第591回:旅に出たくなるのがスバル
歴代「レガシィ」でグランドツーリングを体感(前編)
2019.10.03
エディターから一言
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スバルが「より遠くまで、より快適に、より安全に」というテーマを掲げ、磨きをかけてきた「レガシィ」と「レヴォーグ」。その歴代レガシィと最新レヴォーグを東京から“日本一の星空の村”として知られる長野県阿智村まで走らせ、30年の進化と変わらぬこだわりを再確認してみた。
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レガシィの30周年
こんなにルーミーだったっけ? 30年前の「レガシィ ツーリングワゴン」に乗って戸惑う。昔のクルマはピラーが細く、サイドウィンドウ下端のウエストラインも低いのが当たり前だったが、おかげで室内は明るく、視界も良好。その分、体が外にさらされているようで落ち着かないほどだ。
それにしても、もう30年である。スバルを世界的なブランドに押し上げた立役者であるレガシィが発表されたのは平成元年の1月23日。元号が昭和から平成に変わってわずか2週間後のことだった。
資料として配られた富士重工業株式会社広報部発信のスバルニュースのコピーを見ると、日付には手書きで“H”と加えられており、それを見て当時の慌ただしさと混乱を思い出した。あの頃、何らかのイベントを計画していた関係者は皆、自粛か決行かで思い悩んでいたはずである。
日本車のヴィンテージイヤーに誕生
スバル・レガシィが誕生した1989年は、他にも「トヨタ・セルシオ(レクサスLS400)」、や「日産スカイラインGT-R」、「ホンダNSX」、「ユーノス・ロードスター」などが登場した年で、今でも懐かしさと愛着をもって日本車のヴィンテージイヤーと語られる平成最初の年だった。振り返ってみれば、その当時から途切れることなく、同じネーミングで生産が続けられているのはレガシィとロードスターだけである。
レガシィは、それまでの主力車種「レオーネ」からすべてを一新したニューモデルで、スバルにとっては社運を賭けた世界戦略車でもあった。発売当初の看板モデルは2リッターターボとしては当時最強の220PSを誇ったセダン「RS」で、セダンとツーリングワゴンに「GT」が追加されたのは半年ほど後のこと。
GTは昔から日本でも高性能モデルのグレード名やサブネームとして使われてきたが、GT(グランドツーリング)を単なる車名やグレード名としてではなく、遠くまで快適に走るための車の性能として主張した日本車はレガシィが最初だったのではないだろうか。
ライバルとの差別化のための記号や流行物としてではなく、米国の俳優ブルース・ウィリス(初代と4代目レガシィのイメージキャラクターとして起用された)が地平線の彼方(かなた)を目指すような、使い方を象徴するネーミングだったのである。レガシィが最初からどこかバタ臭いというか、欧米志向の雰囲気を漂わせていたのはそういう背景があったからだろう。
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スバルはリアルな試乗会が好き
懐かしのBF型レガシィ ツーリングワゴンGTタイプS2(4段AT)に乗っていたのは、生誕30年を記念して、初代から5代目までのレガシィ ツーリングワゴンと、その後継モデルたる現行のレヴォーグを乗り換えながら、岐阜県境に近い長野県阿智村を往復するという試乗イベントに参加していたからである。名付けて「スバルGTエクスペリエンス」。阿智村は環境省が認定した“日本一の星空の村”であり、スバルとは星(もともとプレアデス星団の昴)つながりで以前から関係があったという。
歴代のレガシィ ツーリングワゴンに乗ってスバルGTの進化を確かめるとはいっても、その試乗車を用意するだけでも大変であることは容易に想像がつく。
今回スバルはそれこそネットで探し購入した車両をレストアするなどして準備したという。そのレストアもメカニカルなコンディションは上々ながら、どこもかしこもピカピカにするのではなく、オリジナル状態を維持しながら、必要な現代的装備、たとえばリアビューモニター付きルームミラーなどは適宜加えるといったもので、誠に企画にふさわしいと思われた。
このところスバルは、東北地方の冬の雪道を走らせるなど、比較的長距離の、しかもリアルな一般道路を使った試乗会を開催しているが、これは大変有意義でありがたい試みだと思う。クローズドのテストコースで開催した方がよほど楽で安全、確実、効率的。万一のアクシデントの場合にも対処が容易だろうし、コストとスピード最優先の今時は流行(はや)らないのかもしれないが、満足に走らない(走れない)試乗会は欲求不満が募るうえに、お台場近辺をくるっと回って試乗終わり、では分からないことが多すぎる。
もちろん、運営の都合などやリスクを考えれば大がかりなコースを設定できない事情も理解できるが、少なくともGTを標榜(ひょうぼう)するクルマを送り出すならば、それにふさわしいリアルな道を走ってみたいのが正直な気持ちである。その点スバルはあらゆる面倒を承知の上でこの種のイベントを開催しているのだから、英断と言っていいはずだ。<後編に続く>
(文=高平高輝/写真=花村英典、スバル/編集=櫻井健一)
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高平 高輝
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