセルペダルをラフに踏むとスタッドレスタイヤをもってしてもグリップを失ってしまうが、雪上であるということを意識してマイルドに踏めばスムーズに発進することができる。もちろん前輪がスリップするかしないかといったところでリアが駆動し、発進をアシストしているからスムーズに発進できるわけだ。FWD車で同じアクセルの踏み方だとトラクションコントロールが作動し、踏んでも進まない。

e-POWERと組み合わせられる4WDの仕組みは、プロペラシャフトによってフロントモーターの駆動力をリアにも配分するタイプではなく、リア車軸に独立した最高出力4.8ps、最大トルク15Nmの小型モーターが配置され、発進から30km/h程度までに限って後輪を駆動するというもの。かつて「マーチ」などに設定されたe-4WDのシステムを流用している。発進をアシストするのに徹した簡易的な4WDであり、状況に応じて前後トルク配分が変化するような複雑な仕組みをもっているわけではないので、走りだしてからのハンドリングに関してはFWDと同じだし、30km/hまでしか作動しないから高速走行時にスタビリティーを高めたりといった効能はない。それでも毎回気をつかう雪道での発進が容易になるのはありがたく、生活四駆として十分に意味がある。

e-POWERは、アクセルオフ時に回生によってエンジン駆動車よりも大きな減速Gを得られるため、微妙なスピードコントロールをアクセルペダルのオンオフのみで行うことができ、雪上で扱いやすい。ただし回生するのは前輪だけだから、その効果は限られている。これがリーフならアクセルオフで回生に加えて(必要に応じて)通常の油圧ブレーキも作動するので、いわゆる“ワンペダルドライビング”で4輪をコントロールできる。実際、この日は雪上でリーフにも少しだけ乗ったが、減速のしやすさはノートe-POWERを上回っていた。

4WDモード時の「ノートe-POWER」は、発進時は必ず4輪が駆動するが、30km/hを超えると前輪のみが駆動する仕組みとなっている。
4WDモード時の「ノートe-POWER」は、発進時は必ず4輪が駆動するが、30km/hを超えると前輪のみが駆動する仕組みとなっている。拡大
暴風雪の合間に「ジューク」でハンドリングコースに出てみる。こちらの駆動方式は、トルクベクタリング機能を備えた電子制御4WD「オールモード4×4-i」となる。
暴風雪の合間に「ジューク」でハンドリングコースに出てみる。こちらの駆動方式は、トルクベクタリング機能を備えた電子制御4WD「オールモード4×4-i」となる。拡大
どのクルマも短い試乗を終えて戻ってくると、ホイールの隙間に雪がぎっしりと詰まっていた。
どのクルマも短い試乗を終えて戻ってくると、ホイールの隙間に雪がぎっしりと詰まっていた。拡大

幻のハイブリッド車

日産は開発リソースをEVに傾注した時期があり、大小さまざまな車種へのハイブリッド展開が国産他社に比べて遅れた。それを短期間で巻き返すべく開発したのがシンプルなシリーズハイブリッドのe-POWERだ。いわば苦肉の策だったわけだが、この“充電不要のEV”は世間のみならず日産の思惑以上にヒットした。燃費がいいだけでなく、モーター駆動の走行感覚がウケた。ノートe-POWERがウケたのを受けて、日産は「エクストレイル」のハイブリッドシステムを採用し、試作車まで完成していた「セレナハイブリッド」の開発を急きょストップし、「セレナ」にもe-POWERを用いた。その結果、セレナも販売好調を維持している。e-POWERは日産の救世主だ。

ただし100km/hを超える高速走行時にはエンジンが生み出す回転エネルギーを電気エネルギーに変換する際のロスが大きくなり、燃費に貢献しないため、海外展開が難しい。また、ノートはともかくセレナなど車重の重いモデルに使った場合、長く続く登坂路ではまれに発電が追いつかなくなり、エンジンのパワーだけで走行することを強いられ、著しいパワー不足に陥ることがあるなど、e-POWERも万能ではない(ただし登坂路の問題は、そこまで長い登坂路は日本の公道にゼロではないもののほとんどないほか、そういう場面でもきっちり制限速度を守っている限り、問題は起きないと日産は主張する)。

とはいえ、メリットとデメリットを比較した場合、e-POWERが日産の救世主であり、もっとさまざまな車種に展開してほしい技術であることは間違いない。そして4WDが追加されたことで、北国の人の選択肢になり得るようになったことは実に喜ばしい。

(文=塩見 智/写真=日産自動車、webCG/編集=藤沢 勝)

いよいよ吹雪が強まってきた。試乗に備えてクルマの雪を落としてくれるスタッフに頭が下がる。
いよいよ吹雪が強まってきた。試乗に備えてクルマの雪を落としてくれるスタッフに頭が下がる。拡大
参加者が時間を持て余し始めた(?)ため、スタッフのドライブする「エクストレイル」に同乗して“いかに吹雪がスゴイか”を体感するツアーが行われた。
参加者が時間を持て余し始めた(?)ため、スタッフのドライブする「エクストレイル」に同乗して“いかに吹雪がスゴイか”を体感するツアーが行われた。拡大
細かなデメリットもあるものの、「e-POWER」が日産の救世主であることは間違いない。
細かなデメリットもあるものの、「e-POWER」が日産の救世主であることは間違いない。拡大
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