第141回:アロワナが泳ぐ中古車店
2019.09.03 カーマニア人間国宝への道激安中古車店ふたたび
タイヤも元の鞘(さや)「ポテンザS001ランフラット」に戻って、夢のようなスポーティーさと快適性を取り戻した我がエリート特急こと5年落ち「BMW 320d」だが、5年落ちということはすなわち車検。ソイツを受けねばなるまい。受けずに運行すると反則点12点。あな恐ろしや。
車検、どこで受けようかなぁと迷ったが、迷ったすえに、購入した激安中古車店に出してみることにした。
なにしろ首都圏で2番目くらいに激安な品ぞろえの店。買った時は「買い逃げだ! 二度と世話にはならねぇぜ!」というつもりだったが、結局2年間ノートラブルだったし、納車時にはバッテリーも無償交換してくれたし、頼んだコーティングもよく効いていた。車検だって、少なくともディーラーにお願いするよりは安いだろう。悪い選択じゃないかもしれない。
ということで電話を入れてみると、受付のオネーサンが、「ありがとうございます~。費用はだいたい9万円くらいだと思います」と、とっても感じのいい声で応対してくれた。9万円というのは、たぶん重量税や自賠責などの諸経費を除いた金額だろう。BMWとしては十分リーズナブル!
ということで、2年ぶりに激安店を訪れたが、雰囲気は相変わらずだった。
敷地内にはパンパンにクルマが詰まっているが、店舗は無駄に広く、広大な接客スペースには観賞魚の水槽が5つくらい並んでいる。その中の1つには、巨大なアロワナがゆらゆら揺れている。
大型観賞魚と中古車店
観賞魚を飼っている中古車店は少なくない。私が最初にフェラーリを買ったお店(ナイトインターナショナル)にも、その頃(25年前)は大きな水槽があり、確かアロワナが泳いでいた。
当時そこの店長だった榎本 修氏(現コーナーストーンズ社長)に確認すると、「いましたねぇ。あの頃はサメも飼ってました」とのこと。
そ、そういえば小さめのサメもいたような気がする! 小さいといってもサメはサメ。アロワナともども肉食魚である。ああいうのは社長さんの趣味なんだろうが、お客としては、「オレも食われちゃうのかな」という気分になってしまう。
榎本氏:まあ、中古車屋というのは、根が狩猟民ですから!
そういえばナイトの社長さんは、実際にハンティングやクレー射撃、それにカジキ釣りが趣味だった。それくらいじゃないと、売れるかどうかわからない中古フェラーリをバンバン仕入れるような商売はできないのだろう。まあ、職種によらず社長ってのはそういう部分はあるでしょうけど。
それでも繰り返すが、アロワナやサメが泳いでいる中古車店というのは、どこか怖いイメージがあるものです。個人的には、中古車店で大型観賞魚を飼うのはやめたほうがいいと思いまちゅ。
それでも私は、大きなアロワナが泳いでいるそのBMW激安店に我がエリート特急を車検に出し、1週間後に引き取りに行った。
オレ:費用はおいくらですか?
オネーサン:9万〇〇〇〇円です。
オレ:えっ、それは諸費用を除いた額でしょ?
オネーサン:いえ、すべて含めてこの金額です。
マジすか~~~~~~!?
店長はカーマニア
以前乗ってた「アクア」でも、車検費用は全部で14万円くらいかかったぞ! BMWの車検が9万円ちょいとは安すぎる! ちなみにオイル交換無料。なんていい店なんだ……。
ちょうど海千山千な感じの店長さんが帰ってきたので、「BMWのタイヤは何がいいか」という、カーマニアな話題になった。
BMW激安店の店長:僕はBMWには、純正のポテンザのランフラットが一番いいと思いますけどね。ミシュランはあんまり合わないですよ。だったら台湾や韓国タイヤのほうがいいっていう印象です。
オレ:そ、そうなんですか!
私は、ミシュランのランフラットで大失敗した体験談を披露しつつ、そもそもBMWはランフラットか普通のラジアルか? という話題になった。
BMW激安店の店長:先代3シリーズあたりからこっちは、基本的にランフラットのままがいいと思います。確かに18インチとか19インチだと、スポーツ系の普通のラジアルも合いますけど、17インチまでならランフラットでしょう。
なるほどぉ! そーか、インチ数で選択が違ってくるのか! まさに卓見! エリート特急は320dスポーツなので17インチ。ランフラットで正解なのですね。
見た目は海千山千だけど、この店長もカーマニアだなぁ。カーマニアがやってるお店はいいお店! クルマが安いうえに車検費用も安い! ここで買ってよかった~~~~!
帰路、オイル交換したばっかりの滑らか~なエンジンフィールを楽しみつつ、しみじみ「お店は値段や観賞魚で判断しちゃいけないなぁ」と思う私でした。
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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